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リアル消費者道|森田 満樹

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巷で紹介される消費者って何だかワンパターン。でも、私のまわりの消費者はもっと多様で面白い。新しい消費者像をリアルに伝えたい。
プロフィール
九州大学農学部卒業後、食品会社研究所、業界誌、民間調査会社等を経て、現在はフリーの消費生活コンサルタント、ライター。

「危ない中国食品」に惑わされない!4つの理由

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2018年4月26日

2018年4月、週刊文春に「危ない中国食品」という記事が3回にわたって連載されました。厚労省が毎年公表している輸入食品監視統計から、独自の「汚染食品リスト」を作って、警鐘を鳴らす内容です。広告や記事を読んで不安になるかもしれませんが、ちょっと待って。記事には、誤解を招く表現もみられます。「中国食品」だからといって避けなくてもよい、4つの理由をまとめます。

その1 中国の違反率は他国と比べて高くない
その2 違反内容は中国固有の問題ではない
その3 違反イコール危険ではない
その4 日本の輸入食品の安全は3段階で守られている

 その1 中国の違反率は他国と比べて高くない

厚労省が毎年公表している「輸入食品監視統計」によれば、平成28年度の輸入届出件数は約234万件・輸入届出重量は3,230万トンで、この輸入届出のうち約20万件を検査して、773件を法違反としています。輸入届出件数の0.03%が違反となっています。平成29年4~9月も輸入届出件数の0.03%が違反であり、違反率が低く推移していることがわかります。

平成28年度の輸入件数が多い上位5カ国は、中国、米国、フランス、タイ、韓国の順で、この5カ国の違反件数は、中国が 181 件と最も多く、米国 90 件、タイ 54 件、フランス 28 件、 韓国 18 件と続きます。中国は他国と比較して輸入件数がダントツに高いため、検査件数も違反件数も多くなります。

一方、検査件数に対する違反率をみると、米国 0.49%、タイ 0.42%、韓国 0.26%、中国 0.25%、フランス 0.24%であり、中国の違反率は他国と比較して特に高いわけではありません。この点について、公益財団法人 食の安全・安心財団が、リリースを公表しています。

食の安全・安心財団プレスリリースより (厚生労働省 平成 28 年度輸入食品監視統計より、検査率=検査件数÷輸入件数、違反率=違反件数÷検査件数を算出)

食の安全・安心財団プレスリリースより
(厚生労働省 平成 28 年度輸入食品監視統計より、検査率=検査件数÷輸入件数、違反率=違反件数÷検査件数を算出)

 その2 違反内容は中国固有の問題ではない

違反内容はどうでしょうか。平成28年度の違反件数773件のうち、食品衛生法11条違反(微生物・残留農薬等の規格違反、添加物の使用基準違反)が471件、6条違反(アフラトキシン等の有害物質の付着等)206件と上位を占めています。週刊誌の記事では、中国産たまねぎやあさりの残留農薬違反(11条違反)、落花生のアフラトキシンの付着(6条違反)など詳しく報じていますが、同様の違反は他国でも見られます。アフラトキシンの違反件数では、米国と中国は同数でした。

残留農薬違反も中国だけの問題ではありません。たとえば品目別でみれば、輸入食品全体の違反で一番多いのはカカオ豆(32件)で、平成28年度の残留農薬違反の4分の1を占めます。カカオ豆は中国ではなく、ベネズエラ産、エクアドルの輸入品の違反が報告されていますが、「カカオ豆は危ない!」といった記事にはなりません。

それもそのはず。中国産たまねぎも、ベネズエラ産カカオ豆のケースも、残留農薬基準超過はわずかで、それを食べたとして健康に影響の出るような量ではありませんでした。記事では中国の違反事例をことさら取り上げて、農薬の中毒症状を紹介しながら危険を煽っていますが、そこには「量」の概念はありません。

 その3 違反イコール危険ではない

このように、違反イコール危険とすぐに直結するわけではありません。たとえば残留農薬基準基準値は、農薬ごとの一日摂取許容量(ADI)から十分な安全性を確保できるよう農作物ごとに割り当てられます。このため、1つの作物で基準値を多少超過してもすぐに健康影響はないのですが、安全のためにそれぞれが基準を守り、きちんと管理されることが重要です。

また、見出しに「中国産キャベツに大腸菌」という文字もありますが、これも誤解を招きます。輸入時の検査で、微生物の規格として冷凍食品の大腸菌群などが定められており、確かに平成29年にはキャベツの冷凍食品で大腸菌群の不適合事例が1件ありました。

しかし、大腸菌群と大腸菌は全く異なるもの。大腸菌は人や動物の腸内に存在し、食品からこの菌が検出されれば糞便に直接的または間接的に汚染されることになります。一方、大腸菌群は乳糖を分解してガスを発生させる菌で、大腸菌も大腸菌群に含まれますが、植物、土壌、水などに広く存在する菌も含まれます。大腸菌群を調べるのは、衛生状態の確認のためであり、大腸菌が検出されたわけではありません。

それでもこの事例でキャベツは「汚染食品」リスト入りをしているのですが、ここでは代表的な商品として「スーパーや八百屋で売られている安価な丸キャベツ」と紹介されています。微生物規格が定められているのは冷凍食品などの加工食品であり、生鮮食品の丸キャベツは関係ありません。

この記事を読んで、中国産だから食中毒になると思うのは間違いです。厚労省が平成20年度から毎年、野菜、食肉などの食中毒菌汚染実態調査を行いその結果を公表しています。直近のデータを見ると、カイワレ、カット野菜、漬物野菜などに、糞便大腸菌群(E.coli)陽性の割合が一定数含まれます。国内の野菜でも、生で食べる時にはちゃんと洗う、体調の悪い時には食べないなど注意が必要です。

その4 日本の輸入食品の安全対策は3段階で守られている

もう一つ大事なことは、これら違反食品は日本に流通してはいけないことになっている、という点です。輸入時の検査で違反となれば、その場で廃棄になるか、シップバックなどお国に帰ってもらうか、仮に一部流通していても国内で回収の措置がとられるかが原則です。「汚染食品」リストを見ると、まるで違反食品が外食のサラダや立ち食いそばのかき揚げとなっていくらでも販売されているような、そんな誤解を生んでしまいます。

「それでも全部検査しているわけではないでしょう?」と思われるかもしれません。最初にご紹介したとおり、全ての輸入届出件数のうち輸入時に検査しているのは一割足らず。検査対象にならず、違反のまま売られているかもと心配する方もいます。

しかし、輸入時に全てを検査するのは、コストも時間もかかり現実的ではありません。諸外国をみても、全数検査をしている国はありません。それでは検査しない食品は危ないかというとそうではありません。日本では効率的に安全性を確保するために、「輸出国対策」「輸入時対策」「国内対策」の3段階でチェックする体制をとっています。(厚労省パンフレットより抜粋)

厚生労働省パンフレットより

厚生労働省パンフレットより

このうち、よく知られているのは水際の「輸入時対策」。全国各地の検疫所で、まずは輸入者から輸入前に相談を受けて全ての輸入届出について書類審査を行います。初めて輸入するような食品は、農薬や添加物の違反がないか、衛生的に管理されているか入念なチェックを受けます。

検疫所では書類審査だけでなく、抜き打ち検査である「モニタリング検査」を行います。検疫所の職員が、計画に沿って偏らないよう検査品を集め、最新の検査機器が揃う検査センターに送られて検査が行なわれます。輸入食品とひと口にいっても、食品の種類や国によって違反の可能性が高いものもあります。このような場合は輸入の度に検査される「命令検査」が行なわれます。抜き打ち検査で違反の可能性が高いとわかれば、すぐに命令検査に移行する―こうして輸入時の検査はメリハリを利かせて、事前審査とともに効率的に行われます。

「輸出国対策」はあまり知られていませんが、輸入前に事前に二国間協議や現地調査などを行って、輸出国による安全性を高める方策です。相手国の生産現場に出向いて、どうすれば日本に輸出できるようになるのか事前に指導などを行う場合もあります。相手国も違反となれば廃棄処分など大きな損失を被るため、真剣に対応します。中国においても日本の基準をクリアするよう、日本向け食品をつくります。同じ中国で作られるものでも、中国向けと日本向けでは作り方が違うのです。こうした取り組みも功を奏して、輸入食品全体の違反率は低い水準をキープしているのです。

「国内対策」は、全国の都道府県の保健所などが対応します。国内で販売されている輸入食品を店舗から抜き取り、微生物や残留農薬、食品添加物、アフラトキシンなどの検査や指導を行います。その内容は公表されますが、ここでの違反率は国産と輸入食品を比較しても大きな差はありません(東京都の平成28年度の検査結果を下記に示します)。違反が発見された場合は、自主回収などが行なわれます。既に消費者に販売されていることもありますが、その場合でも再発防止などの指導が行なわれます。

食の安全・安心財団プレスリリースより (東京都福祉保険局 平成 28 年度違反調査結果より違反率=違反数÷検査品目件数を算出)

食の安全・安心財団プレスリリースより
(東京都福祉保険局 平成 28 年度違反調査結果より違反率=違反数÷検査品目件数を算出)

このように3段階で輸入食品は検査され、指導されることで安全性が確保されています。検査をすり抜けて違反品が流通していたとしてもそれを口にする確率は相当低く、それが健康に影響を及ぼすような事例もほとんどありません。中国食品も含めて、輸入食品の安全性のために様ざまな対策が講じられています。そのことを、もっと知ってもらいたいと思います。(森田満樹)

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