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めんどな話になりますが…|松永 和紀

どんなコラム?
職業は科学ライターだけど、毎日お買い物をし、家族の食事を作る生活者、消費者でもあります。多角的な視点で食の課題に迫ります
プロフィール
京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動

機能性表示食品、届け出取り下げを決めているのに、売ってしまう企業の倫理は…

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2016年11月28日

 機能性表示食品制度にかんする検討会の報告書案が25日、ほぼまとまった。その内容については機会を改めて解説したいが、私は報告書案の「おわりに」にある一節に注目した。こんなふうに書かれている。

 本制度は、企業等の責任において届け出る制度であり、消費者の信頼があって初めて成り立ち得る制度である。届け出者等には、届け出前の届出資料の確認、品質管理、事後的な機能性及び安全性に関する科学的根拠の確認など届出者等自らが倫理観を持って本制度の信頼の確保のために努力することが求められる。

 そう。倫理!
 傍聴しながら、深くうなずいた。なぜならば、まさに機能性表示食品の事業者に私は2376円(商品価格2160円、送料216円)を支払い、この事業者の倫理はどこへ? とあきれていたところだったからだ。

 ことの顛末を記そう。
 日本アントシアニン研究会が八幡物産(株)の「北の国から届いたブルーベリー」について、届け出内容の訂正か届け出取り下げをすべきだ、と最初に要請したのは今年1月。紆余曲折あり、同社が取り下げを決めて11月14日に関係各位に通知したことを11月18日、本欄で書いた。
 この通知文については、健康食品メディアである健康情報ニュース.comもとりあげ、「お客様各位」と題した文書も掲載している。

 ところがこの日、同社のウェブサイトを見ると、取り下げを決めた告知が出ていない。それどころか、まだ機能性表示食品として堂々販売している。目の機能性関与成分ビルベリー由来アントシアニン含有/「北の国から届いたブルーベリー」は目のサプリメントです。/ピントのぼけ、気になりませんか?……等々の文言が、きらびやかに並んでいる。

届け出撤回が決まっていたにもかかわらず、販売された製品

届け出撤回が決まっていたにもかかわらず、販売された製品

 いったい、なにを売っているのだろう? 興味を持ち、20日に注文してみた。22日に発送され25日に届いた製品は、やっぱり機能性表示食品のパッケージ。「目の疲労感、ピント調節機能の低下を緩和することにより、目の調子を整える機能がある……」などと表示されている。

 でも、自ら「表示を行ううえで、根拠は十分ではない」と結論し、取り下げを決めたのでしょう。それなのに、ウェブサイトでそれを告知せずに売る? 製品を消費者に届ける?

 知人に尋ね回ったところ、以前に購入したことがあり、同社から16日に、取り下げのお知らせを受け取った人がいた。つまりは、同社は14日付けのお知らせを、これまでの顧客にはきちんと送っているということだ。一方で、ウェブサイトから17日に注文し、やはり機能性表示食品の「北の国から届いたブルーベリー」を受け取っていた人がいた。

 14日の告知文には、25日に自主的に取り下げを行う、とある。タイムラグは約10日間。取り下げまでは、機能性表示食品として売ってもよい、という判断か。

 しかし、自ら根拠が十分でないと認めている製品なのに、目への効果を大々的にうたって商品を売るのは、「実際のものよりも著しく優良であると示す表示」であり、景品表示法上の不当表示(優良誤認表示)にあたるのではないか?

 そもそも、企業のコンプライアンスとして、一部顧客には取り下げを伝え、別の客には取り下げを知らせずに「目に効く」と売る、という行為は許されるのか? 皆さん、どう思いますか? 消費者庁さん、これでいいのですか?

 同社のウェブサイトを見ると、24日には機能性表示食品ではなく、普通の健康食品として販売されていることを確認できた。目への効果に対する言及はなく、わずかに「こんな方にオススメ!」として、パソコンを利用される方/テレビやゲームが好きな方/新聞や本をよく読まれる方などと書かれているくらいだ。

 25日にはウェブサイトでも、消費者庁へ自主的に撤回届出書を提出したと告知している。「本日以降に販売いたします『北の国から届いたブルーベリー』には「機能性表示食品」の表記がございませんが、品質および内容成分は、一切変わりございませんのでご安心いただきますようお願い申し上げます」だそうだ。約1カ月分2160円という価格は変わらない。
 今日28日、消費者庁のデータベースにも、撤回が反映された。

 機能性表示食品の事業者の倫理がどういうものか。この一例で推し量ってはいけない。でも、中小ではなく、大手事業者がこんなことをするのが、この業界の現実でもある。報告書案に倫理という言葉が盛り込まれた重みは大きい、と考える。

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