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めんどな話になりますが…|松永 和紀

どんなコラム?
職業は科学ライターだけど、毎日お買い物をし、家族の食事を作る生活者、消費者でもあります。多角的な視点で食の課題に迫ります
プロフィール
京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動

福島県二本松市からやってくる産直市、板橋区で29日に開催

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2011年5月28日

 東洋大学国際地域学部が5月22日、板橋区内7カ所で、福島県産や茨城県産などの農作物、加工品の産直市を開いた。29日も同じ場所で開催する(同学部プレスリリース)。ぜひ、行ってみてほしい。新鮮なタケノコやワラビ、山ウドなど、春の香りと味を購入できる。とてもおいしい。そして、福島の厳しい現実も、聞くことができるだろう。

●仕掛人は 東洋大学の学生ら

 産直市の仕掛人は、本サイトで「外食・中食、よろしゅうおあがり」を連載している同大講師の道畑美希さんとそのゼミの学生たち。同大には、北関東や東北出身の学生が多く、東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故の後、「なにか、できることをしたい」という声が上がって「復興支援プロジェクト」が発足した。そしてまず、福島などの生産者と連絡を取り合い学生食堂の協力を得て、5月上旬から被災地の野菜と米を使ったメニューを提供し始めた(同学部プレスリリースhttp://www.toyo.ac.jp/news/detail_j/id/3819/)。さらに、産直市を開いたのだ。

 私も22日、行ってみた。福島県二本松市の農業者らで作るNPO法人「ゆうきの里東和ふるさとづくり協議会」が、タケノコやワラビ、フキ、パンやジャムなどの加工品をトラックに積んで運び午前中に到着。午後1時から、板橋区役所前の日本料理店の軒先を借りて販売し、東京都石油業協同組合などの協力も得て6カ所のガソリンスタンドでも売った。
 先生たちや学生、福島からトラックに乗ってやって来た協議会メンバーが分担して売り子を務め、客が途切れると路上でビラを配って「買ってください」と呼びかける。素朴だが、楽しそうだった。新鮮なワラビや山ウドは、食べるのに灰を入れた湯に通したり、重曹で湯がいたり、少し手間はかかるが、その分、ばつぐんの味だった。

● 放射性物質と冷静に闘う農業者

 みんなで盛り上がるイベント。もちろん、その裏には厳しい実状がある。二本松市は原発から約40km離れ、文科省が推定した積算被ばく線量も1mSv程度で高くない。だが、協議会副理事長の武藤一夫さんによれば、道の駅での売上は例年に比べ2〜3割落ち込み、スーパーマーケットなどの一角を借りて販売するいわゆる「インショップ」の売上は半減だという。福島ナンバーの車が避けられるような「風評被害」のエピソードも数多くあるそうだ。

 しかし、武藤さんは愚痴を吐かない。二本松市内の被ばく線量や農作物の検査結果などをていねいに解説してくれた。
 山菜などの検査結果も暫定規制値を下回っていること、野菜は原発事故が寒い時期に起きたこともあって、それ以降もまだほとんど栽培されていないこと、これからの栽培においては、土壌中の放射性物質を野菜が吸収しないように工夫をすること—。そして、「放射性物質が土壌中にあるのは事実なので、どうしても体の中に入れたくない、という人に買ってもらうのは難しい。これから気をつけて栽培していくので、誤解は次第に解けて行くと思う」と冷静な口ぶりだった。

 これまでも、土壌分析などをしながら、減農薬減化学肥料の特別栽培に取り組み、データに裏打ちされた農業を推進してきたという。したがって、そうしたノウハウを活かしながら今後、放射性物質に対処することになる。風評に左右されず、行政に過度に依存することもない、自立した農業者の姿を見たように思えた。

● イベントではなく、長い支援を

 もう一つ、武藤さんに厳しい指摘をされた。「福島産を食べようというイベントがいろいろなところで開かれているけれど、価格が安いでしょう。安くて当たり前、という感覚で、消費者は買っている。それじゃあ、私たちは農業を続けられない。イベントでも、安全な農作物を適正な価格で買ってもらって、ちゃんと利益を出せないとね」

 都会の人たちの“自己満足”を見透かされたような言葉だった。道畑さんとは10年来の付き合いという武藤さん。道畑さんも、復興支援プロジェクトを一過性のものにしてはいけないことを十分にわかっている。プロジェクトも、これからが正念場だ。
 ともあれ29日、冷静に現実を見つめ、でも楽しく売る学生や農業者に会いに行ってほしい。

(念のため付け加えると、ワラビや山ウド、タケノコなどの鮮度、質は東京のデパート並みで、スーパーマーケットなどには並ばない商品だと思う。でも、デパートほどの価格ではない。なので、やっぱりお安いと思います)

【日時】5月29日(日)午後1時から2〜3時間
【販売会場】
板橋区板橋2丁目61−16
【販売ガソリンスタンド】
・ コスモ・板橋センター給油所(板橋区板橋3−9−4)
・ エネオス・見次公園給油所(板橋区前野町3−21−6)
・ エネオス・Dr.Driveセルフ本蓮沼店(板橋区蓮沼町23−5)
・ 出光・アクティ高島平給油所(板橋区高島平2−4−4)
・ 出光・東坂下給油所(板橋区東坂下1−4−1)
・エクソン・常盤台給油所(板橋区常盤台1−54)

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