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めんどな話になりますが…|松永 和紀

どんなコラム?
職業は科学ライターだけど、毎日お買い物をし、家族の食事を作る生活者、消費者でもあります。多角的な視点で食の課題に迫ります
プロフィール
京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動

1月30日の放射性物質リスコミで、検査縮小の具体案が示される

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2017年1月19日

 食品中の放射性物質の検査のあり方を考えるリスクコミュニケーションが1月30日(月)福島、2月2日(木)東京、2月17日(金)大阪で開かれる。内閣府消費者庁、食品安全委員会、農水省、厚労省という4省庁の共催だが、おそらくいつものお役所リスコミとは重要度がまったく違う。来年度からの検査の方針が示されることになっているので、検査縮小の具体案が出てくるはずだ。

 私は、1月30日の福島会場に報道関係者として出ることになっている。国のリスコミなんて、どうせ、事前に説明を受けて役所から懐柔されて出るんだろう、とよく言われるけれど、少なくとも私は、これまで何回か登壇しているけれど、発言内容を事前に規定された経験はありません。
 今回はとくに、「あなたの本音の反応を知りたいから、当日までなにも教えません」と担当者に言われた。私もどんな案が出てくるのか、不安と期待でいっぱいだ。

●安心のための検査は止めたい

 私はこれまで、記事やリスコミ等で放射性セシウムの検査について何度も意見を述べてきた。「栽培/飼養管理が可能な品目群」では、もうほとんどが検出限界未満だ。検出されるにしても小さな数値に止まっている。その結果が十分に予想できるのに、すさまじい数を測定して出ないことを確認して「安心」を得ている。

本欄 5年を経た今、食品から放射性セシウムは検出されていない
本欄 放射性物質、検査にかかるコストは?

 検査の背後で、人件費や検査装置の維持管理費等で多額の費用がかかり、食品が検査後に捨てられ、国や自治体、生産者等の負担も小さくない。
 「栽培/飼養管理が可能な品目群」は、生産の段階でコントロールされており、これまでの検査でその取り組みが有効だったことが実証されている。ならば、検査はかなりの数、減らしてもよい。

 数値の動向を把握して行くため、統計学で担保された数の検査は当然のことながら必要。だが、負担は著しく小さくなるはずだ。一方、「栽培/飼養管理が困難な品目群」についてはこれまで通り、しっかりと測定して、対応策に反映させて行く。

●ほかのリスク対策に、力を入れた方がいい

 これまで放射性セシウム対策に注いできた力は、食品が持つほかのハザード(リスクの要因)対策に向けるのが自然の流れだろう。放射性セシウムのリスクに比べ、微生物等、他のリスクの方が圧倒的に大きい。農産物についていた微生物が原因ではないか、と推定される食中毒も起きているし、悪くすれば死者も出る。また、カドミウムなどの重金属やカビ毒対策も重要だ。

 米国では、総合的なリスク管理策としてHACCPが農業現場でも取り入れられつつある。日本でも大きな課題となって行くだろう。生産者が取り組むべきことは、非常に多い。国もサポートしなければならない。

 こうした考え方は、特別ではなく、食品のリスク管理に関心を持ち携わっている人であれば、ほぼ合意してもらえるはずだ。ただし、実行にどうしても必要なものがある。管理策を実行する国や自治体、生産者等への信頼感。「この組織なら、この人たちならば、しっかりと私たちのために、リスク対策をしてくれるはず」と市民に思ってもらえなければ、安心にはつながらず、合意してもらえない。

 私は、この6年近くの国や各自治体、生産者等の取り組みを見て、信頼感を深めている。だが、人によっては異なるだろう。信頼を持てるかどうか、リスコミも考えるよい機会となるはずだ。

●福島の米の全量全袋検査は、2年連続「基準値超過なし」だが…

 本当は、検査縮小でまずは考えなければならないのは、福島県の米の全量全袋検査。これは、県が独自に行っているもので、国はかかわっていない。したがって、今回のリスコミでも、取り上げられない。

 県職員に話を聞く限り、米の検査を縮小することをひどく恐れているようだ。2016年度の全量全袋検査では今のところ、1013万袋あまりを検査し、基準値を超える米は1袋もでていない。スクリーニング検査で、検出限界(25Bq/kg)未満が99.996%。ベルトコンベア式のスクリーニング検査で少々高めの数値が出て、ゲルマニウム半導体検出器でより精密に測定する「詳細検査」に回された50袋も、結局はすべて25Bq/kg未満となっている。

 2年連続して基準値を超える米は出ていない。見事な結果であっても、県は「検査を止めたら買ってもらえなくなるのでは」と不安を抑えられない。たとえば会津地域は、放射性セシウムの降下量が他県に比べても少なく、当初からまったく懸念がなかった。なのに、ずっと測定し続けている。全量全袋検査は、生産者が米を検査センターまで運ばなければならない場合も多く、負担は非常に大きい。出ないとわかっていて米を運ぶ生産者のつらさ。「わざわざ検査しなければならない、ということは、まだ危険なんだ」と無神経な一言を吐く消費者……。問題は山積している。

 やっぱり検査の見直しが必要なのだ。無用の風評被害を少しでも減らすためにも、検査縮小に向き合いたい。今回のリスコミ、非常に重要です。ぜひ、会場に足をお運びください。

プレスリリース・「食品に関するリスクコミュニケーション ~食品中の放射性物質の検査のあり方を考える~」の開催及び参加者の募集について
<申込み締切>
福島会場: 1月23日(月)
東京会場: 1月23日(月)
大阪会場: 2月3日(金)

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