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めんどな話になりますが…|松永 和紀

どんなコラム?
職業は科学ライターだけど、毎日お買い物をし、家族の食事を作る生活者、消費者でもあります。多角的な視点で食の課題に迫ります
プロフィール
京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動

箱に、小さな字がぎっしり並ぶ?—機能性表示パブコメ案を解説する

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2014年9月18日

 科学的根拠がないのに、「飲むだけ簡単!脂肪燃焼専用サプリ 」などと表示。根拠がないのに、「たったの3ヶ月で理想の姿に!!」 などと商品に記載……。消費者庁の景品表示法関連報道発表資料を見ると、健康食品への措置命令が目立つ。
 
 高齢者に勝手に健康食品を送りつけ脅迫めいた口調で支払いを迫るという手口が広がっているとして、注意喚起を懸命に行っているのは、国民生活センター。いわゆる健康食品は相変わらず、問題だらけだ。

 そうした状況下でもうすぐはじまる新しい機能性表示制度。企業等の責任で表示し、国は書類上のチェックはするものの、安全性や機能性等の科学的な審査はしない。本当に消費者が自主的かつ合理的に選べる制度になるのだろうか?

 消費者庁で検討会が設置されて、専門家による検討会が約1年にわたって続いたが、それも終了して、パブリックコメントが現在、行われている(9月26日まで)。全国で計7回の説明会も開かれ、新制度の概要が見えてきた。

名称は、機能性表示食品?

 新しい制度は、食品表示法に基づく食品表示基準案(内閣府令)により規定される。現在行われているパブリックコメントは、食品基準案についての意見を求めるものだ。
 消費者庁の案をみると、名称は「機能性表示食品」。ただし、説明会で消費者庁担当者は「この名称が一歩リードしているわけではない」と説明し、案と一緒に公表された「関係資料」でも、「機能性補助食品」「機能性健康食品」「健康補助食品」「機能性健康補助食品」などの例が挙げられ、意見が求められている。

 あえて私見を述べるなら、ラベルに機能性が書いてある製品にわざわざ「機能性表示食品」と表示するのは、まさに意味のない繰り返しでトートロジーだ。実体を一言で言い表そうと名付けに頭をひねってきたのが人の社会なのに、その責任を放棄してしまうのか! と、消費者庁の案を初めて見た時、個人的には驚いた。

 今回の国の制度は、「事業者が国に届出をして自らの責任で表示し、国は実質的な審査をしていない。国は安全性、機能性を保証しない」というのがもっとも重要な本質であり、そのことを名称で国民に伝えようとする努力が必要だ。だから、機能性補助食品とか機能性健康食品のような、効果が確定的であるような印象を与える名前をつけてはいけない、と私は思う。確定的なのは、企業が自信を持って販売者としての責任をとることを国に届出た、ということだけ。ならば、名称は機能性届出食品??? 
 
 こんなふうに、事業者や市民がさまざまな角度から考えて、消費者庁に意見を出す、というのが現在の段階だ。

パッケージは字だらけに

 では、その表示の中身は? 
 消費者庁案では、科学的根拠を持つ、つまり学術論文等で効果を確認された機能性関与成分の名称や機能性の内容のほか、1日あたりの摂取目安量、そこに含まれる機能性関与成分の量、熱量やたんぱく質等の栄養成分の含有量、消費者庁から付与された届出番号、事業者の連絡先等を記載する。

 そして、なにより重要なのは、機能性及び安全性について、国による評価を受けたものでない旨の表示。いわゆるディスクレイムである。必ず機能性を表示した面と同じところに記載しなければならず、消費者庁案の文言は次の通り。
「本品は一定の科学的根拠に基づき、事業者の責任において特定の保健の目的が期待できる旨の表示を行うものとして、消費者庁長官に届出されたものです。ただし、特定保健用食品とは異なり、消費者庁長官による個別審査を受けたものではありません。」

 「効きます」という表示と同じところに、長々とこの文言をつけさせることで、消費者の合理的判断に結びつけようと狙っているのだろう。もちろん、この文言内容も記載場所についても、パブコメで意見を述べていい。

 これに加えて、案では製品に次のような表示が必要、とされている。

「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」「本品は、疾病の診断、治療、予防を目的としたものではありません。」「本品は、疾病に罹患している人、未成年者、妊産婦(妊娠を計画している者を含む。)及び授乳婦を対象に開発された商品ではありません。」「疾病に罹患している場合は、医師に相談の上、摂取してください。」「医薬品を服用している場合は、医師、薬剤師に相談の上、摂取してください。」「体調に異変を感じた際は、速やかに摂取を中止し、医師に相談してください。」

 ただし、これは錠剤やカプセルなどいわゆるサプリメント型の加工食品の場合。新制度では、生鮮食品の機能性表示も認めることとなっており、生鮮の場合にも表示内容はサプリメントとほとんと違いがないものの、「本品は、疾病に罹患している人、未成年者、妊産婦(妊娠を計画している者を含む。)及び授乳婦を対象に開発された商品ではありません。」という文言は記載を求めないことになっている。これは、「ヨーグルトや野菜など多くの食品は、未成年や妊産婦にとって重要だし、サプリメントのような過剰摂取にはつながりにくい」という判断からのようだ。

 いずれにせよ、とにかく表示すべき文言が多い。箱の中の説明書で詳しく、とか、店頭のPOPで表示、というようなことは許されず、必ずサプリの箱や農産物の包み紙等に表示しなければいけない。おそらく字だらけ、ぎっしりになるはずだ。あまり字が多いと、消費者は読まなくなってしまう。それに、もっとも重要な、国による評価を受けていないことが、埋没してしまうのではないか、という心配が高まる。 
 「書いていれば責任を逃れられる」という判断に国は陥っていないか? このあたりも意見を出すときのポイントの一つだろう。

事業者は、届出受理から60日後に販売できる

 先ほどから「事業者の届出」が制度の核であることを繰り返し述べてきたが、届出内容も多岐にわたる。表示内容、連絡先、それに安全性及び機能性の根拠に関する情報、生産・製造及び品質の管理に関する情報、健康被害の情報収集体制その他必要な事項を、販売日の60日前までに消費者庁長官に届け出る、とされている。

 要注意なのは、事業者が届出た日ではなく、同庁が書類に記載漏れがないかチェックした後、受理して番号を付与した日が「届出日」となる点だ。

 制度開始時期も、消費者庁の説明会からなんとなく見えてきた。この制度の発端は、規制改革会議の議論であり、それに基づく日本再興戦略(2013年6月14日閣議決定)で、「今年度中の検討開始と、来年度中の結論、実施」が明記されている。つまり、14年度中に開始しなければいけない。

 だが、後述するが、現在パブリックコメントに出されている基準案だけでは、事業者は動きようがない。もっと詳細を示すガイドラインやQ&Aが示される必要がある。消費者庁担当課は今、その準備に大忙しだろうが、これはなかなか高度な学術的判断や政治的な配慮が求められるはずで、完成までにかなりの時間がかかると思う。つまりは、実はまだ、新制度は肝心の部分が隠れた闇の中なのだ。

 それに、おそらく引っ掛かるのは消費者委員会。消費者委員会や部会でのこれまでの審議から見ても、健康食品に批判的な委員が相当数、存在する。したがって、これからのスケジュールは、綱渡り状態になる。

 消費者庁担当者は説明会で「14年度中に販売できるようになるのかどうかは未定」と説明したが、届出から60日間たってからでないと販売できないことから考えても、販売開始は無理ではないか、と個人的に予測している。おそらく、今年度中に、なんとか届出受付を開始し、60日後の来年度に表示した製品が世に出る、という流れではないか。

安全性、機能性の要件はまだ、見えない

 このほか、消費者庁の案を読むと、特定保健用食品や栄養機能食品が、それぞれマークを表示しつつ、ほかの機能性関与成分についてはこの制度に則って表示するという「兼用」はダメ、ということがわかる。また、「食事摂取基準」で基準が提示されている栄養成分も、この表示制度の対象外。つまり、ビタミンやミネラル類、n‒3系脂肪酸などは機能性をうたえない。だが、n‒3系脂肪酸の一種であるEPA 及び DHA は、食事摂取基準2010年版では望ましい摂取量が出されていたが、2015年版では目標数値が消えているので、制度の対象となり得る、という整理だ。このあたり、非常にややこしい。

 さて、事業者にとっても市民、消費者にとっても最大の関心は、どの程度の機能性・効果、安全性があれば、表示をしてもよいのか? ということだろう。実はこの部分、検討会の報告書では一定の見解でまとまっているものの、今回のパブリックコメントではほとんど明らかにされていない。資料には「今後、ガイドライン等で具体的な内容を示す予定」と書かれ、説明会でも踏み込んだ説明はなかった。

 検討会では「身体の特定の部位に言及した表現を行うことも可能」とされたが、具体的にどの程度許容されるのかも、今のところわからない。なにせ、現状の薬事法では、食品が特定部位に作用があるような表現をするのはダメ、となっている。薬事法とどう整合性をとるのか、まだ示されていない。私も本当は「目の健康をサポート」とか「骨の健康を保つ」とか具体的な事例を交えながら解説したいところなのだが、書けないのだ。
 だから、事業者たちも寄り集まっては「まだわからない」と愚痴をこぼし合っている状態だ。
 
 それに、企業の届け出内容、機能性や安全性の根拠をわかりやすく消費者に情報提供し、説明するというのが新制度の基盤なのだが、どうもその点がかなり不十分に思えて仕方がない。事業者だけでなく国にも役割があるはずなのだが、パブコメに出されている案を見ても、国の責任体制は見えて来ない。

 次回、専門家による検討会の報告書と今回の資料を付き合わせながら、新制度が抱える本質的な問題点について考えてみたい。

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