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めんどな話になりますが…|松永 和紀

どんなコラム?
職業は科学ライターだけど、毎日お買い物をし、家族の食事を作る生活者、消費者でもあります。多角的な視点で食の課題に迫ります
プロフィール
京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動

遺伝子組換え作物を有機農業で育てる? 京都で17日、シンポジウム

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2011年12月16日

 有機農業は、化学合成農薬や肥料などと共に「遺伝子組換え技術を利用しない」というのが大きな特徴となっている。その大原則に疑問を投げかけたのが米国U.C.Davisで植物病理学を研究しているPamela C. Ronald教授。組換えイネの研究をしているRonald教授は、夫で有機農業の指導者であるRaoul W. Adamchak氏と共に、「Tomorrow’s Table Organic Farming, Genetics, and the Future of Food」という本を2008年に出版した。有機農業と遺伝子組換え技術の両方の長所を活かす農業の未来について考察しており、話題となった。

 日本でも、遺伝子組換え関係者の間で「示唆に富むいい本だ」と評判となり、翻訳が待たれていたのだが、京都府立大学の関係者らの努力により今年6月、丸善から出版された。「有機農業と遺伝子組換え食品 明日の食卓」である。

 そして今週土曜日(17日)、同大で一般公開シンポジウム「有機農業と遺伝子組み換え作物ー将来の90億人を養うために今考えること」が開催されるという。

 Ronald教授らの本を翻訳した同大の椎名隆教授や石崎陽子氏らが講演するほか、大阪府立大の小泉望教授や「くらしとバイオプラザ21」の佐々義子氏など、遺伝子組換えに詳しい識者も登壇する。

 そして、嬉しいことに有機農業関係者も。京都市内の農家、森田良彦さんと間藤徹・京都大学教授である。
 森田さんは科学的に「儲かる有機農業」を目指す人。一度お会いしたことがあるが、さまざまな農業技術は創意工夫に満ちており、人間味のある面白い語り手であり、そして、消費者を引きつける販売の手腕は並々ならぬもの、とお見受けした。

 間藤教授は、私の恩師。土壌肥料学の重鎮だが、森田さんをはじめとする京都の有機農家との付き合いが深く、有機農業の現場の実践に詳しい。もちろん、遺伝子組換え技術も理解しているので、まさに両方をつなぐ人物である。

 日本では、有機農業関係者が遺伝子組換え技術を批判し続け、栽培されていた組換えダイズを勝手に鋤き込む事件まで起こした。マスメディアの多くも、科学的根拠もなしに有機農業側に好意的な態度を取り、双方の対立を煽り続けた。対立ではなく互いを尊重し合う中で、将来の日本農業の姿について語り合うのは、これが初めてではないだろうか。実践している森田さんが議論に加わることで、地に足の着いた話になったらいい。Ronald夫妻の問題提起が、日本でどのように語られるのか、聞いてみたい。
 遺伝子組換えパパイヤの試食もあるという。ぜひお出かけください。

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