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めんどな話になりますが…|松永 和紀

どんなコラム?
職業は科学ライターだけど、毎日お買い物をし、家族の食事を作る生活者、消費者でもあります。多角的な視点で食の課題に迫ります
プロフィール
京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動

買います! 口蹄疫復興宝くじ

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2011年10月22日

 口蹄疫復興宝くじが15日、発売されました。ところが売れ行き不振。宮崎県知事が18日の定例記者会見で「このままでは消化率が50%に届かない」と発言し、危機感を募らせていると新聞が伝えています。
読売新聞
毎日新聞

 1年前にはあれほどの大騒ぎだったのに、口蹄疫が話題に上ることは少なくなりました。私も昨夏、宮崎を訪れて取材して以来、宮崎へ行っていません。

 口蹄疫の取材を通して、現在の日本農業の課題を私なりに感じ、雑誌や日本リスク研究学会等で発表しました。その中の一つに、生産者への情報伝達の問題がありました。口蹄疫の感染性の高さ、リスクの大きさ、対策等が当初、生産者にスムーズに伝わらなかったのです。特に、高齢の和牛肥育農家には伝わりにくく、「口蹄疫はどんな病気か?」と興味本位で発生農家を見に行き、しばらくたってから自分のところでも発生、という憂き目に遭った人もいる、と聞きました。

 口蹄疫は主に豚と牛が感染しますが、養豚は一般に飼育頭数が多く企業経営が進んでおり、経営者にも若手が目立ちます。一方、和牛の肥育は、楽しみも兼ねて1〜数頭を飼育するというお年寄りが大勢いるのです。どうも両者で情報伝達と対策のスピードがかなり異なっていたようで、私は宮崎で養豚家から「情報をいかに分かりやすく伝えるか、というのは大きな問題だ」とぼやかれました。

 3月に原発事故が起き、7月に牛肉のセシウム汚染が発覚した時に、そのことをはっと思い出しました。高齢の和牛肥育農家に、汚染された飼料を食べさせてはいけない、という情報がすばやくきちんと伝わったのだろうか? 空中から降下して来た放射性物質が飼料汚染の原因となることを、生産者が理解していたのだろうか?

 教訓を生かせない農業現場は問題ですが、指摘し続けることができず、すぐに忘れてしまうライターも問題。中西準子先生が著書「環境リスク学 不安の海の羅針盤」で「今月のリスク」という話を書いています。「このリスクで人類が滅びるというような大騒ぎをするが、翌月になるとまったく別の新しいリスクの話でもちきりになり、先月問題にしていたリスクはけろっと忘れてしまうような社会現象」のことを指すのだそう。まさに、私も「今月のリスク」を実践していたわけです。

 さらに悪質なことに、私はセシウム汚染問題で気付いたはずなのに、それも忘れてしまって、最近はまた別のリスクを追っていました。いかん、いかん。宝くじの記事を読んで、また思い出しました。

 というわけで、忘れないために、そして、口蹄疫からの復興を祈って、宝くじを買おうかなあ。実は、宝くじを買った経験がないのです。産まれて初めて買って、どうせ当たらないので痛い思いを味わって、「今月のリスク」問題を頭の中に叩き込む。明日、買いに行こうと思います。

 皆さんも、口蹄疫問題を忘れず、今後の畜産業の改善と発展、食の安定供給を長く考えて行くために、宝くじを買いませんか? 全国の宝くじ売場で売っているとのこと。当たればラッキー、当たらなくても収益金は全額、被害を受けた地方公共団体の復興事業に役立てられるそうです。発売は25日まで。

(20日に発行した有料会員向けメールマガジン第24号の記事を、一部改変し掲載しました)

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