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めんどな話になりますが…|松永 和紀

どんなコラム?
職業は科学ライターだけど、毎日お買い物をし、家族の食事を作る生活者、消費者でもあります。多角的な視点で食の課題に迫ります
プロフィール
京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動

健康食品の安全性や有効性は確立していない〜食品安全委員会の過激なメッセージの本音を、1月28日の説明会で聞こう

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2016年1月15日

 食品安全委員会が昨年、「健康食品」に関する検討ワーキンググループを設置して、その課題について4回にわたって議論し12月、報告書と19のメッセージをまとめた
その内容の説明会が、1月28日(木)14時から、食品安全委員会事務局会議室で開かれる。応募締め切りは、21日(木)17時。

多量に摂ると健康を害するリスクが高まる

 食品安全委員会の佐藤洋・委員長とワーキングループの脇昌子・座長は公表にあたって、「国民の皆様へ」と題した声明を発表した。「これさえ摂れば、元気で長生きできる」という薬や食品はなく、「健康食品」で健康を害することがあるのに、情報が国民の目に触れにくいことを憂えている。そのため、ワーキンググループで、健康被害の要因を整理し、その根拠を文献等により明確にし、国民に知ってほしい内容としてまとめた。「健康食品」で健康被害が出ることをなくしたいという願いを込めた、という。

 内容のエッセンスとして、二人が抜粋したのはとくに次の五つ。

●「食品」であっても安全とは限りません。
●多量に摂ると健康を害するリスクが高まります。
●ビタミン・ミネラルをサプリメントで摂ると過剰摂取のリスクがあります。
●「健康食品」は医薬品ではありません。品質の管理は製造者任せです。
●誰かにとって良い「健康食品」があなたにとっても良いとは限りません。

 なかなか過激だ。非常に重要なことは、ここでいう「健康食品」は健康への効果やダイエット効果などをうたって販売されている食品全般を指し、特定保健用食品(トクホ)や栄養機能食品、機能性表示食品も含む、としていることだろう。
 トクホは、食品安全委員会が製品ごとに安全性評価を行ったうえで、一定の水準を満たしているとして認可している。しかし、健康な人が規定の量を摂取した時には安全でも、摂る量が過剰であったり、食べる人の疾患、体調等によって、それは健康への懸念をもたらしうる。それに、これはトクホに限らず食品全般に共通することだが、「同じ食品を長期間継続して摂りつづけた場合の安全性」はほとんどの場合、確認されていない。トクホでさえも、「安全だ」とは言い切れない。

 栄養機能食品は、規格があるものの企業の自己認証であり、規格を満たさず質の低いものが見つかっている。機能性表示食品の安全性については、これまでその問題点を繰り返し指摘してきた。安全性の根拠が不十分で、品質保証の方法が不明確な製品がずらりと届出リストに並ぶ。
 これらと、それ以外のさまざまないわゆる健康食品をひっくるめて、「安全性や有効性は確立していない」と断じた。これは、食品安全行政上、画期的なことだと私は思う。

報告書から読み取れるのは…

 少々わかりにくいかもしれない。ワーキンググループの報告書を読み、私なりに解釈した説明を続けよう。
 背景にあるのはまずは、「どんな食品にも、リスクはあり、健康被害を産むおそれがある」という科学的理解だ。食品は未知の膨大なリスクの塊だ。既知の栄養成分などの割合が多いが、それ以外に重金属や植物が作った毒性物質、調理によってできる発がん物質、カビ毒など、さまざま含むことがこの20年ほどで次々にわかっていている。「安全」というのはリスクゼロではなく、リスクが許容できる範囲内にある、ということにすぎない。それに、よいとされていた食品や成分が、その後の研究で実は、「健康に害あり」とわかることも少なくない。
 
 自然・天然・ナチュラルという言葉は、安全やリスクゼロは意味しない。私たちは、多くの栄養成分などと一緒に、リスクも“食べて”いる。
 ただし、健康でありたいと願いつつ、いろいろな品目を食べる通常の食生活をしていれば、リスクはゼロではないがある程度は低く抑えられている。

 そして、ワーキンググループが何度も議論を重ね合意したのは、「通常の食生活をしていれば、ビタミンやミネラルの欠乏症が問題となることもまれ」ということだ。もちろん、人によってはエネルギーや食塩の過剰摂取など問題はある。だが、欠乏に関しては、サプリメントで補給する必要性を示すデータは今のところなく、品目を変更したり量を調節したり、という健全な食生活を志向することが基本なのだ。

 だが、ちまたでは「○○が足りないから、この健康食品で補給を」などの情報が氾濫している。情報に踊らされて、健康食品、とりわけサプリメントを取り始めると、今度は健康食品の特性から来るリスクを被ることになる。

 ワーキンググループが、健康食品ならではのリスク要因として挙げた内容を、私なりに整理してみたところ、次の8項目になった。

※ 通常の食品には含まれない成分、食経験がほとんどない成分をとる場合がある。天然、自然、ナチュラルなどは安全を意味しない
※ 医薬品成分を含むものがある
※ 成分の抽出や濃縮などが施され、大量摂取につながりやすい。とくにサプリメントは要注意で、味やにおい等がないため、摂取に歯止めがかかりにくい
※ 個人が自己判断でビタミン・ミネラルのサプリメントを摂取するのは、過剰摂取のリスクを伴いやすく、中毒例なども数多く報告されている
※ 形態が医薬品に似ていても、医薬品並の品質管理は行われていない。同じロットの中でも均一性がなかったり、成分が少なかったり過剰に多かったり、有害物質の混入など、問題例は数え切れない
※ 普通の食品であれば日々、種類は変わるが、健康食品は同じものを一定量、毎日食べる。そのため、長期の大量摂取になり、有害作用のリスクが高まる。
※ 「健康になりたい」として病気の人、高齢者、子ども、妊婦などが摂りがち
※ 健康食品を食べるから、という理由で、医薬品の摂取をやめてしまったり、医師には相談せずに医薬品と合わせて摂取して相互作用を生じたり、健康食品を複数とることによる悪影響等が起きやすい

 ワーキンググループは、こうした現実の原因として、情報に関する要因がある、と指摘している。健康食品を選択するには、健康情報の読み方(リテラシー)を身につけるのが不可欠。だが、実際には不確かな情報がインターネットやマスメディアに氾濫し、信頼できる情報になかなかたどりつけないのだ。
 そのため、食品安全委員会や厚労省、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の「『健康食品』の安全性・有効性情報」などを利用するように促している。

 また、健康寿命の延伸(元気で長生き)の効果やダイエット効果は食品には期待できず、筋力増強効果を期待させる食品などもトラブルが多く注意が必要であることなど、ちまたにあふれる「情報」の誤りも、報告書は指摘する。
 さらに、ビタミン・ミネラルの補給は、医師や薬剤師等の専門家に相談するように推奨している。たとえば、妊娠を計画している女性は葉酸摂取が推奨され、サプリメントでもいいという科学的根拠がある。だが、現実には市販されているサプリメントの多くは、葉酸と共にビタミンAなどほかのビタミンが配合されている。こうしたマルチサプリメントだと、葉酸は補給できても、ビタミンAの過剰摂取で子どもに先天性異常が起きるなどの可能性も否定できない。
 半端な知識での補給に陥ることの恐さ、頼るべきは専門家であることも報告書は示す。

 健康食品を利用する場合には、摂取の状況や体調などをメモで記録しておき、体調が悪くなったらすぐ摂取をやめて医療関係者に相談するように、とも求めている。

被害は、身近にある
 報告書や議事録を読みながら、思った。必要ないのに摂ってしまう。しかも、「医薬品の代わりになる」「食品だから、医薬品より安全」などと思い込み摂り続け、健康食品特有のリスクを被り健康被害へ。しかも、高価な価格で購入し、もしかすると、発がん性など慢性的な健康被害を受けているかもしれないのに、本人は気付いていない……。こんな人たちが現実にいることを、私も知っている。

 ワーキンググループは、具体的に成分名も挙げて、どのようなリスクがあるのか、被害が出ているのかを議論しながら検討し、報告書をまとめ上げた。わかりやすい声明を出す一方で、食品安全委員会は、その根拠、リスクの考え方も、普通の人たちに伝え、健康食品の本質を理解してほしいようだ。

 だから、消費者向けの説明会を開くという。当日は、具体例が詳しく語られるだろう。座長らが、さまざまな文献を精査して今、なにを思うのか、肉声を聞きたい。私が議事録を読み、記者会見の様子などを聞いて思うのは、おそらくワーキンググループの委員のほとんどは「健康食品を特別に摂る必要は無い。摂ったら、リスクに近づいて行くだけですよ」と言いたいのではないか、ということ。私もほぼ同じことを思っている。

 機能性表示食品制度がはじまった年に、リスクの専門家がこの声明、報告書を出した意味を、説明会を聞きながら考えたい。消費者も、理解し、ひろく健康食品を今、利用している人たちに伝える役割があると思う。説明会へ行こう。

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