ホーム >  専門家コラム > 今月の質問箱 > 記事

今月の質問箱|瀬古 博子

どんなコラム?
いろいろな場面で食品安全や食品表示の質問、疑問に遭遇します。自分なりに、気になる質問のコタエを探したい
プロフィール
消費生活アドバイザー。食品安全に関する広報業務に従事して十数年。個人の考えを書いています

「11歳100ミリシーベルト被ばく疑い」の記事をどう読むか

  • シェア
  • Check
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Share
2019年1月22日

朝日新聞「11歳100ミリシーベルト被曝疑い 福島第一事故 甲状腺の周囲」(1月21日)

東京新聞「11歳少女、100ミリシーベルト被ばく 福島事故直後 放医研で報告」(1月21日)

1月21日、上のようなニュースが飛び込んできました。

テレビのニュース(NHK BS)でも「100ミリシーベルト」というので、一瞬耳を疑いました。しかも、徳島大学のチームが福島県職員から聞いた伝聞情報が元になっているとか、公表はされなかったなど、やけに不透明さが目立つ内容です。

●NHKがくわしく報道

その後、NHKからは、経緯等も含めた、やや詳細なニュースが報じられました。

NHK「福島の女児 甲状腺に放射線100ミリシーベルト被ばくか」(1月21日)

NHKのニュースを要約すると…

・福島原発事故後、福島県双葉町で、11歳の女児が甲状腺等価線量で100ミリシーベルト程度の被ばくをした可能性がある。

・この報告を受けた放射線医学総合研究所は、信頼性が低く、公表すべきと認識しなかった。

・この情報は、福島県内で汚染の測定を行っていた徳島大学チームが、福島県職員から聞いた話であり、この女の子は原発事故があった日に外で遊んでいたとの話。

・平成23年3月下旬に国が行った調査では、子ども1080人の甲状腺被ばく線量は最大35ミリシーベルトだった。

・福島県は、該当するデータは残っていないとしている。

・放射線による健康影響では、「実効線量」という値が使われ、甲状腺等価線量100ミリシーベルトは、実効線量に換算すると4ミリシーベルトになる。

・甲状腺への被ばくの影響について、放射線医学総合研究所では、1000人の子どもが甲状腺等価線量で100ミリシーベルト被ばくしたとき、そのうちの二人ががんを発症する程度と、そのリスクを試算している。

・県職員から話を聞いた徳島大学の専門家は、当時、福島県や文部科学省、放射線医学総合研究所などの関係者が出席する会議で、この話を報告し、注意を呼びかけた。

●誤解を招く「等価線量」と「実効線量」の混同

「等価線量」と「実効線量」という二つの言葉が出てきました。

放射線は、その種類(アルファ線・ベータ線など)によって、人体への影響度が異なるので、吸収線量に「放射線荷重係数」というものをかけて補正します。その値が、等価線量。

(放射性ヨウ素・セシウムの放射線荷重係数は1なので、吸収線量=等価線量になる。)

そして、放射線を受ける組織・臓器によって、人体への影響度が異なるので、等価線量に「組織荷重係数」をかけて、各組織の分を合計したものが、実効線量です。

甲状腺の「組織荷重係数」は0.04なので、甲状腺等価線量100ミリシーベルトは、全身の健康影響をみる際に用いる「実効線量」に換算すると、4ミリシーベルトとなります。

この二つの言葉は、単位がともにシーベルトで、混同されやすく、きちんと区別しないと誤解を招きます。

●朝日新聞の記事では等価線量の説明がない

朝日新聞の記事では、甲状腺への被ばくだと記事に書いてありますが、甲状腺等価線量の説明がまったくありません。実効線量が100ミリシーベルトであるかのようにも読めます。

東京新聞の記事では、資料の写真つきで「甲状腺等価線量で100ミリシーベルト」と明確に記述されていますが、等価線量が何を意味するのかの説明はありません。実効線量に換算するとどうなるのか、また実効線量そのものの説明もないまま、「発がんリスクが明らかに増えるのは100ミリシーベルト以上」といった記述も出てきます。

これでは、読者は混乱するのではないでしょうか。

被ばく線量が多かったお子さんのことは、真剣に心配しなければなりません。しかし、まずは事実を知ることが大事。リスクを過大にも過小にも見ない、客観的な報道が求められます。

参考:消費者庁「食品中の放射性物質に関する広報資料」

⇒ 今月の質問箱記事一覧へ

専門家コラム一覧

FoodScience 過去記事

以前、他のサイトで掲載されていた記事をこちらより選択してご覧いただけます。
FOOCOM.NET 会員募集 科学的根拠に基づく食情報を消費者に提供するために、ご協力ください。

お知らせ

FOOCOMが「第1回食生活ジャーナリスト大賞」を頂くことに決まりました(3/28)
FOOCOMはこのほど、食生活ジャーナリストの会(JFJ)の「第1回食生活ジャーナリスト大賞(ジャーナリズム部門)」…【全文を読む】
FOOCOM お役立ちリンク集