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めんどな話になりますが…|松永 和紀

どんなコラム?
職業は科学ライターだけど、毎日お買い物をし、家族の食事を作る生活者、消費者でもあります。多角的な視点で食の課題に迫ります
プロフィール
京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動

トクホの景表法違反。品質管理のずさんさにメス

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2017年2月17日
消費者庁が公開した景表法違反製品のパッケージや広告など。有名俳優などを登場させて派手な広告を展開していた


消費者庁が公開した景表法違反製品のパッケージや広告など。有名俳優などを登場させて派手な広告を展開していた

 消費者庁が14日、特定保健用食品(トクホ)としての許可の要件を満たしていないのにトクホの表示をする景品表示法違反(優良誤認)があったとして、8製品を販売していた日本サプリメント(株)に対して措置命令を出した。

 これらの製品は既に昨年9月、許可取り消しとなっており、トクホとしての製品は市中にない。そのため、措置命令の中身は、通常ある「一般消費者への周知」がなく、(1)再発防止対策を講じ、役員及び従業員に周知徹底すること(2) 今後同様の違反行為を行わないこと……の2点となっている。

 新聞やテレビニュース等では、トクホでの景表法違反第1号というのが注目されているようだが、この話、これまで健康食品業界でないがしろにされがちだった「品質管理」の問題点を明確にした、という点でも画期的だ。その意味を考えてみたい。

●関与成分が不明なら、安全性、有効性も評価できない

 昨年9月の許可取り消しの経緯は、本欄「トクホ、初の許可取り消しの意味は」をお読みいただきたい。
 この時、消費者庁は、健康増進法に基づく許可取り消しの事情を細かく説明しなかった。今回、景品表示法違反で措置命令を出すにあたっては、その理由を説明している。

 2011年8月以降、品質管理として、包装後の製品における関与成分についての試験検査を行っていなかったこと、また、2014年秋に関与成分の特定ができないことが判明し、トクホの許可要件を満たしていないのに、引き続きトクホとして販売していたことが問題だとした。一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示すものであり、景表法上の優良誤認にあたる、という判断だ。

 トクホの主な許可要件は次の4項目(特定保健用食品の審査等取扱い及び指導要領に拠る)。
(1) 食品又は関与成分について、表示しようとする保健の用途に係る科学的根拠が医学的、栄養学的 に明らかにされていること
(2)食品又は関与成分についての適切な摂取量が医学的、栄養学的に設定できるものであること
(3)食品又は関与成分が、添付資料等からみて安全なものであること
(4) 関与成分について、次の事項が明らかにされていること
  ア 物理学的、化学的及び生物学的性状並びにその試験方法/イ 定性及び定量試験方法

 今回の場合、トクホ審査において関与成分とされた物質の実際の含有量が、表示量を満たさなかったり、そもそも含まれておらず関与成分ではなかったり、という状態だった。ところが、同社はウェブサイトなどで「ACE阻害活性を確認している」「α-グルコシダーゼ阻害活性の必要値を満たしている」などとして、トクホとしての安全性や有効性には問題ない、という主張を展開していた。

 しかし、消費者庁は(1)(2)が有効性、(3)が安全性、(4)が品質管理の要件であると位置づけ、とくに品質管理は安全性を評価する基礎資料だ、とした。そして、関与成分が不明であれば、有効性や安全性を評価できず、品質管理も行えない、と明確に判断している。

 科学的には当たり前の話で、「試験管内での酵素活性をみる試験が、有効性の根拠となりうる」などという同社の言い分が通るはずもない。
 同社のウェブサイトは、昨年の許可取り消し時はすぐに「お詫びとお知らせ」を掲載したが、今回の措置命令については、なにも反応していない。

●品質管理のずさんさは、業界の体質

 健康食品業界はとかく、品質管理、品質保証がずさんな体質がある。国立医薬品食品衛生研究所の合田幸広・薬品部長も、本欄の機能性表示食品に関するインタビューで、厳しく指摘した。「健康食品業界は、お料理感覚で、ふりかけをかけるように簡単に足したり、あるいは引いたりしてしまうんだよ」と合田部長はいつも言う。

 なのに、科学的とは到底言えない独自“理論”を語る事業者は少なくなく、品質管理の不備はしばしば見られる。品質管理を疎かにする体質は機能性表示食品でも問題として顕在化している。

 トクホでさえも、いったん許可を受ければ後はずさん、という企業があることが、今回判明したのだ。措置命令は、トクホに限らず、こうした業界の課題を鋭く追及したもの、と受け止めるべきなのだと思う。

 消費者庁は課徴金を課すかどうか検討中だという。さらに、景表法の下、今後、どのような取り締まりを行うか、明らかにした。
 トクホについては、「消費者の関心が高く身体に影響するもの」であることを重視しており、「健増法上の許可要件を満たさない」=「景表法上の優良誤認に該当」という解釈を徹底させ、買い上げ調査などで違反行為が明らかになった場合には厳正に対処して行く、とプレスリリースでも明記している。

 トクホは、日本サプリメントの許可取り消し後、業界団体を通じて調査が行われており、消費者庁は販売中の全品目で関与成分が適切に含有されていたことを確認したと発表している。
 しかし、これは業界団体を通じて行った事業者による自己申告を中心とする調査に過ぎず、消費者庁が実際に商品を確認したものではない。
 買い上げ調査を行うというが、科学的には、関与成分を食品中のほかのさまざまな栄養成分などと分けて抽出し定量するのは簡単ではないはず。地味でお金も時間もかかる作業で、どういった成果が出るのか、注目される。

 また、トクホだけでなく機能性表示食品についても、企業がウェブサイト等で行っている広告宣伝も含めた“表示”と、消費者庁に届け出た表示の間にどれほどの乖離があるか、行き過ぎた広告宣伝がないかどうか、監視して行くという。

●機能性表示食品も、景表法で取り締まってほしい

 願わくば、機能性表示食品についても、景表法違反でバリバリ取り締まってもらいたいものだ。15年度の検証事業で、機能性関与成分が届け出た含有量を満たしていなかったり、逆に多すぎたりする製品があることがわかっている。また、一つの製品なのに製造ロットによって大きくバラツキがあるものも見つかっているという。
 いくら安全性や機能性について根拠となる論文や書類を積み上げても、たしかな原材料を元に正しく品質管理を行いどの製造ロットにおいても同じ製品を作ってくれなければ、安全性も機能性も保証されない。

 機能性表示食品においても、景表法上の「優良誤認」を適用できるのか、解釈は難しいのだろうが、トクホよりもむしろ機能性表示食品の方が、過激におおげさに効果をうたうようになっている今だからこそ、消費者庁の監視・取り締まりの役割は大きいように思う。

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