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今月の質問箱|瀬古 博子

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消費生活アドバイザー。食品安全に関する広報業務に従事して十数年。個人の考えを書いています

米国でリコール、ゆで卵のリステリア汚染

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2020年1月30日

昨年12月から、米国で、固ゆで卵がリステリア食中毒の原因とされ、回収されています。
ゆで卵でリステリア、というと、通常ゆで卵は家でボイルして作るので、何か不思議な感じです。
しかし、回収の対象となったのは、業務用の殻むき固ゆで卵。四角いバケツ型のプラスチック容器で販売されていたものです。

●2017年から病人が発生

CDC(米国疾病管理予防センター)が2019年12月19日頃に、リステリア感染症の発生に関し、Almark Foods社のジョージア州ゲインズヴィルの施設で生産された殻むき固ゆで卵が原因である可能性が高いとして、アラートを発表。

同社が業務用製品の回収を開始し、その後、小売り用の製品も含めて、対象を拡大しました。
卵は、そのままでも軽食となりますが、ナッツやチーズと詰め合わせたパックやエッグサラダなど、いろいろな使い方で、そのまま食べられるRTE食品(Ready-to-eat;非加熱喫食調理済食品)となります。RTE食品は、リステリア症の原因になりやすい特質があります。

食中毒患者は米国の5州から7人が報告されており、発症は2017年4月から2019年11月の間です。患者は1歳未満から82歳で、4人が入院し、1人が死亡。1人は母親が妊娠中に感染した新生児で、生存しています。

Almark Foods社の卵が感染源との証拠は、患者の聞き取り調査と、CDCのデータベース(PulsNet)の調査によるものでした。過去にFDAが施設検査を行い、Almark Foods社の施設からリステリアを採取した記録があり、それが今回の患者由来のものと遺伝学的に近縁であるとわかったのです。

●施設検査で、食品接触面からリステリアが

FDAは2019年2月にAlmark Foods社の施設検査を行い、7月に警告書を出していました。

警告書によれば、殻剥離室の2か所からリステリアを採取しています。

・殻剥離室の床の排水溝付近
・ベルトコンベアの端にある卵カウンターの入り口とステンレススチールエリア

後者は、食品接触面になります。

警告書でFDAは、「リステリアが見つかったということは、あなたの衛生対策は不十分ですよ」と指摘し、リステリアとボツリヌス菌についても、現行適正製造規範、ハザード分析、リスクに基づく予防管理規則(CGMP&PCルール)の重大な違反があるとしました。
さらに、サラダ卵の容器が調査日に少なくとも3時間、殻剥離室の周囲温度で無人で保管されていたなど、いろいろな問題の追記もあります。

Almark Foods社は、警告書への返信で、対応策を示していました。
しかし、食中毒が起こり、回収となってしまいました。

●日本ではリステリア感染症は年間200人

今回の件では、2017年の患者の原因株がいま明らかになってきたということで驚かされます。感染源となったリステリアは、この工場の中に長く定着し、食品の汚染源となったということでしょう。

日本では、食中毒統計でのリステリア食中毒は報告されていませんが、リステリア感染症の推定患者数は、年間200人とされています(食品安全委員会)。

リステリアは、環境中に広くいて、生鮮食品や加工食品でも確認されていますが、健康な成人であれば、多量の菌数を食べるのでない限り、食中毒を発症することはなく、重症化することはまれといわれます。
ただ、高齢者や妊婦は注意が必要です。
妊娠中に感染すると、流産や早産など、新生児の生命を脅かす可能性もあります。

リステリアの潜伏期間は、通常20~30日とか1日~3か月などと言われています。
CDCでは、1~4週間で、早ければ食べたその日、遅ければ70日後と、潜伏期間に幅があることを示しています。
症状は、悪寒、発熱、筋肉痛などで、他の病気と区別しにくく、潜伏期間が長いことから原因がつきとめにくいわけです。

リステリアは4℃以下の低温でも増殖します。RTE食品のように、冷蔵保存され、加熱せずにそのまま食べる食品が、原因となりやすいといえます。
妊婦さんの場合、冷蔵庫を過信せず、加熱して食べる心がけも必要でしょう。厚生労働省でも注意喚起を行っています。
ゆで卵でも食中毒は起こる、油断は禁物なリステリア、です。

(1月16日FOOCOMメールマガジン第426号に、加筆修正しました。)

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