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めんどな話になりますが…|松永 和紀

どんなコラム?
職業は科学ライターだけど、毎日お買い物をし、家族の食事を作る生活者、消費者でもあります。多角的な視点で食の課題に迫ります
プロフィール
京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動

7. 中国産わかめ、なにが違う?〜わかめをめぐる9つのストーリー

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2014年4月17日

Q. 中国産わかめは品質が悪く、危ないの?
A. 産地のみでは決まりません。中国産もピンからキリまで。日本の加工業者にも責任があります

さまざまな製品を集めて、比べてみた

さまざまな製品を集めて、比べてみた

 わかめの品質や安全性は、産地だけでなく、養殖や加工における技術、生産工程管理によって大きく変わります。三陸へ行った時に、日本わかめ協会会長が社長を務める国産わかめの加工販売企業「松栄」の岩手大船渡工場で、面白い経験をさせてもらいました。

 小売りされている国産、韓国産、中国産の湯通し塩蔵商品を集めて、それぞれ触ってみたり葉を広げてみたり、匂いをかいでみたりして比較したのです。洗面器にわかめをどさっと入れてモミモミ。製品によって、感触が違います。プロも買い付けする時に同じように、触って匂いをかいで食べてみて、判断するそうです。製品ごとに大きく違うのがはっきりとわかりました。

 では、品質や安全性の違いは、どこから出てくるのか?
 まず、栽培時の病虫害で品質が大きく変わります。養殖わかめは、寄生虫や細菌、小型甲殻類などの被害を受け、穴があいたり色が白くなったりします。Q2で書いた通り、薬剤を使って駆除するわけではなく、適正な密度で養殖し、早期の被害発見を心がけ、そのわかめを採ってしまって被害拡大を防ぐという対策しかありません。

わかめを手でつかんで、触ったり匂いをかいだりして、品質を調べる

わかめをつかみ、葉を広げて穴があるかどうか見たり、匂いをかいだりして調べる

 さらに、適期の収穫が重要。長く栽培し過ぎて1年草であるわかめが老化すると、葉先から枯れて行き、病害虫の被害も大きくなって行く。早く採りすぎると、まだわかめが小さく収量が低い。したがって、収穫のタイミングも大きなポイントです。

 国産の養殖業者は、高品質であることを最大の特徴と考えていますので、適期収穫を心がけ、わずかに枯れた葉先は切り落としますし、老化が進んで枯れた葉の面積が広いわかめや、穴があまりにも多いものは出荷しないそうです。また、雨の日は収穫しません。生のわかめが雨に打たれると、その部分だけ色が変わってしまうからです。
ところが、中国の養殖業者の中には、収量を上げることに専念し、枯れたり穴があいたり品質が悪いわかめも、湯通し塩蔵して加工してしまう人たちがいるそうです。

 国産、中国産共に、生わかめを湯通しした後に海水ですばやく冷却し、軽く水切りして粗塩を混ぜて塩分濃度20%前後にして、冷蔵や冷凍して出荷、という流れです。この先の二次加工も重要です。この湯通し塩蔵わかめから異物を取り除き、水を入れてほぐし、塩を加えてさらに塩分調整を行い40〜50%にして小分けして消費者へ、という二次加工段階でも、品質が大きく変わってきます。
 そして、この段階で品質を落とすのは日本の業者、という現実も、残念ながらあるのです。

残念ながら、みるからに水分、塩分が多い製品がある

残念ながら、同じ重量の他製品に比べ、見るからに水分、塩分が多い製品がある

 それは、小売り用の製品をいろいろ見てみることで、はっきりとわかりました。日本の加工業者が、中国産のわかめを仕入れ、二次加工して中国産として販売している製品の中に、あきらかに水分が多くわかめも穴だらけ、カサカサした葉まで入って、塩もどっさり、というものがありました。
 中国産の湯通し塩蔵わかめの価格は、国産の5分の1ほど。質の悪い中国産を仕入れ、さらに水増し、塩増しすれば、激安品に仕上がります。中国の養殖業者に問題があるだけでなく、日本の加工業者にも責任があるのです。これを、「だから、中国産は…」と語るわけには行かないでしょう。

 一方、日本の加工業者の中には、中国の養殖業者を指導して、日本向けに良質のわかめを養殖してもらい、それを輸入しているところもあります。
 乾燥カットわかめの最大手、理研食品は国産だけでなく、中国産わかめも取り扱っていますが、養殖海域の水質調査を行って問題がないことを確認し、養殖技術も指導し、「トレーサビリティ」も確保しているそうです。枯れた葉の切り落としなどの処理も、国産と同等のレベルを要求しています。さらに、加工については、中国で有限公司を設立し、自社グループの企業として衛生や品質を確保した加工を行い、日本に輸出しています。
 こうしたやり方をとれば、国産と品質や安全性に違いが出るはずもありません。
 結局、中国の養殖業者、国内の加工業者双方が関係しての「ピンからキリまで」というのが、日本で売られる中国産わかめの実態です。

 現実に、格安の湯通し塩蔵わかめや乾燥わかめが、スーパーや100円ショップなどにも並んでいます。養殖わかめの栽培方法、加工方法から考えて、非常に有害なものが混じる危険は、国産、外国産問わず、考えにくいと思います。しかし、品質はバラバラ。安いものはやっぱり、それなり……。

 「松栄」の専務取締役、岩﨑新一郎さんの言葉が印象的でした。「消費者が、質のよくないわかめを買って食べて、『わかめはおいしくない』と思ってしまったら、国産、中国産を問わず、もう二度とわかめを買ってくれないでしょう。それが怖い。松栄では、最高の品質のものを作っています。質の低いわかめを、だれにも作ってほしくないんです」。なるほど。
 安すぎるものには注意し、産地や販売業者、価格などを見ながらいろいろ買ってみて、自分好みの味、価格の製品を探す。消費者も柔軟に、「選び取って買う力」を高めて行くことが求められているように思えます。

<参考文献>
松栄ウェブサイト
・ 松栄見学資料
理研ビタミンウェブサイト
・ 「わかめ入門」(日本食糧新聞社)

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