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めんどな話になりますが…|松永 和紀

どんなコラム?
職業は科学ライターだけど、毎日お買い物をし、家族の食事を作る生活者、消費者でもあります。多角的な視点で食の課題に迫ります
プロフィール
京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動

もぐらたたき規制は最悪

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2011年3月27日

 福島、茨城、栃木、群馬4県のほうれん草、かき菜に福島産の原乳……。国は、県単位での出荷停止を決めた。これまでの検査で、暫定基準を超える検体が見つかっているからだ。さらに、枝野官房長官は「今後、各地でモニタリングし、結果を分析したうえで必要があれば追加の指示をする」と会見で述べた。
 これでは、「ほかの農産物も危ないよ」というシグナルを送ってしまったようなものだ。検査で超過の結果が出たものをたたき、さらに今後の検査結果で追加も……。まるで、もぐらたたきである。4県のほかの農産物も一気に売れなくなるのではないか、と心配だ。
 リンガーハットは既に、「茨城県産の使用を当面見合わせる」と決めたという。ギョーザの原材料に茨城県産キャベツが使われていたとして、リンガーハットが20日、ギョーザ販売を中止したとデイリースポーツは写真付きで伝えている。
 ホウレンソウは、葉を広げて植わっているので葉面に放射性物質がつきやすい。一方、キャベツは丸く葉を巻いて結球しているから、外側の葉にはついていても内側には放射性物質はつかない。外葉をとれば放射性物質は取り除けるし、実際に暫定基準を超過したものも見つかっていない。なのに、使用見合わせである。リンガーハットには「風評被害を引き起こしてはならない」という倫理観はないのだろうか。
 基準超過で私が思い出したのは、農薬の残留基準に関して日本農薬学会の幹部が言っていた言葉だ。「基準は、転ばぬ先の杖だ」とその人は言う。基準を超過したところで、その食品が危険、というわけではない。しかし、基準超過は「要注意」の合図となり、農薬であれば「使い方の誤り」などを教えてくれる。転ばぬ前に、「気をつけてしばらくウォッチングしようね」と警告し、杖のように支えてくれる、というわけだ。
 放射能汚染の暫定基準値も転ばぬ先の杖であろう。極めて安全寄りで設定されており、その基準値を超過した食品を少々食べた程度では、健康に影響はない。しかし、警告の役割を果たす。その杖を振り回し、該当しない農産物までめった切りで廃棄、ということにしてはいけない。

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