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今月の質問箱|瀬古 博子

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プロフィール
消費生活アドバイザー。食品安全に関する広報業務に従事して十数年。個人の考えを書いています

過去十年間でもっとも被害が大きかった食中毒は?

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2015年11月5日

・患者数ではノロウイルスが圧倒的だが

 年間2万人前後の患者が発生する食中毒。どこでどのような食中毒が起きているのか、原因となる食品や菌にはどのようなものがあるのか、そんなデータをまとめた食中毒統計が毎年厚生労働省から公表されている。
最近10年間分(2005~2014年)を整理してみて、被害が大きかった事例にどのようなものがあるのか見てみた。
まず、患者数の多い順に10位まで食中毒事件をあげると、下記の表となった。
食中毒10年間1 (1)
 病因物質としては、当然ながらノロウイルスが多い。ノロウイルスによる食中毒は毎年事件数、患者数とも多く、2014年では293件、10,506人だから、1件当たりの平均患者数は約36人になる。鶏の生食でよく食中毒が起こるカンピロバクターも事件数は多いが、1件当たりの平均患者数は6~7人程度なので、上にあげたような大規模な食中毒にはあがってこない。

 気になるのは、学校給食での食中毒だ。一つは、2011年のブロッコリーサラダによるサルモネラ食中毒。原因については、調理に使った釜の攪拌羽根の洗浄・消毒が不十分だったと考えられている。釜の攪拌羽根の基部から、ブロッコリーサラダと患者便から検出されたものと同じ遺伝子パターンのサルモネラ菌が検出された。また、調理後には温度が上昇する環境に食品が保管され、菌が増殖したらしい。

 2007年の「かみかみ和え」も学校給食だが、加熱工程のないきざみするめが原料に加えられており、素手で配食されたこと、ノロウイルス陽性者が調理器具の洗浄を行っていたことが指摘されている。

 また、2014年の静岡県での食パンを原因とするノロウイルス食中毒については、製造所での検品時にパンが汚染されたとされ、パンは学校給食用だったので、小学校の子どもたちが被害にあっている。
 8番目の給食、9番目のキーマカレーは、ウエルシュ菌が病因物質となっている。キーマカレーの事例では、提供日前日にカレーを調理し、保管した際の温度管理が不適切だったとされる。

 ウエルシュ菌はカレーやシチューなどの煮込み料理での食中毒が多いが、案外知名度は低いようだ。ウエルシュ菌は酸素のないところで増殖し、耐熱性の芽胞を作る。飲食店や仕出し屋、旅館など大量に調理する施設で食中毒が発生するので注意が必要だ。加熱調理した食品は早く食べる、保存する場合はすぐ冷却する、再加熱するときは十分に加熱するなどがポイントで、食品の保存温度を10℃以下あるいは55℃以上にすることが対策となる。

・死者が出た食中毒、白菜きりづけとユッケの対策は

 この10年間で死者が発生した食中毒事件は36件あった。そのうち、家庭での食中毒を除いた10件を下記の表にまとめた。原因施設の内訳は、飲食店3、製造所2、老人ホーム・販売店・仕出屋・その他・不明が各1となっている。
食中毒10年間2 (1)
 このなかでは、2012年に北海道で起きた白菜きりづけの事件と、2011年に富山県の焼肉店等で起きたユッケの事件が記憶に新しい。どちらも病因物質は腸管出血性大腸菌だった。
 白菜きりづけの食中毒では8人が亡くなり、この結果、1981(昭和56)年につくられていた漬物の衛生規範が改正された。浅漬けの工程には加熱処理がないので、原材料の洗浄・殺菌や低温での管理など、一貫した衛生管理が衛生規範に盛り込まれた。衛生規範は義務ではないが、メーカーは規範に従って安全な食品製造を徹底してほしい。

 2011年のユッケを原因とする食中毒では5人が亡くなり、これについては牛の生食用食肉の規格基準が策定され、牛レバーは表面だけでなく内部からも腸管出血性大腸菌が検出されたため、レバさしの提供は禁止となった。

・家庭の食中毒で死者が出る原因は

 家庭でも食中毒は発生する。2014年では79件起きており、全体の約8%を占める。家庭で起こる食中毒では、大半は自然毒が原因だ。死者が発生することもある。
 2005~2014年の間で死者が発生した食中毒は36件と前述したが、その原因施設は、実は家庭が26件と圧倒的に多い。その26件を下の表にまとめた。自然毒には網掛けをした(植物性自然毒、動物性自然毒)。
 2012年のトリカブト、2005年のきのこ(ニセクロハツ)で2人が亡くなり、死者数は28人となっている。
食中毒10年間3 (1)
 こうしてみると、ふぐやきのこなどの自然毒が原因で死者が発生するいたましい食中毒事件は、なかなか根絶に至らない。消費者自身がきのこ狩りや釣りに出て、とったものを食べたり、人にゆずったりして被害にあってしまうので、対策としては消費者の自主防衛しかないし、そのためには消費者への注意喚起を徹底するしかない。
食品が安全に食べられるように管理されながら生産・製造されることに消費者は慣れきっている。人間の管理が行き届かない自然のもの、野生のもののリスクを、消費者自身がもっと意識することも必要だ。

参考:厚生労働省 食中毒統計

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