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めんどな話になりますが…|松永 和紀

どんなコラム?
職業は科学ライターだけど、毎日お買い物をし、家族の食事を作る生活者、消費者でもあります。多角的な視点で食の課題に迫ります
プロフィール
京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動

もうダマされないための「科学」講義

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2011年10月14日

 エコノミストの飯田泰之さんと「シノドス」の編集で『もうダマされないための「科学」講義』(光文社新書)が先月、出版された。菊池誠・大阪大学教授、伊勢田哲治・京都大学准教授、平川秀幸・大阪大学准教授、片瀬久美子さんと共に、私の原稿も掲載されているので、機会があったらお読みいただきたい。

 私の原稿は、講演が基になっている。『現代社会を多角的に検討する「知」の交流スペース』であるシノドスからご連絡いただいたのはたしか、昨年夏頃。セミナーを、と依頼を受け、12月に食のリスクの話と報道の問題点について話した。それがテープ起こしされてある程度、編集作業も施されたうえで送られて来たのだが、講演はやっぱりどうしても緻密さに欠ける部分がある。そのため書き直して、挿入や削除なども大胆に行った。したがって、一から書き下ろした原稿と質的には変わらないと思う。

 私の章のタイトルは「報道はどのように科学をゆがめるのか」である。食用油「エコナ」の販売中止と遺伝子組換え問題を事例に、報道の科学的な過ちについて書いた。事例研究に徹して、読者に「報道を信じ込んでいたら大変だ。自分である程度は調べないと、私自身が過った選択をしてしまう」という怖さをじわじわと感じていただけたらいい、と考えた。
 セミナー開催は昨年12月なので、当然、放射能汚染の話は書いていない。だが、報道の構造的な問題は、この書籍で指摘したことがそのままあてはまると思う。

 先日、ある科学者の講演を聴いたら「原発事故後は情報災害が起きている」と話していた。地震、津波、原発事故に加えて、間違った情報が氾濫する災害も起きている、というわけだ。その通り。しかし、そうした科学者の声は、報道の当事者たちには届いていない。大衆の欲しい情報を提供するのが彼らの仕事であり、科学的に正しいかどうかは実は、二の次になってしまっている。

 ほかの執筆者の原稿で取り上げられている事例も、ゲーム脳やホメオパシーなど、報道の過ちがすぐに思い出されるものが多い。余談になるが、ゲーム脳説は提唱者の書籍の出版とほぼ同時に新聞の1面で大きく取り上げられ、驚いたものだ。1面に掲載される記事はそれなりに、社内で1面にふさわしいかどうか、内容が吟味される。その新聞社は、みんなでゲーム脳説にGoサインを出したのだ。それは「面白い。読まれる」と思ったからだろう。そして、情報が拡散する。
 報道が多かれ少なかれ、「ダマす科学」に加担している実態がある。そして、放射能汚染報道でも、同じことが繰り返されている。

 菊池さんの「ニセ科学」解説、伊勢田さんの「モード2科学」の話、平川さんの「トランスサイエンス・コミュニケーション」についての問題提起も、それぞれ考えさせられる。そして片瀬さんの「放射性物質をめぐるあやしい情報と不安に付け込む人たち」では、このFOOCOM.NETの原稿もご紹介いただいた。科学にかんする情報伝達や報道になにか、引っ掛かりのある人は、機会があったら手に取ってほしい。

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