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執筆者

瀬古 博子

消費生活アドバイザー。食品安全委員会事務局勤務を経て、現在フーコム・アドバイザリーボードの一員。

今月の質問箱

食品表示のクイズです。新しい表示はどれ?

瀬古 博子

キーワード:

2013年に食品表示法が成立し、食品表示の新基準が2015年4月に示されて、はや1年と数か月。まだ猶予期間中であるため新基準の表示への移行はあまり進んでいませんが、最近たまに新しい表示にお目にかかるようになりました。

さて、ここでクイズです。世界に100種類以上あるといわれるプリングルズの商品ですが、次の(1)(2)(3)のうち、新基準の表示ではないのはどれ?

(1)プリングルズ 期間限定バジル&ソルト

①プリングルズ 期間限定バジル&ソルト

①プリングルズ 期間限定バジル&ソルト

(2)プリングルズ 期間限定ピザトースト味

②プリングルズ 期間限定ピザトースト味

②プリングルズ 期間限定ピザトースト味

(3)プリングルズ サワークリーム&オニオン

③プリングルズ サワークリーム&オニオン

③プリングルズ サワークリーム&オニオン

はい、かんたんでしたね。(3)が旧基準の表示です。

(1)と(2)は新基準の表示です。

新基準の特徴は、原材料名の表示方法や栄養成分の表示方法などいくつかあります。

原材料名は、旧基準では、添加物以外と添加物を区分することなく、それぞれ重量順に表示していましたが、新基準では、原材料と添加物を区分し、それぞれに占める重量割合の高いものから順に表示することになります。

区分の仕方は、「/」で区切ってもよいし、改行でも、線で区切ってもよいのです。

(1)と(2)では、ぶどう糖のうしろに「/」があり、ぶどう糖までが添加物以外の原材料、ぶどう糖の次の乳化剤以降が添加物であることがわかります。

栄養成分表示については、新基準では義務化され、ナトリウムを「食塩相当量」で示すことになっています。食塩相当量は、(1)では0.5~1.7g(100g当たり、以下同)、(2)では0.4~1.3gとなっています。

旧基準表示の(3)では、「ナトリウム148~503mg(食塩相当量0.4~1.3g)となっていますが、これは新基準では、ナトリウム塩を添加していない食品の表示形式となります。

栄養成分の含有量を○mg~○mgのように、下限値及び上限値の幅で表示する場合、分析値がその中に含まれていることが必要です。

これらのプリングルズの商品はどれも「原産国名:マレーシア」となっており、輸入品です。表示責任者として、輸入者名と住所が表示されています。表示責任者は基本的には製造者、加工者、輸入者ですが、販売者が表示される場合もあります。

さて、次の表示はどうでしょうか。

(4)メロンかもめの玉子(ミニ)

かもめ1

はい、これも新基準の表示です。

この商品では、原材料名の区分のところで、明確に「添加物」と書いて区切っています。トレハロース以降が添加物であることがよくわかります。

添加物以外と添加物の区分は、「/」で区切る場合が多いようです。「/」は、文字数を少なくするには有効ですが、文字にうもれてわかりにくくなるのが欠点です。また、改行で区切った場合、前の行との関係で、区分がわかりにくくなることもあります。
「添加物」と明記するのは、文字数は増えてしまいますが、消費者にとってのわかりやすさではベストです。

アレルギー表示としては、義務表示対象の7品目(特定原材料)のえび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生があります。これらについては、代替表記(例:落花生は「ピーナッツ」と表示してもよい)、拡大表記(例:「ピーナッツバター」は(落花生を含む)と書かなくてもよい)などが決められています。

表示例(4)では、添加物の乳化剤のところで「大豆由来」と書いてあります。大豆は、アレルギー表示の義務付け対象ではありませんが、表示を推奨する20品目(特定原材料に準ずるもの)の一つです。

アレルギー物質の表示では、添加物以外の原材料では、「原材料名(大豆を含む)」のように表示しますが、添加物では「添加物名(大豆由来)」のように表示します。

(4)のパッケージを裏返すと、ちゃんと栄養成分表示があります。ナトリウムは食塩相当量として表示されています。

(4)のパッケージの裏の栄養成分表示
かもめ2

今回、新基準の表示が徐々に登場してきていることがわかりましたが、製造所固有記号については、新しいものを見つけることができませんでした。

製造所固有記号の表示は、「製造所の所在地及び製造者の氏名又は名称」の表示を、あらかじめ消費者庁に届け出た製造所固有記号に代えることができる制度で、同一製品(包材も同一)を複数の製造所で製造する場合に認められます。

新制度では製造所固有記号は、「+」をつけて表示することになっています。旧制度に基づく記号と区別するためです。
新基準と旧基準は混在することが認められていませんが、製造所固有記号取得の手続きが完了するまでの期間、また、経過措置期間は、新基準の表示でも旧制度の製造所固有記号を表示することが認められています。

新制度では、製造所の所在地等に関する消費者からの問い合わせに事業者が応答する義務が新設されており、「+」をつけた製造所固有記号は、事業者が「応答可能」となっていることを示すものですから、消費者にとっては重要といえます。

このところ、食品を見れば裏返して表示をチェックする毎日です。
今後も、新基準への移行状況をウオッチしていきます。

(編集部注:旧基準について誤解を招く表現がありましたので、一部加筆させていただきました)

執筆者

瀬古 博子

消費生活アドバイザー。食品安全委員会事務局勤務を経て、現在フーコム・アドバイザリーボードの一員。

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