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「食べるたのしみ」にこだわり抜いた「これからの介護食品をめぐる論点」がまとまりました(菅 いづみさん)

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2013年7月29日

 農林水産省食料産業局が今年2月から7月まで開催した「これからの介護食品をめぐる論点整理の会」が5回にわたる論議を整理し論点をまとめました

(実はネーミングも今後の検討課題のひとつなのですが、あえて「介護食品」としています。)

 農林水産省が調べたところ、元気な高齢者が三食の食事から必要なエネルギー摂取ができているとみられる一方で、在宅介護を受ける高齢者の6割が栄養不足の状態にあるとの指摘があります。介護食品のニーズは2兆5千億円と試算されているそうですが、現時点の介護食品市場は約1千億円に留まっているとのことです。介護食品についての潜在的ニーズなどに対してどう対応していくか、また高齢者の食事摂取のあり方、介護食品等の開発の動向、介護食品の普及など多くの課題が考えられます。

 そこで介護食品の現状や課題及びその対応について論点整理を行い、将来を見据えた介護食品のあり方等などの検討を行うため、13名の委員と8名のオブザーバーで議論の場がもたれました。5回のうち3回で介護食品の製造者や介護施設関係者、配食サービス関係者、自治体担当者、病院食関連事業者、リハビリの専門家等13名からのヒアリングを重ね、ヒアリングにおける発言者との意見交換とともに、あらゆる角度から意見が出されました。論点にもあるとおり、市場規模も大変大きく食品業界の関心も高かったようで毎回100人を超す傍聴がありました。

 それらの意見が(1)介護食品の定義の明確化、(2)高齢者の栄養に関する理解の促進、(3)介護食品の提供方法、(4)介護食品の普及、(5)介護食品の利用に向けた社会システムの構築の5つの視点で取りまとめられました。

そのなかでも私が一番気になったのが、「論点 Ⅱ 今後の検討に当たっての視点」の「2 高齢者の栄養に関する理解の促進」において、「低栄養により、病気にかかりやすくなったり回復が遅延するとの指摘や活動性や認知機能が低下するなど様々な影響を及ぼしているとの指摘もあるにもかかわらず、低栄養が及ぼす影響についての認知度が低いのが現状である」とあります。幾人かの専門家からも指摘がありましたが、お年寄りはやせてあたりまえということは無いのだそうですが、そのことがまったく知られていないと言うのです。

 実はこの会が進行している5月に、義母が身体の不調を訴え緊急に手術をうけました。腸が腐ってしまっていたのだそうで、その部分を切り取り人工肛門を装着しました。しかし、ICUから出られることなく逝ってしまいました。血管がもろくなっていて薬の効果がなかなか出ないとの事でしたし、亡くなる前日に低栄養も一因して傷口が付かないとの説明を受け、再度縫い合わせる手術を行おうとしていた矢先でした。

 義母は認知症があり、もともと足が悪かったため晩年は介護施設に入ってもらい車いすの生活でした。食事が食べられない時はがりがりになっていて認知症が悪化してしまうようなので、毎週面会に行ってどうしても食事がすすまない時のためにおやつを預けたり、面会の際に本人が好きな物を食べさせたりしていました。私も義母が亡くなる前は認知症があるので食べられなくてもしかたがないとあきらめていましたので、専門家に指摘されたとおりだったと思い知らされるとは思ってもみませんでした。

 今回の論点整理の会ははっきりと栄養と健康状態の因果関係が示されました。その上で対応策として高齢者の栄養について助言アドバイス出来る人材をどのような場所へどう配置する事が重要か、話し合われました。また、栄養についての専門家と介護の現場の専門家の連携など社会システムの構築、「介護食品」を利用しやすくするため介護サービスへの位置づけなどが早い段階で話し合われるよう求めています。

 「介護食品」は必要としている人にとって天寿を支えるものであり、介護する人が使いやすい環境が整備されることが大切です。当たり前の食材のひとつとして種類が豊富にあり、いわゆる老々介護でも楽に食事の手助けとなり、使い続けることが可能な価格におさえられる。夢のような話ですが、そのために高齢化が進む日本の大きな課題として調査や研究が必要であるとしています。

 最後にこの会のよかった点をもう一つだけ付け加えますと、委員も事務局も全員が食事としての介護食品にこだわり抜いたことだと思います。あくまでも人間らしい食事なのです。安全や栄養面もさることながら、高齢者の好みや地域の調理方法、家族と同じような料理、季節感を取り入れるなど、食べる楽しみが得られるやさしい介護食品の開発を事業者に望んでいます。 

菅 いづみさん
元全国消費者団体連絡会事務局。農林水産省「これからの介護食品をめぐる論点整理の会」委員。長年にわたって生協の活動に携わり、その後、消費者団体として活動を行ってきた。

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