ホーム >  専門家コラム > めんどな話になりますが… > 記事

めんどな話になりますが…|松永 和紀

どんなコラム?
職業は科学ライターだけど、毎日お買い物をし、家族の食事を作る生活者、消費者でもあります。多角的な視点で食の課題に迫ります
プロフィール
京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動

9.食べ方を再度、伝えて行かなければ……わかめをめぐる9つのストーリー(終) 

  • シェア
  • Check
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Share
2014年5月2日

Q.わかめ業界、これからの課題は?
A.わかめの戻し方、食べ方を知らない人が増えています。改めて、PRが必要な時期に来ています。

 日本人が長年にわたって慣れ親しんできたわかめ。ところが今、戻し方、食べ方を知らない人たちが増えてきていて、わかめ業者には苦情がたくさん来ているそうです。
たとえば、「わかめを買って食べてみたけど、塩からくて食べられなかった。こんなに塩だらけの製品を売るなんて、信じられない!」。この方、湯通し塩蔵わかめを水戻ししないまま、食べてしまったようです。

 たとえば、「乾燥わかめを食べようと思ってお味噌汁に入れたんだけど、わかめが増えて鍋一杯になってしまった。どうしてくれるの!」 この方、乾燥わかめが水を吸ってどれくらいに増えるか、考えていなかったようです。この苦情は非常に多く、乾燥カットわかめ販売の最大手、「理研ビタミン」の商品は、パッケージの裏に「1人前は1g、スプーン1杯」などと書き、「10倍以上に増えます」と詳しく説明しています。

 恥ずかしながら、私も失敗。芽かぶを買ってお湯をかけてきれいな緑色にしてから刻んで食べてみたのですが、どうも渋みがあって食べられない.スーパーの魚売り場には、芽かぶの食べ方として「湯通し後、包丁で細かく刻む」と書いてあって、その通りにしたのに……。
 渋くて食べられないので尋ねたら、「もしかして、太い芯も刻んでませんか? 芽かぶの芯、つまり茎は切り取って、茎に付いている葉っぱのところだけ湯通ししなきゃ」というお返事でした。茎を切り取って刻んだら、おいしくいただけました。

理研ビタミン社員で日本カットわかめ協会事務局を務める大場加奈子さん。海藻愛がにじみ出ています

理研ビタミン社員で日本カットわかめ協会事務局を務める大場加奈子さん。海藻愛がにじみ出ています

 いやはや。こういう消費者が食べ方を知らないための混乱が、さまざまな場面で起きているのです。
 この「わかめをめぐる9つのストーリー」は、理研ビタミン社員で、海藻事業推進室の大場加奈子さんとの出会いから生まれました。大場さんは、20社が加入している「日本カットわかめ協会」の事務局も務めており、業界全体の事情をよくご存じです。食品安全委員会の傍聴などもちょくちょくして、海藻のリスク管理の情報収集までして、加盟社に情報提供しているという切れ者。なにげない会話にわかめ愛、海藻愛がビンビンにじみ出る、という女性です。
 大場さんが、「三陸産わかめの風評被害がまだおさまらないんですよ」と話してくれて、取材を開始しました。芽かぶの正しい食べ方を教えてくれたのも、大場さん。毎日のように食べていたのに、知らないことだらけの「わかめの世界」でした。

わかめも炒めるとおいしい

わかめも炒めるとおいしい

 その大場さんが最近しみじみ、言うのです。「調理の仕方、食べ方を改めて伝えたい。いろいろと工夫して商品に表示しているつもりだけれど、やっぱりうまく伝わっていないのです。しっかりとPRしていかなければ」
 ちなみに、プロならではのプラスαもあって、わかめ独特の磯臭さが嫌な人は、湯通し塩蔵わかめを戻すときも、乾燥わかめを戻すときも、お湯を使うと臭いが飛んで、すっきり食べられるのだそう。大場さんはそうやってわかめを食べているそうです。こうした秘訣も、消費者に伝えられたらいいでしょう。

茎わかめのサンドイッチは、チャレンジ精神あふれる一品

茎わかめのサンドイッチは、、チャレンジ精神あふれる一品

 わかめのレシピもいろいろと開発されています。炒め物やナムル、洋風のトマト煮など、なかなか美味。ただ、理研食品で試食した、茎わかめをマヨネーズで和えてパンにはさんだサンドイッチは……。関係者がみんな頑張っている、ということはよくわかりました。

 理研食品が製造したわかめ製品の販売を担っている理研ビタミンは小学校3年生から6年生を対象とした出前授業も行っています。小学校からの申込みを受けて、「わかめの歴史や紹介したり、数メートルある生わかめの現物を見せて触らせて、湯通しによって鮮やかな緑色に変わる瞬間も、子どもたちが目撃! 子どもたちの反応も良さそうな食育授業です。

 わかめの魅力再発見へ。Q1Q6で書いたとおり、わかめを食べてきたのは世界中で日本と韓国くらい。大事な食文化を伝え続けて行くために、三陸の養殖業者や企業、三陸だけでなく国内外のさまざまな関係者が努力しています。わかめを大切においしく食べて、三陸産わかめの風評被害も吹き飛ばしたいものです。

<参考文献>
理研ビタミンウェブサイト

⇒ めんどな話になりますが…記事一覧へ

専門家コラム一覧

FoodScience 過去記事

以前、他のサイトで掲載されていた記事をこちらより選択してご覧いただけます。
FOOCOM.NET 会員募集 科学的根拠に基づく食情報を消費者に提供するために、ご協力ください。

お知らせ

FOOCOMが「第1回食生活ジャーナリスト大賞」を頂くことに決まりました(3/28)
FOOCOMはこのほど、食生活ジャーナリストの会(JFJ)の「第1回食生活ジャーナリスト大賞(ジャーナリズム部門)」…【全文を読む】
FOOCOM お役立ちリンク集