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めんどな話になりますが…|松永 和紀

どんなコラム?
職業は科学ライターだけど、毎日お買い物をし、家族の食事を作る生活者、消費者でもあります。多角的な視点で食の課題に迫ります
プロフィール
京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動

FOOCOMが6月19日、消費者庁に機能性表示食品について申し入れ

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2015年6月25日

 FOOCOMは19日、消費者庁に機能性表示食品についての申し入れを行いました。13製品の届出情報と消費者庁の受理について、疑義を呈すると共に、消費者庁にガイドラインの改訂、Q&A等による事業者への指導を求めました。

FOOCOM疑義20150619

 その内容を、かいつまんでご説明致します。

 個別に疑義を呈したのは次の13製品です(19日の時点では、情報が公開されているのはA37まで。うち1製品は届出撤回されていますので、検討は36製品を対象に行いました)。

A1  ラクトフェリン(安全性について)
A4  ヒアロモイスチャー240(安全性について)
A5  ディアナチュラゴールド ヒアルロン酸(安全性について)
A6  健脂サポート(安全性について)
A7  えんきん(安全性、機能性、表示について)
A8  蹴脂粒(安全性、機能性について)
A10 メディスキン(機能性について)
A13 ローズヒップ(安全性、機能性、表示について)
A17 ヒアルロン酸(安全性について)
A21 ひざサポートコラーゲン(安全性、機能性について)
A26 計圧サポート(安全性について)
A27 めばえ(安全性、機能性について)
A29 ディアナチュラゴールド グルコサミン(機能性について)

 あらかじめ説明すると、これらは安全性、機能性、表示等についてガイドラインのレベルを満たしていない、とみられるものです。消費者庁が受理すべきでないものが受理されてしまった、と私たちは考えていますので、事業者に届出撤回や追加情報の提出を求めるように、消費者庁に要請しました。
 とくに、機能性の評価については難しく、論文の質が低かったり、システマティックレビューが恣意的に行われ著しく歪んでいる、と思われるものがほかにもありましたが、主観的な評価は控え、ガイドラインの水準を満たしていないと客観的に指摘できるものに限りました。そうではあっても、13製品も問題製品があった、というのが実状です。

 指摘内容は多岐にわたります。もっとも多くの製品が該当したのは、サプリメント形状の加工食品の安全性評価の不足です。
 サプリメント形状の加工食品は、乾燥、抽出、濃縮等の工程が入り、その含有成分は機能性関与成分以外の製品構成成分、不純物も含めて、過剰摂取につながりやすい性質を持っています。原料や製造・加工工程の変更等により、これらの含有成分や不純物の種類、含有量等が大きく異なることが予想され、一般加工食品、生鮮食品と比べても厳しい安全性評価が必要です。

 機能性表示食品制度においては、安全性をまず「食経験」で評価し、それが不十分な場合には既存情報での確認や動物等を用いた安全性評価試験を行う流れとなっています。
 ところが、機能性表示食品として届け出されたサプリメント形状の加工食品の多くは、1年8カ月〜10数年の販売実績を「食経験」として十分とみなし、製品を動物に投与しての安全性試験などを実施していません。

 販売実績として、まったく足りないでしょう。それに、食品製造においては、特定の産地の原材料が入手できなくなった、供給メーカーとの間で価格交渉が決裂しメーカーを変更することになった、製造方法を一部変更した……というような事態は、日常茶飯事。サプリメント形状の加工食品の場合はとくに、原材料や製法を変えたら「同一製品」ではなくなる可能性も大きいのに、一括りにして販売年数としてカウントするのは無理があります。

  サプリメント形状の加工食品は、販売年数だけの判断に留まらず、機能性関与成分とそのほかの成分、不純物等について、しっかりと安全性試験を行って安全性を確認するべきだ、と私たちは考えています。

 ちなみに、機能性表示食品が参考にしたアメリカの「ダイエタリーサプリメント」制度では、錠剤、カプセル、粉末、ソフトジェル等のいわゆるダイエタリーサプリメントに1994年以前に流通していなかった成分を含める場合には、新規成分(New Dietary Ingredient、NDI)として事前にアメリカ食品医薬品局(FDA)に届け出るとするルールがあります。
 さまざまな試験データを添えて申請し、FDAが安全性について評価を行い、問題なしと認めてやっとダイエタリーサプリメントに使えるのです。アメリカでさえ、要所要所では国の機関が目を光らせています。数年や十数年売ったから安全、というような論法が認められている国など、先進諸国にはありません。

 さらに、私たちが一部の製品で指摘したのは、国際連合食糧農業機関(FAO)/世界保健機関(WHO)合同食品添加物専門家会議(JECFA)の悪用です。
 JECFAは、さまざまな食品添加物について安全性を評価しています。食品添加物も、別の成分や不純物が多かったりするとその効果も安全性も違ってきますので、きちんとした規格が定められ、それに基づいて食品への使用量や使用方法が定められるものです。
 JECFAも安全性評価においては、しっかりと「この規格を満たす食品添加物の一日摂取許容量(ADI)はこれこれですよ」というような報告書を作ります。

 ところが、事業者の中に「JECFAのADIは0〜2mg/kg。それに比べて、我が社の配合量は少ないので安全です」という論旨を記述しているところが2社あるのです。しかし、どちらも原材料として食品添加物規格のものを使っているかどうか、記述していません。これでは、JECFAを引用する意味はないのです。

 添加物規格、というと、なんだか質が悪いように見えるかもしれませんが、まったく逆。かなりの品質保証が要求されるため、添加物規格の原材料は高価です。仮に、原材料が添加物規格ではないのに、JECFAというビッグネームを引用しているとすれば、かなり悪質です。

 ちなみに、こうしたビッグネームの引用は、いろいろな届け出情報で目立ちます。JECFAやEFSA(欧州食品安全機関)、日本の国立健康・栄養研究所など、都合の良い情報についてはこれ見よがしに書く。一方、都合の悪いことは無視。たとえば、EFSAが詳細な検討の末に、因果関係が確立されていないとして機能性表示(ヘルスクレーム)を認めなかった、というような成分も、機能性表示食品として届出されています。当然、EFSAの却下など、無視です。
 でも、書いていないからといって、ガイドライン違反ではありません。書類に書くべきことを書かなければ違反ですが、書くのを求められていないことを、「都合がいいから書く、悪いから書かない」というのは、事業者の倫理の問題なのです。消費者が見破らなければいけない。大変です。

 消費者庁への申し入れに話を戻すと、「蹴脂粒」「えんきん」「ひざサポートコラーゲン」など、これまでに本欄で指摘して来た内容についても、情報を整理して「ガイドラインのこの部分に違反する」というような説明を付けて届出撤回を求めました。

 また、これらとは別の製品で、「システマティックレビューをして採択された論文の一部は、論文精査の結果、除外されるべきであり、レビューをやり直すべきだ」と指摘したものもありました。機能性の根拠は「原則として、疾病に罹患していない者のみ」を対象とした試験であるべきなのに、明らかに違反しているとみられる製品もあり、こちらについても届出撤回を求めました。

 表示についても、問題のある製品が目立ちました。論文、システマティックレビュー等から言える効果と、届出表示にまず、乖離があるのです。たとえば、機能性関与成分の摂食群と食べていないプラセボ群で、ごく一部の期間の内臓脂肪面積しか統計的な有意差がなく体脂肪量は差がないのに、「体脂肪を減らす」と届出表示された製品があります。これは妥当とは言えないでしょう。
 届出表示と容器包装の文言、プレスリリース等の内容に大きな乖離がある製品もありました。根拠となった論文やレビューから言えることと、容器包装との文言は大きく離れてしまい、健康増進法や景品表示法違反の疑いがあります。消費者庁にしっかりと検討していただきたい、と考え、記述しました。

 こうした個別製品に対する疑義情報を踏まえて、消費者庁に対しては、ガイドライン改訂やQ&A等による事業者への指導を4項目について求めています。
 まず、国内外の公的機関の評価を情報として盛り込むようにガイドライン改訂を求め、安全性については疑義が呈された機能性関与成分・製品の受理はしないように要請しました。次に、食経験にかんするガイドラインを整理するように求めました。

 実のところ、食経験にかんするガイドラインの記述は、不備が目立ちます。前述したとおり、サプリメント形状の加工食品は、原材料や工程変更などにより、機能性関与成分だけでなく他の成分、不純物の含有量が大きく変わるのに、これらを踏まえて機能性関与成分、他の成分・不純物を含めた安全性確認を事業者に求める項目がガイドラインにはありません。
 食品のリスクについてきちんと検討すれば、販売実績だけではまったく足りないことは明らかなので、事業者は責められるべきです。しかし、事業者がガイドラインの不備を突いて続々申請して来た、という点では、消費者庁にも大きな問題がある、と私たちは考えます。
 そのため、ガイドライン改訂を求め、Q&A等で食経験について一定の目安を示すように求めました。

 3番目として、質の低い臨床試験論文やシステマティックレビューに基づき機能性表示食品として届け出をしないように、Q&A等で事例を示し、事業者を指導してほしいと要請しました。

 研究の質の良し悪しをガイドラインで規定して、これより上の研究は認める、下は認めないというような線引きをするのは、事実上無理です。
 たとえば、臨床試験の対象者が摂食群、プラセボ群それぞれ10数人というような試験は、偶然に差がつくことも多く、信頼性が著しく低く、根拠とはなりえません。前述のEFSAのヘルスクレーム制度では、専門家が集まって審議し、このような小規模試験をいくら積み重ねても、表示を認めないという決定を下します。でも、日本の制度は、こうした審査がないので、ガイドラインでなにか区別する指標を設定する必要がある。しかし、それは科学的には困難、なのです。「対象者が何人以上なら信頼できるか」はその成分がどれほどの効果を持つかによっても大きく異なります。対象者の人数だけでなく、さまざまな条件でその試験の信頼性は変わってきます。

 小規模の試験からはじめ、複数の試験結果で手応えあり、ということになれば、お金をかけて手間をかけて対象者を増やして、百人、数百人というような試験を実施する。利害関係のない別の科学者も試験をする。それでも一貫して効果を検出できる、となってはじめて、「機能性」のエビデンス確立、となるのが、科学です。小規模な論文1報では、話にもならない。しかし、現実には、機能性表示食品制度は、話にもならない1報で表示が可能です。

 この制度は、研究の質についてはかなりの部分が事業者の良識、倫理と消費者の判断に任されました。おそらく、検討会の委員もガイドラインを作成した消費者庁担当者も「事業者は、まさか出さないだろう」と思っていたレベルが、現実には続々と届け出されています。
 消費者庁には制度を作った責任があり、事業者に改善を促す義務があるはず。数値を示すなどの線引きが難しいのですから、「この規模では、エビデンスとして不足」「このケースは、システマティックレビューの文献除外規定として不適切」など、具体的な事例を事業者側に示すべきです。

 最後に、論文等から言える“効果”と届出表示、容器包装に記載されるキャッチコピー等の間に乖離、齟齬がないように、事業者を指導することを求めました。これら表示の問題も、事例を数多く積み重ねて示して行く必要があるでしょう。それがないと、事業者側の自主的な改善は難しいと思います。

 これについてはちょうど同じ6月19日、消費者庁が「食品表示の適正化に向けた取組について」を公表しましたので、情報として補足してご説明しましょう。
 7月の1カ月間、一斉取り締まりを行うそうです。その中には、「保健機能食品及びいわゆる健康食品の表示」も含まれています。新制度についても監視指導があり、食品表示法だけでなく、健康増進法、景品表示法の観点からも検討されます。
 
 この担当課は、最終的に妥協だらけとなった機能性表示食品制度を作り、届出された書類の受理手続きを進めている同庁食品表示企画課ではありません。表示対策課食品表示対策室です。ここには、公正取引委員会や厚労省から来たベテラン職員が配置されています。3月末にネット上の「機能○○食品」等に改善要請を行った実績もあります。この改善要請により、「機能性野菜」という名称を慌てて、「高成分野菜」に変更する事業者が出て来たり、地方の保健所がスーパーマーケットのPOP等を注意して回るなど、実質的な効果を上げています。期待したいと思います。

 以上、消費者庁に申し入れた疑義情報や要請とその周辺情報についてご説明しました。FOOCOMは今後も、機能性表示食品制度を注視し、改善に向けて努力して行きます。

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