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めんどな話になりますが…|松永 和紀

どんなコラム?
職業は科学ライターだけど、毎日お買い物をし、家族の食事を作る生活者、消費者でもあります。多角的な視点で食の課題に迫ります
プロフィール
京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動

機能性表示食品……科学的根拠に基づき、取り下げへ

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2016年11月18日

●「北の国から届いたブルーベリー」がついに…

 日本アントシアニン研究会から連絡があった。八幡物産(株)が販売する機能性表示食品「北の国から届いたブルーベリー」について、消費者庁への届け出を取り下げし、機能性の表示を止めるように同社に求めていたが、ついに取り下げが決まったという。

 同研究会の要請については、本欄で8月、「エビデンスに裏付けられない機能性表示食品がある」 日本アントシアニン研究会が申し入れで詳しく解説した。
 研究会の指摘は主に2点。 (1)機能性の根拠である論文で用いられ、機能性が確認されたビルベリーエキスと、製品に入っているビルベリーエキスが同等である、という根拠が示されていない(2)表示の内容が、「研究レビュー」で採択した論文の結論と矛盾している……である。

 同社が取り下げにあたって顧客や関係者に通知した14日付け文書を入手した。それによると、『消費者庁が実施している検証事業を踏まえ、弊社にて再調査をしたところ、「目の疲労感」に関して、機能性がない訳ではないと考えておりますが、弊社採用論文中において科学的な根拠の弱いものが含まれていることがわかり、機能性表示食品制度のガイドラインと照らし合わせ、弊社なりに解釈したところ機能性表示を行う上では、十分ではないとの判断に至りました』とある。
 
 同研究会と同社は、東京地裁で仮処分命令をめぐりさまざまなやりとりがあった。それだけに、同研究会の指摘により、とは説明できないだろう。だが、アントシアニンの専門家が集まっている研究会からの指摘が、今回の取り下げに大きな力を発揮したのは疑うべくもない。

 それに、消費者庁もがんばったようだ。機能性表示食品は、同庁への届け出が必要だが、同庁が許可しているわけではない。同庁が撤回を命令するのは難しい。だが、同庁が相当に粘り強く、同社に取り下げを働きかけた、と洩れ伝わってくる。

 11月25日に届け出を取り下げし、以後は「機能性表示食品」の表示のないパッケージで販売するという。
 消費者庁のデータベースや同社のウェブサイトでは、まだ取り下げは告知されていない。

●消費者庁の検証事業で、不備のある製品続々

 消費者庁は、同社が文書で説明しているように、検証事業を行っている。その結果の一部は、既に公表されている。研究レビューに問題のある製品が相当数ある。また、買い上げ調査で、機能性関与成分が表示の数値より少ない量しか含まれていなかったり過剰であったり、同一製品なのに製造ロットが異なると成分の含有量が大きく違っていたり、というような製品があることが、明らかになっている。

 同庁は、問題を抱える製品名をまったく公表していない。これでは、検証結果を消費者が役立てることはできない。なぜ製品名まで公表しないのか疑問は尽きないが、こうした指導に活かしているのか。

消費者庁・機能性表示食品に関する情報
消費者庁・機能性表示食品制度における機能性関与成分の取扱い等に関する検討会(第5回会合で、検証結果が報告されている)

 これで、機能性表示食品には、確かな科学的根拠が必要であることが明確になり、消費者庁が監視業務を遂行し始めたこともわかった。機能性や安全性の根拠が薄く、しかも、機能性、つまり健康効果が非常に小さな製品が続々と届け出されているこの制度において、正常化への一歩である、と受け止めたい。

 「北の国から届いたブルーベリー」と同じような問題を抱える製品は、アントシアニン製品に限らず、さまざまな機能性関与成分で数多くある。これらは、取り下げられるべきだ。業界の自浄努力、研究に携わる科学者の責任を持った行動に期待したい。それがなければ、機能性表示食品の未来はない。さて、次の取り下げ製品はどれになるのか?

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