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今月の質問箱|瀬古 博子

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いろいろな場面で食品安全や食品表示の質問、疑問に遭遇します。自分なりに、気になる質問のコタエを探したい
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消費生活アドバイザー。食品安全に関する広報業務に従事して十数年。個人の考えを書いています

輸入牛肉、あぶないの?

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2017年11月26日

文春オンライン『「ホルモン漬けアメリカ産牛肉」が乳がん、前立腺がんを引き起こすリスク』を読んで、「またか」と思いました。

同じネタで、アメリカ産牛肉の話題が、繰り返しメディアやネットに登場します。

前回は昨年の今頃。

前回も、気になったので、記事を書きました。

肉のホルモン剤が心配ですか?(1)

肉のホルモン剤が心配ですか?(2)

今回の記事では、冒頭に、海老蔵さんと亡くなった麻央さんの写真が載り、一歌舞伎ファンとしても、こんなテーマでお二人の写真が載るなんて、と複雑な気持ちです。

記事を読んでみると、

●日本人の前立腺がんが異常な勢いで増えている。

●乳がんも子宮がんも卵巣がんも増え続けている。

●日本人の乳がん、子宮体がん等の発生率は、40~50歳代ぐらいにピークがきて、あとは減少する。

● 細胞ががん化するまでに20年、30年とかかるので、いま、40~50歳代の人の食生活が30年ぐらい前にどう変わったかを考えると、日本では1970年代から牛肉の輸入が増加した。

だから…、“「ホルモン漬けアメリカ産牛肉」が乳がん、前立腺がんを引き起こす”と推論しているようですが、かなり論理に無理があります。FOOCOMで児林 聡美さんのコラムでも紹介されていますが、相関関係と因果関係が混同された例ともいえます。

肉類の消費が増加したことは事実としても、日本人の食生活の中では、牛肉は食材の一つであって、それほど牛肉(しかも米国産)ばかりに偏るとは思えません。

実際、日本人の1日あたりの牛肉摂取量は、平均13.5gと、他の肉類(豚肉37.2g、鶏肉26.4g)よりも少量。年代別でもっとも多い20歳代で、21.9gです。

国民健康・栄養調査(平成27年)

また、前立腺がんについては、国立がん研究センターの2012年の集計結果で、前立腺がんの増加が頭打ちになったとされています。

で、「ホルモン漬け」の話にもどると、記事では、エストラジオール(女性ホルモン)について、国産牛肉よりも米国産牛肉で濃度が高く、脂肪では国産牛で0.1 pg/g、米国産牛で14.0 pg/g、赤身肉では国産牛で0.006 pg/g、米国産牛で3.8 pg/g検出されたとのことです。

実は、厚生労働省も、外国産牛肉(米国・オーストラリア)と国産牛肉のエストラジオールの残留調査結果を公表しています。それによれば、エストラジオールの濃度は、平均値としては外国産のほうが約3倍程度高く、一方、最高値については、国産牛肉で12.8 pg/g、外国産牛肉で10 pg/gでした。

この検出値をどう考えたらよいのでしょう。

JECFA(国連食糧農業機関(FAO)・世界保健機関(WHO)合同食品添加物専門家会議)で、エストラジオールのADI(一日摂取許容量)を0-50ng/kg体重と定めているので、これを参考にしましょう。ADIとは、一生涯、毎日その量を食べ続けても健康に悪影響を及ばさない量を意味します。

ADIは体重kgあたりの数値として示されているので、仮に体重50kgの人であれば、1日あたり2,500ngになります。

国産牛のエストラジオールの最高値12.8 pg/gと日本人の20代の牛肉摂取量の平均値21.9gをかけて、牛肉由来のエストラジオールの摂取量を計算すると、280.3pg(0.280ng)となります。この摂取量のADI比をみると、体重50kgの人の場合、0.280/2,500で、ADIの0.01%と、十分低い値であることがわかります。(1pg(ピコグラム)は1兆分の1g、1ng(ナノグラム)は10億分の1g)

JECFAでは、エストラジオールについて、推定摂取量がADIの2%にも満たないので、適正に利用されるのであれば、最大残留基準値を設定する必要がないと結論づけています。

食品の国際規格を設定するコーデックス委員会でも、エストラジオールについて、適正に利用される場合、人の健康に対し危害となることは考えにくいとして、残留基準値は必要ないとしています。

肥育ホルモン剤については、食品安全委員会がファクトシートを作成しています。

ということで、こわい話はたくさんありますが、冷静に考えましょう。多量にとっているのか、微量なのか、量を考えることも大切です。

食事とがん予防については、自己流でやるよりも、「科学的根拠に基づくがん予防」(国立がん研究センター がん情報サービス)をご参考になさってください。

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