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今月の質問箱|瀬古 博子

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プロフィール
消費生活アドバイザー。食品安全に関する広報業務に従事して十数年。個人の考えを書いています

被災地食品を「買う」?「買わない」? アンケート調査の結果から

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2012年3月8日

産地が気になる理由は?

 放射性物質について、消費者の不安が大きいから風評被害が起こるという話をよく聞きます。そのたびに疑問に感じるのが、消費者の「不安」とはどの程度大きいのかということです。
 テレビでは、強い不安をうったえる消費者の姿がしばしば紹介されます。しかし、メディアに登場する人が代表的な消費者像だとはいえません。消費者の価値観は多様であり、不安だと強く主張する人がいる一方で、あまり気にしていない人がいることも事実です。メディアに登場する人の印象が強いほど、現実の消費者の姿は見えにくくなってしまいます。

 消費者庁が昨年6月初旬頃に行った消費者の意識調査では、食品の産地を気にする人に対して、その理由を尋ねています。回答は、「産地によって品質(味)が異なるから」が約45%と最も多く、次いで「放射性物質の含まれていない食品を買いたいから」が約40%。品質面への関心が放射性物質への懸念をわずかながら上回り、メディアで流れる消費者像とは少し異なる、意外な結果となりました。
 また、被災地食品を食べて応援することについては、「応援したい」及び「どちらかというと応援したい」は合計で約8割となり、「食べて応援」の運動には多くの支持が寄せられていることがわかりました。

「意識はするが、実際はあまり気にしない」という人も

 昨年7月、日本生活協同組合連合会では組合員のモニターを対象に「エネルギーと節電に関するアンケート調査」を行い、結果が「生活協同組合研究」2012年2月号に掲載されています。買い物についての質問では、「放射能汚染の問題が心配なため、特定の産地のものは買わないようにしている」が約42%と最も多く、次いで「産地について意識はしているが、実際はあまり気にせず買い物をしている」が約41%、「被災地を応援したいので特定の産地のものを意識して買うようにしている」が約21%でした。

 「特定産地のものは買わないようにしている」人は、12歳以下の子どもがいる家庭では約46~51%、東北地方では約51%と比較的高くなっています。

 特に子どものいる家庭や被災地の方々に対して、原発事故が大きな影響をおよぼしていることが伺えます。また、「意識はするがあまり気にしない」という現実的な選択肢が用意されたことにより、こうした消費者も少なからずいることがよくわかる結果となりました。

強く意識することは「風評に惑わされない」

 一方、内閣府が行う「国民生活に関する世論調査」では、まったく異なる項目について調査が行われています。昨年10月の調査では、現在の生活について、所得や資産、住生活など各面での満足度を質問し、「食生活」については、「満足」が約24%、「まあまあ満足」が約64%で、合計約88%が満足と回答しており、他の項目に比べ、満足度が最も高い結果となっています。しかも、食生活の満足の度合いは、時系列でみると、平成20年、21年、22年、今回と、少しずつ上昇しており、ここでは震災によるマイナスの影響が伺えません。

 この世論調査では、「震災後、強く意識するようになったこと」も質問しています。11の選択肢中、上位6項目は、「節電に努める」約59%、「災害に備える」約45%、「家族や親戚とのつながりを大切にする」約40%、「風評に惑わされない」約38%、「地域とのつながりを大切にする」約36%、「食品の安全面に気をつける」約28%でした。

 消費者の不安という冒頭の言葉にもどってみると、不安をもつ人はたしかに多いといえます。もともと事故前の「平常時」でも、こと食品の安全性に関しては意識が高く、農薬や添加物に関するアンケートでも不安だという人が7~8割になることもあります。ただし、不安の感じ方は人それぞれであり、特に、今回の放射性物質の場合、地域や家族構成などの要因によっても傾向が異なる状況が見られました。

 世論調査では、家族や地域などとのつながりを大切にする姿勢が見られます。多くの消費者は、この状況の中で、自分なりの判断で食品を選んだり、あるいは被災地を応援したりしているのではないでしょうか。不安がるのも消費者、買って応援するのも消費者。消費者を一面的にとらえてはいけない。自戒をこめて、つくづくそう思いました。

(参考)
消費者庁「食の安全に関する消費者意識調査」

公益財団法人生協総合研究所「生活協同組合研究 2012年2月号 Vol.433」(「原発,新エネルギー,節電に関する生協組合員の意識──アンケート調査結果から見えること──」松本 進)

内閣府 国民生活に関する世論調査

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