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めんどな話になりますが…|松永 和紀

どんなコラム?
職業は科学ライターだけど、毎日お買い物をし、家族の食事を作る生活者、消費者でもあります。多角的な視点で食の課題に迫ります
プロフィール
京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動

中国の期限切れ鶏肉問題—ファミマ社長の「裏切られた」にがっかり

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2014年7月24日

 中国の食品会社「上海福喜食品」が、使用期限が切れた鶏肉や、床に落としたパテを拾って製造し販売していたとされる報道を受け、同社と取引をしていた日本マクドナルド、ファミリーマートの2社は、同社の製造した製品の販売を中止した。

 新聞やテレビでは「氷山の一角」と報じ、これまで中国で明らかになった食の衛生問題や偽装等を改めて伝えている。偶然見たワイドショーでは、「中国は、食材を加熱して食べているため、衛生管理の意識が低い」と伝え、コメンテーターが「民度が低い」とつぶやいていた。日本のテレビは、こんな発言を許すほどになったのか。日本もつくづく、民度が低くなったなあ、と思う。
 これから、同じような報道が週刊誌でも繰り広げられるのだろう。

 だが、中国と十把一絡げにするのは意味がない。私はこれまでもさまざまな媒体で何度も、中国産について書いてきた。本欄でも、“中国猛毒食品”のトリック(上)“中国猛毒食品”のトリック(下)中国産、気になる三つの違反事例を書いている。

 中国にはピンからキリまである。その中のピンが、日本に輸入されている中国産のかなりの割合を占める。でも、気になる違反品もある。中国での生産管理はやっぱり、一筋縄では行かない。うっかりしていると、問題が生じる。だから、厳しく管理して行かなければならない。
 中国なくして日本の食は成り立たないという現実が、厳然としてある。輸入届け出数の3割を占めるのが中国である。中国産を排斥したところで、実態として意味がない。気付かぬうちに外食で、中食で、さまざまな加工品で私たちは中国産食品を食べている。
 私たちの食を守るのは、中国産を罵倒排斥してご満悦の週刊誌や、排斥したつもりになっている外食業者などではない。さまざまな事例から多くの情報を読み取り、指導や監視、検査などを改善しようとしている日本企業や自治体、輸入検疫などの担当者ではないか。

 1年前にこうした内容を書いた。今も、この考えはまったく変わらない。
 今回、定期点検の時には問題なく作業し、外部の目のない時に期限切れの肉を混ぜたりする偽装が告発されている。当然、そうしたリスクはある。日本企業の中には、中国における工場点検や品質管理検査の形骸化を避けるため、社員の訪問回数を増やしたり、幹部の教育を徹底し、中国側幹部が従業員に対して厳しく対応する仕組みを作るなど、工夫をしているところも多い。

 ビジネスライクな対応では、中国では侮られる。信頼関係を構築することで「この人たちのために、不正、偽装をしてはいけない」と思わせないと、と言う日本人関係者は多い。だから、あっという間に中国語を覚え必死にコミュニケーションをとる。農場や飼育場、漁場にも足を運び自分の目で確認し、その姿を中国側に見せて、「いいかげんなことはできないな」と思わせる。中国側幹部に緊張感を持たせることで従業員の意識も変え、それを高品質で安全な食品づくりにつなげて行こうと懸命だ。

 中国のある冷凍食品工場へ取材に行った時に驚いたことがある。異物混入を防ぐための管理を見せてもらったのだが、「日本で、こんな管理をするところはない」と断言できるレベルだった。もちろん、日本ができないレベルの高度な管理である。そして、外部の人間が点検したり視察したりする時だけ取り繕う、というようなことは到底無理な、緻密さだった。
 「すごい」と言葉を失う私に、中国側の工場幹部が言ったのである。「日本の商社の佐藤さんが指導してくれたんです。一緒に考えて、こういう仕組みになりました」。もうかなり前の話だというが、そのやり方を今も続けている。懐かしそうに、誇らしげに語る中国人の姿に、佐藤さんの努力が見えるような気がした。

 その後、日本で佐藤さんと会った。今もアジア全域を駆け回り、日本向けの製品の確保と品質、安全性のレベルアップに尽力されている。こういう人たちがいるからこそ、私たちは中国産を食べられる。

 そんな経験も踏まえて、今回の上海福喜食品の事件を考えた時、引っ掛かりを覚えたのはファミマの社長の会見での「私どもは信頼関係を裏切られた」「先方の原料のチェックまではしていない」という発言だ(毎日新聞7月23日)。

 甘い、の一言に尽きるのではないか。それに、責任転嫁している。もちろん、できることとできないことがあって、日本側がどれほど厳しく中国側に衛生管理を求めても、すべての工程を“見張る”ことはできず、従業員のこうした不正が起きる余地はゼロにはできない。だからこそ、前述したようにその余地を少なくしようと大勢の日本人関係者が努力し、Farm to Fork、つまり農場から食卓までの生産工程管理を実行しようと頑張っている。
 彼らの地を這うような現地での努力を見聞きしたことのある私のような者にとっては、「販売を中止した」という事実よりもむしろ、原料チェックもしていないファミマの社長の「裏切られた」のひとことが、どうしても気になる。不信感を覚えるのだ。

 これからしばらくまた、中国バッシングが続くだろう。だが、そもそも、日本だってミートホープ事件が2006年に発覚した。品質の悪いくず肉を混ぜたり、牛ミンチと称して豚肉を混ぜていた。同じなのである。そうした業者もいて、そんな体質は変えてもらう努力を続けるしかない。

 だから、「中国産」と十把一絡げにしないでほしい。品質や安全性のレベルはさまざまであることを理解してほしい。そして、情報開示を求めて判断し、関係者の努力にはきちんと敬意を払いたい。だって、やっぱり中国なくして、日本の食は成り立たないのだから。

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