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執筆者

瀬古 博子

消費生活アドバイザー。食品安全委員会事務局勤務を経て、現在フーコム・アドバイザリーボードの一員。

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食品用ラップ、食べたかも?と思ったら

瀬古 博子

キーワード:

rap

旭化成(株)が、熊本地震の被災者支援のため、義援金とともにサランラップ10万本を寄付する話がニュースになっていました。

「え、ラップって、何に使うの?」といった疑問もあるかもしれませんが、食品を包むだけでなく、食器にかけて使えば食器を洗う水の節約になるし、おにぎりをにぎるときに使えば食中毒防止のために役立ちます。

便利なラップ類ですが、「ラップを食品といっしょに食べてしまったかもしれない」という話を時折聞きます。
切れ端を食品といっしょに食べたかもしれないとか、お子さんが知らない間に口に入れていた、といった事例です。

結論からいえば、食品用のラップ類に使われるプラスチック類は、仮に食べてしまったとしても、体内で消化吸収されないので、そのまま体外に排出されることになります。
ただし、大きなかたまりを飲み込んだ場合などは、体内でつまったり、はりついたりするおそれもあります。そのような場合は病院で相談したほうがよさそうです。

飲み込まないまでも、ラップの成分が食品に溶出するのでは、との心配もあるかもしれません。

食品用ラップ類の原料は、家庭用のものではポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、スーパーマーケットなど業務用のものではポリ塩化ビニル、ポリオレフィンなどが原料となっています。
これらのラップ類は、無色透明で、酸素を通しにくい、水分を保ちやすいといった性質をもっており、食品の包装に用いられます。

ポリ塩化ビニリデンとポリ塩化ビニルは似たような名前ですが、ポリ塩化ビニルが密着性にすぐれている一方、ポリ塩化ビニリデンは耐熱性や酸素を通しにくいなどの性質においてすぐれています。ラップの耐熱温度は、ポリ塩化ビニリデンが140℃、ポリ塩化ビニルは130℃、ポリエチレンは110℃と低めです。
旭化成のサランラップ、クレハのNEWクレラップなどは、ポリ塩化ビニリデンが原料です。

かつてポリ塩化ビニル製のラップから、界面活性剤が分解してノニルフェノールという物質ができて、食品に溶出することが報告され、問題となったことがありましたが、その後ラップの製法が切り替えられ、2009年の調査では、国内で入手したラップ100検体のすべてで、ノニルフェノールの残存は認められませんでした。

ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニルのラップには、やわらかくするための可塑剤が添加されていて、材質と溶出について食品衛生法で規格基準が定められ、規制の対象となっています。

さて、市販のラップ類の使い方ですが、パッケージにラップの材質や耐熱温度、取り扱い上の注意事項などが表示されていますから、まずは確認してみましょう。
耐熱温度が高い製品であっても、油の多い食品の場合、電子レンジで加熱するとかなり高温になることがあるので、注意が必要です。通常、「油性の強い食品を直接包んで電子レンジにいれないでください」などと書いてあります。深めの皿に入れて、食品にふれないようにしてラップをかけ、安全に使いましょう。

参考:
食品安全委員会 ラップフィルムから溶出する物質(概要)

日本プラスチック工業連盟

執筆者

瀬古 博子

消費生活アドバイザー。食品安全委員会事務局勤務を経て、現在フーコム・アドバイザリーボードの一員。

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