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めんどな話になりますが…|松永 和紀

どんなコラム?
職業は科学ライターだけど、毎日お買い物をし、家族の食事を作る生活者、消費者でもあります。多角的な視点で食の課題に迫ります
プロフィール
京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動

全国消団連が意見書(3)〜情報開示のメリットあるが、このままでは買えない

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2015年5月29日

 全国消費者団体連絡会(全国消団連)が5月26日夜、機能性表示食品に関する意見を公表し、会見を開いた。メディア22社28人が参加し、質疑応答が行われた。「メディア懇談会」と銘打たれていたため、自身の意見を述べる記者もいた。意見書の内容については前々回前回でお伝えしたので、今回は質疑応答を中心にご紹介しよう。

 会見には、河野康子・全国消団連事務局長、森田満樹・FOOCOM事務局長、高橋 久仁子・群馬大学名誉教授(食生活教育)が出席した。河野事務局長と森田は、制度構築のために設置された「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」委員、高橋名誉教授には、今回の意見書作成にあたってアドバイスいただいた。

 まず、河野事務局長が挨拶した。「消費者が導入を求めた制度ではありません。これまで大きな社会問題となっているいわゆる健康食品もあり、この制度が消費者に理解され、それなりの機能を果たすのであれば、よりよい制度になるのであれば、と繰り返し、意見書、パブコメを出して来ました。しかし、現在開示されている26製品の情報をみると、機能性の根拠が脆弱であったり、安全性に疑問があるものが見受けられます。制度全体に対して、不信感を抱かざるを得ない状況です。どのような点が問題か、発売前に明らかにすることによって、消費者の被害、不利益の発生を防ぎたいと思います」

 続いて、森田が意見書の内容について詳しく説明した。それについては、前々回前回の記事を読んでいただきたい。高橋名誉教授は、「私は以前から、普通の食事で健康を維持することが大事で、いわゆる健康食品、トクホも含めて、特定の食品に健康効果を期待することは問題、と申し上げて来ました。機能性表示食品制度については、企業が食いついて来ないだろうと思っていました。表示するには根拠が要る。それは面倒くさいことだから、企業はこれまでと同じように暗示とほのめかし、行間を読ませることをするだろう、と勝手に思い込んでいました。ところが、現実はとんでもないことになりました。制度の問題が多々あります。システマティックレビューと言えるレベルでなかったり、これで査読つき論文と言うのか、と問い正したくなるような内容のものもあります。企業責任で表示する制度ですが、こんなもので科学的根拠があると言っていいのですか? と思う。言った者勝ちになり、これからますますひどいものになるのではないか、と懸念している」と述べられた。

 高橋名誉教授は、こうも発言している。「トクホは国の審査を経た商品で、人を対象にした実験で一定の効果があったとされています。しかし私は常々、その効果は非常に小さいと指摘し、そのことが人々に伝わっていないということを問題にして来ました。でも、トクホの方がまだましだ、と思えるレベルのものが、機能性表示食品で出て来ている。科学的根拠があると言える訳がないでしょう、というものが受理されている、という現実をわかってほしい」

 また、河野事務局長は正直な思いも吐露した。「ガイドラインが、施行の3週間前に公開されましたが、あまりにも分厚く複雑で、これは私の理解を超えるな、と思いました。不安を持って4月1日を迎えました。一縷の望みは、発売前に情報が開示されるということ。でも、私自身、検討会委員として少しは勉強したかな、と思っていましたが、提出された書類を読んでも難しくて、適正な判断はできませんでした」

 消費者系のメディアはもともと、この制度に批判的だった。したがって、会見での質問、意見も厳しく、制度自体の導入に否定的な姿勢を全国消団連として示すべきではないか、という趣旨の質問が出た。
 日本弁護士会は既に5月上旬、制度の運用を見合わせ、法律上の整理をし直し登録制度とすることを求める意見書を国に提出している。

 これに対して、高橋名誉教授は「ないほうがいいと思っている。作れるはずがない、と主張して来たし、1日も早く止めるべきだ」と話した。
 河野事務局長は、次のように述べた。「健康は、消費者にとって魔法のような効力を持つ言葉です。でも、私たちが正しい知識を持っているかと言えば、ほとんど無いに等しい。健康になりたいと思えば、栄養を正しくバランスのよい適量の食事、適度な休息、適度な運動。これらが、健康に生きるための1であり、10です。消費者の正しい理解と選択によって、こういう制度がなくても私たちが健康に生きて行ける、と思いたい。消費者の選択によって制度がなくなることを望んでいます」。

 一方、森田の意見は違った。「私は検討会の委員でした。報告書作るにあたって期待していたのは、いわゆる健康食品が目立つ今の世界の健全化です。情報開示され、一定の要件を満たしているものが出てくれば、と考えていました。情報開示という点でこの制度は、トクホよりもある意味進んでいます。今のところどの製品も、GMPをとっています。情報が見えるからこそ、こんなにひどい、こんなものを売っていたんだ、ということがわかってきました。ただ、情報開示を読み解くのは、専門用語があり大変。現時点では、消費者はやっぱり買えない。手を出せない、と思っています」と語った。

 記者からは「今後、具体的にどう動くのか?」という質問も出た。河野事務局長は、制度がどういうものか、消費者の間で情報を共有して行きたい、と言う。森田は、FOOCOMとして、消費者庁に疑義情報を提出して行くことを明らかにした。高橋名誉教授が、一番激しい。「当初は、苦情を企業、消費者庁に申し入れるべきか、と考えていたが、今はばかばかしくてやる気になれない。こんなところにお金を出すよりも、おいしいもの、充実したものを食べた方がいい、という情報の提供に力を注ぎたい」と述べた。

 三者三様。意見は不統一だが、問題の根深さが逆に、浮き彫りになったのではないか。
 最後に私の個人的な考えを述べれば、私も森田と同様、「情報開示」の意味合いは大きい、と考えている。この制度により、前回書いたように、大宣伝されている「ラクトフェリン」の脂肪低減に関する根拠がいかに弱いかが、わかった。多くの企業が「有意差あり」とするトリックが見えて来た。大企業であっても信用できない。高いハードルが設置されていても、所詮ガイドラインに過ぎず、従わない企業がかなり多いという現実が、如実に見えて来た。
 そういう意味では、森田と同じように業界健全化を期待していた私はバカだった、甘かった、というのが今の正直な気持ちだ。

 今回の制度は、情報を消費者が判断する制度だが、気になるのは情報を媒介するメディアや科学者の問題だ。昨今、新聞、テレビ、雑誌は、健康食品の広告・宣伝が大きな収入源である。個別製品の評価が、消費者や科学者からどんどん出て来て消費者に共有された方がいい、と私は思うが、そうした製品にかんする評価情報がマスメディアに掲載される見込みはほぼ、ない。科学者も、企業からの研究費を受けていれば、そうした活動をできない。
 高橋名誉教授によれば、学会でも問題意識は低いという。その結果、情報が消費者に広がらない。

 消費者は、なんの手がかりもなく消費者庁のウェブサイトを見て、河野さんのように個々人それぞれに、「うーん、わからない」と頭を抱えるしかない。
 そういう制度が始まり、もうすぐ店頭に製品が並ぶ、ということを消費者には知ってもらいたい。今言えるのは、特定の食品で健康がかなえられるわけではないこと、そうであってもやっぱり購入したい場合、まずは製品のパッケージを熟読すること、そして、できれば消費者庁のウェブサイトで情報を確認すること。「わからない」なら買わないこと。そして、そうであっても、機能性表示食品の方が、ほかの「いわゆる健康食品」よりは根拠なるものが示されているだけまだマシだ、ということも理解してほしい。

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