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めんどな話になりますが…|松永 和紀

どんなコラム?
職業は科学ライターだけど、毎日お買い物をし、家族の食事を作る生活者、消費者でもあります。多角的な視点で食の課題に迫ります
プロフィール
京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動

4. わかめの製法には工夫が満載〜わかめをめぐる9つのストーリー

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2014年3月19日

Q. 干し、湯通し塩蔵、乾燥カット……どれが一番いい?
A. それぞれ特徴あり。使い分けを

wakame illustration わかめの産地ブランド化は早く、江戸時代には国東わかめ(大分県国東半島)、鳴門わかめ(徳島県鳴門)、加太わかめ(和歌山県加太)などがもう知られていたそうです。多くは天日干しで流通していましたが、鳴門わかめは少し変わっていて、灰干しわかめが主流。弘化2年(1845年)に前川文太郎さんという人が、生のわかめに灰をまぶして天日乾燥させる方法を編み出したそうです。アルカリ性の灰をまぶすことでわかめの体内の酵素が働くのを防ぐため、わかめの葉が溶けてどろどろになることがなく、クロロフィルも分解されず、美しい緑色の干しわかめになります。

収穫されたわかめを広げたところ

収穫されたわかめを広げたところ

 そして、Q1で書いたとおり昭和40年代後半、生のわかめをさっと沸かした海水に通して塩をまぶす「湯通し塩蔵わかめ」が産まれ、うんと扱いやすくなり、保存性もよくなりました。

 養殖わかめは前述のとおり、海の表層に浮かぶ養殖縄から芽を出し数メートルの丈に成長します。根元に胞子葉(芽かぶ)、そこから茎(芯)が伸びて、葉が大きく広がります。成長点は元葉、元茎の部分。葉の先端の部分が一番古い細胞なので、先枯れが少し出始めた2〜4月が収穫どきです。
 数メートルに伸び収穫された生の原藻は加工場へ運ばれ、先枯れや芽かぶ、元茎は切り落とします。この段階では、わかめは茶色。しかし、わかした海水の中に数十秒浸すと、クロロフィルの緑色がくっきり鮮やかに見えてきます。そこで引き揚げて、海水ですばやく冷却します。その後、適度に脱水し、塩を混ぜて塩分濃度約20%に調整したのが一次加工品です。

生のわかめを湯通し後、塩蔵することによって、ここまで小さくなる。この段階では、茎がついており、茎をとる「芯抜き」が手作業で行われる

湯通し塩蔵された一次加工品。数mあった生わかめが、ここまで小さくなる。茎がついており、この後に茎をとる「芯抜き」が手作業で行われる

 この段階のわかめは茎に葉がついたままですので、さらに加工業者の段階で茎と葉を分ける「芯抜き」を行い、塩分を40〜50%程度に調整して家庭用に小分けして包装します。

 芯抜きは、茎と葉を裂いて分けるシンプルな作業なのですが、わかめの形状は一株一株、微妙に違い、葉、茎の厚みや裂くのに要する力も異なり、機械化が難しく、今でも手作業に頼っています。
 日本わかめ協会会長が社長を務める宮城県大船渡市の加工販売業、(株)「松栄」の工場を見学した際に、芯抜き体験をさせていただきました。わかめは冷たく塩が手にしみ、おそらく手袋をしていても楽ではないはずです。

芯抜き後の塩蔵わかめを計量して家庭用の袋に詰める

芯抜き後の塩蔵わかめを計量して家庭用の袋に詰める

 こうして、葉だけの湯通し塩蔵わかめが、商品として家庭に届くのです。冷蔵庫に入れておけば長持ちします。消費者は水でさっと洗い戻すだけで、ざくざく切って食べられるのです。

 乾燥わかめ業者は、この湯通し塩蔵わかめを原料とします。洗って塩分を取り除いてカットして乾燥わかめにします。
 乾燥わかめの最大手、「理研食品」の宮城県多賀城市の本社工場で乾燥工程を見学しました。親会社の「理研ビタミン」が売る「ふえるわかめちゃん」「わかめスープ」などで有名です。現在の日本人のわかめの大量消費を牽引したと言っても過言ではない企業でしょう。

 本社工場も、津波で1階にあった設備は流されましたが、2011年6月には2階の生産ラインでの製造を再開し、現在では1階もきれいに整備されてフル稼働しています。

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生のまま湯通しして冷凍する「冷凍わかめ」以外は、まず湯通しして塩をして塩分20%程度に調整する「一次加工」を行い、塩分を40〜50%程度に調整して小分けしたり、塩を抜いてカットし乾燥させたりする「二次加工」を行う。除去された芯(茎)や芽かぶも別に加工されて売られる

 

 乾燥カットわかめの製造は、冷蔵庫で管理されている湯通し塩蔵わかめを取り出し、付いている塩や異物を取り除いて行くところからはじまります。その後、ドラム式洗濯機と同じように、飽和食塩水でわかめを回転させ持ち上げて落として洗浄することを繰り返します。その後、小さくカットし、また洗浄。今度は真水を混ぜながらを洗い、塩分を除去して行きます。その後、脱水し乾燥へ。
 乾燥も回転させながら行い、カール状に仕上げて行きます。
 なんだか簡単そう。ところが、実際に工程を見ると、いくつもの装置がつながっていて大変複雑です。実は、乾燥わかめ製造は、異物との闘いでもあり、異物を取り除くためにさまざまな工夫が凝らされているのです。

乾燥工程で見つかる異物の一部。漁網や砂などが多い

乾燥工程で見つかる異物の一部。漁網や砂などが多い

 わかめは海の表層をゆらゆらして育ち、収穫されます。その時に、海の中にあるさまざまな異物も一緒に巻き込み引き揚げてしまいます。砂や貝殻、漁網、釣り糸、葉っぱ、ポリ袋の切れ端……。わかめ1トンに1万から3万個の異物が混じっているそうです。それを取り除かなければなりません。

 湯通し塩蔵わかめだと、家庭で水につけて戻して洗い流すので、消費者も異物に目が行きません。もちろん、家庭用に小分けする加工業者の段階で目立つ異物は取り除きますが、小さな粒の砂などは入っていても気付かれにくいもの。ところが、乾燥わかめになると、消費者はとても細かい異物にも気がつきます。
 そのため、異物を風力で飛ばしたり色で識別したり、金属検出器やX線異物検出器を通してはじいたり、さまざまな装置が工程に入っているのです。人の目でもチェックして包装してやっと商品になります。
乾燥わかめというと、きれいで使いやすくてお安いというイメージですが、その背後には、こうした入念な生産工程管理があります。

 さまざまな加工法があることで、消費者は年中、わかめをおいしく簡単に食べられます。干しわかめは、洗って切ってそのまま食べたり、ゆでたり。湯通し塩蔵わかめと乾燥わかめは、湯通ししてありますので生の風味はありませんが、干しわかめに比べれば柔らかい食感。乾燥わかめはなにより手軽で、常温で日持ちします。水に戻すと10倍以上に増えます。乾燥わかめを水で適切な時間戻したものは、湯通し塩蔵わかめの水戻し品と遜色ない味、歯触りだと、個人的には思います。お好みで選んで食べてください。

<参考文献>
・ 「わかめ入門」(日本食糧新聞社)
日本わかめ協会ウェブサイト
理研食品
理研ビタミン

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