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めんどな話になりますが…|松永 和紀

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職業は科学ライターだけど、毎日お買い物をし、家族の食事を作る生活者、消費者でもあります。多角的な視点で食の課題に迫ります
プロフィール
京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動

遺伝子組換えで青い菊〜農研機構、10年以上の研究で成果

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2017年7月28日
写真提供=農研機構、野田尚信さん

写真提供=農研機構、野田尚信さん

 農研機構の研究員、野田尚信さんらが遺伝子組換え技術を用いて青い菊を開発し、論文がScience Advancesに26日、掲載された。

 菊に青い色が生まれたのは初めて。写真を見ればわかるとおり、美しい真の青色(true blue)だ。学術誌Natureのニュースサイトでも取り上げられ、Scienceのニュースサイトでは絶賛されている。見事な研究成果だ。

 野田さんは、農研機構野菜花き研究部門の花き遺伝育種研究領域に所属する。青い色は、さまざまな花で見られるものの、バラやカーネーション等では、伝統的な交配育種では作れず、青い花の遺伝子を導入する遺伝子組換え技術を用いて開発されている。だが、菊ではまだ、だった。

 野田さんらは、Canterbury bell、日本ではカンパニュラという名称で知られ切り花としてよく売られている青い花の遺伝子を導入した。しかし、この段階では紫色が強い。加えて、青い色のbutterfly pea(チョウマメ=蝶豆)の遺伝子を導入した。これらの遺伝子組換えにより、酵素が作られ生合成系で働き、細胞内でアントシアニンという色素によい具合に糖が結合して、きれいな青色になった。

王立園芸協会の策定しているカラーチャートと比較。真の青(true blue)であることがわかる。写真提供=農研機構、野田尚信さん

王立園芸協会の策定しているカラーチャートと比較。真の青(true blue)であることがわかる。写真提供=農研機構、野田尚信さん

 これまで、青い色を実現するのにはもっと複雑な遺伝子組換えや、細胞内の環境調節、金属イオンを与えて結合させるなどの処理が必要だと思われていたのだが、野田さんらは二つの遺伝子を導入する、というとてもシンプルな系で、美しい色を実現したのだ。
 先行して青いバラや青いカーネーションを開発したサントリーの研究者も、野田さんらの論文に執筆者の一人として名を連ね、研究に貢献している。

 野田さんらは、Scienceのニュースサイトのインタビューに答えて、次のステップとしてこの青い菊を環境中で交配、増殖しないようにできればいい、と答えている。そうすれば、環境中のほかの生物、生態系に影響を及ぼさず、青い花を商用栽培して楽しめる、というわけだ。
 論文では、青い色が生まれる生合成系を細かく解明、考察してある。ほかの花の品種改良にも発展しそうだ。

 日本では、遺伝子組換え植物の栽培は認可が必要。商用栽培に至るには、研究に加えてさまざまな試験を行い審査を受ける必要もあり、店頭に並ぶとしてもかなり先になる。野田さんにメール送って直接お尋ねしたところ、「10年以上の試行錯誤を経て、菊を青くする方法を明らかに出来ました。青い菊は、本当に美しいと思います。喜んで手にとってもらえるようにさらに研究開発を進めていきますので、ご期待下さい」とのことだった。

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