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めんどな話になりますが…|松永 和紀

どんなコラム?
職業は科学ライターだけど、毎日お買い物をし、家族の食事を作る生活者、消費者でもあります。多角的な視点で食の課題に迫ります
プロフィール
京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動

世界の朝食を比べてみると・・・食塩摂り過ぎ大国ニッポンが見えた!

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2014年10月28日

 アメリカ在住の知人から、NewYork Timesの日曜版に面白い特集が載っているよ、と教えていただきました。世界の子どもの朝食特集です。

 記事の冒頭で紹介されている写真がなんと、日本の朝食。大きな目が印象的なSakiちゃんの豪華な朝ごはんです。だって、塩鮭に卵焼き、納豆、かぼちゃの煮物にキュウリの漬物、味噌汁にご飯ですから。もっとも、納豆は、putrid soybean goopと表現されていて、腐った大豆のベトベトの塊、というニュアンス? あまり美味しそうには感じられませんが、まあ、仕方がないですね。

 この特集、「アメリカ人は冷たいシリアルが朝食だと思っているでしょ。でも、世界中を見渡してみると、いろいろな朝食があるよ」と解説して行くもので、写真は日本のほかブラジル、フランス、オランダ、マラウィ、アイスランド、トルコの朝食が紹介されています。
 子どもは甘いものに引かれるとされるけど、アメリカ人は糖質摂り過ぎになってしまうけど、文化や習慣により違うものを食べている子どもたちも、世界中にたくさんいるんだからね。教えてあげるよ……という感じでしょうか。

 アイスランドのオートミールのおかゆ、オランダのトーストに無塩バター、チョコスプリンクル載せなど、その国の定番の朝食メニューの写真もあります。個人的に一番興味をそそられるのはトルコのイスタンブール。オリーブやチーズ、卵、野菜など、実に美しいです。それに、各国の子どもたちのまあ、可愛いこと。

 記事には、コメントが290件もついていて、日本の朝食について「素晴らしい」という賞賛も。一方、「これらは、中流以上の階層の家庭の朝食だ」という指摘もあります。その通りでしょう。わが家でSakiちゃんのような献立の朝食が食卓に並んだことは、たぶん未だかつてありません。うちの娘は、シリアルや「チーズトーストとミルク」、あるいは「おにぎり1個を手にもって、通学路を走る」などが、“朝食”の定番でした。

 食事は各国、各家庭でさまざま。豪華でなくとも、一日、あるいは一週間の単位で、バランスよくいろいろなものを食べることができたらいいのだ、と思うようにしています。

 が、この記事で気になったことが一つ。やっぱり、日本の朝食は塩分が多すぎませんか? たしかに、品数多くタンパク質も豊富で色彩もきれいなのですが、塩分がほかの国に比べて格段に多いと思います。写真でおおまかに各食品の量を推定し、一般的な料理の食塩含有量の資料を基に、過大に見積もることがないように気をつけながら粗く計算してみました。すると、あと数ヶ月で3歳になるというSakiちゃんの食塩摂取量は、1食3.7gぐらいです。写真に掲載されている量は、2歳児の朝食としてはちょっと多すぎるように思いますが、この半分を食べるとしても1.8g強の食塩を朝食で摂ることになります。

 記事の後段ではもう一人の日本人、4歳のKokiくんの朝食も写真で紹介されているのですが、ざっと計算してみると食塩摂取量は約1.8gでした。Kokiくんのメニューは、卵かけごはんに味噌汁、ピーマンとちりめんじゃこの和え物、きんぴらごぼう、牛乳になしとぶどう。こちらも、正しい日本の朝ごはん、という感じ。

 いやはや、食塩摂り過ぎです。世界保健機関(WHO)のガイドラインは、成人の1日の推奨量が5g未満です。日本の2015年版食事摂取基準では、成人は1日男性8.0g未満、女性は7.0g未満が目標量。1、2歳の目標量は男児3.0g未満、女児3.5g未満、3歳から5歳は男児4.0g未満、女児4.5g未満です。Sakiちゃんは、写真の朝食を全部食べたら、1食だけで早くも1日の摂取目標量を突破してしまうのです。

 写真を並べて他国と比較してみると一目瞭然。こんなにも特徴が明確になるとは、私も予想していませんでした。
 日本人の現状の食塩摂取量は、成人男性で平均して14.0g、成人女性で11.8gです(東京大学大学院の佐々木敏教授らの研究成果による)。目標とすべき食事摂取基準よりもはるかに多いのが実情です。昨今、和食推進に国、農水省は懸命ですが、昔の日本人は男性で平均して1日20g摂っていたとか。食塩の摂り過ぎは、高血圧や心疾患等の生活習慣病につながります。

 大人も摂り過ぎ。子どもも摂り過ぎ。おそらく、子育てに熱心で、食事にも手をかけ愛情一杯のお母さんほど、このような朝食を作るのだろう、と推測します。きっと、SakiちゃんやKokiちゃんのお母さん、お子さんをとても大事にして、張り切って朝ご飯も作っている。でもね……。

 時には、見事な和食の朝食もよいでしょう。だけど、品数多い和食は、食塩摂取が多くなりがち、という知識も大事。だからこそ、明日は、気を抜いて手を抜いて、ごはんに卵焼き、あとは生のトマトとキュウリぽりぽり。明後日はシリアルにミルクをかけて。文化を守ることも大事ですが、この日本で気楽に、さまざまな食事を食べることもまた重要。そして、国内生産者だけでなく、輸入食品事業者や海外の生産者も頑張ってくれているおかげで、そうしたバラエティに富んだ食生活をこの日本で送れることに感謝したい、と改めて思います。

(2014年10月16日発行のFOOCOMメールマガジン第172号の内容に一部追加して、掲載しています)

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