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めんどな話になりますが…|松永 和紀

どんなコラム?
職業は科学ライターだけど、毎日お買い物をし、家族の食事を作る生活者、消費者でもあります。多角的な視点で食の課題に迫ります
プロフィール
京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動

方向感(案)ってなに? まだ続く食品表示一元化検討会

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2012年7月6日

 食品表示一元化検討会の第10回会合が6月28日にあり、傍聴してきました。

 食品表示・考に寄稿くださっている小比良和威さんがtwitterで、検討会の実況中継をし、togetterにまとめてくださっているので、こちらもご覧ください。

 この検討会ももう山場。前回、報告書案の前半部分が検討されたので、今回はいよいよ、報告書案の後半部分、加工食品の原料原産地表示と栄養表示に関して、具体的な制度案が示されて議論が行われるだろう、という期待していました。

 ところが、でてきたのは報告書案ではなく、「加工食品の原料原産地表示についての方向感(案)」「栄養表示についての方向感(案)」でした。方向感(案)ってなに? 前はたたき台案だったのに……。私の頭の中では、ハテナ印が舞い踊ります。

 委員による議論も、「あれっ、その話、前にしてなかったっけ?」というようなものがあり、「実態調査を」「海外調査を」などの要望が繰り返し出されました。当初、10回の会合で報告書案のとりまとめをするというスケジュールが示されたはずですが、まだしばらくかかりそうです。

<加工食品の原料原産地表示>

 第8回会合で消費者庁事務局は、これまで原料原産地の義務表示の根拠としていた「品質の差異」と並べて、「誤認防止」を根拠とするたたき台案を示しました。その際に委員から、「具体的な義務化のイメージが分からない」という意見が出たので、具体的イメージを整理したのが、今回出て来た「原料原産地表示についての方向感(案)」 だというのが、事務局の説明です。

 国産の加工品では、消費者が加工食品の原産国が日本であると認識するにとどまらず、原料の原産地も日本であると誤認する場合に、その食品を指定して、義務づけ対象とします。そして、「誤認がある」と指定する際のメルクマール(指標)として事務局が提案したのは、(ア)生鮮食品に調味や塩蔵など簡単な加工が行われただけで、加工食品と原料が同一視されるケース(2)国産原料と海外原料に価格差があるケースーの二つです。

 とくに、後者の「価格差」に議論が集中しました。「誤認」というのは主観的な判断に大きく左右されるので、客観的な指標として価格差を取り入れたらどうか、というのが事務局の説明。海外原料のほうが国産原料よりも安いのに、国産と誤認されて、国産並みの価格で消費者が買うはめになってはいけない、という考え方です。

 これに対して、事業者側から「価格を固定的に考えられては困る」という意見が出ました。「価格は大きく変動しており、たとえば生きたうなぎは昨年暮れ、国産よりも中国産や台湾産の方が価格が高く品質もよかった。価格差をメルクマールにするのは難しい」という説明です。

 価格差には、委員から次々に反対意見が出されたので、この案はボツ、でしょう。

 ならば、価格差に変わる客観的な指標はあるのか? 委員からは具体案は出ませんでした。

 結局、「加工食品の原料原産地表示は、国際的には認められておらず、そんなものを推進しているのは日本と韓国だけ。こんなものが国際ルールに耐えうるのか?」という“そもそも論”まで出て来て、「議論はまた次回に」となってしまいました。

<栄養表示>

 こちらについて事務局が示したのは、一元化法施行後、概ね5年以内に栄養表示を義務化する、というもの。栄養の供給源として寄与が小さい食品は対象から外し、事業者も家族経営のような零細な事業者は適用除外とする余地を残す、としています。対象とする栄養成分について、決定を先送りして実際の義務化までに結論を出します。

 また、実際の数値と表示の誤差を認め、計算値による表示も可とし、計算のための公的なデータベースの整備や消費者への普及啓発など、環境整備を行ったうえで、義務化します。

 この案に対し、ほとんどの委員は義務表示化の流れについては理解を示しましたが、「義務化のスケジュールを決める前に、まずは環境整備を」という意見と、「義務化のスケジュールを決めないと、消費者の理解や事業者の準備も進まない」という意見が対立し、折り合えませんでした。

 個人的には、栄養表示に関しては、事業者側の「環境整備が先だ」という強硬姿勢が気になりました。「データベースに基づく計算値でいい」「低含有量の場合の誤差の許容範囲を拡大」などと、現実的な提案がなされているのに、「できない」と主張するばかりでは、共感は得られにくい、と思います。

 一方、原料原産地表示については、どこが落としどころになるのか、よく見えてきません。閣議決定や消費者基本計画などで、原料原産地表示の拡大は規定方針です。そのうえで、「原料原産地表示の義務化対象となる品目を増やす」ではなく、「拡大するための新たな理屈づけをしろ」ということが、この検討会には求められています。

 しかし、これまでの意見の大勢は、原料原産地表示制度そのものに否定的であったり、拡大に反対するもので、一部委員しか拡大を求めていません。

 その根本的なねじれは、事務局がどのように案の文面を取り繕ったところで、解消しないのです。

 第8回会合で「誤認」という言葉が出て来て、なんとか落ち着くかも、と思いましたが、甘かった。食品表示の世界は、科学で整理できない部分が多々あるので、私にとっては本当に難しいのです。ぼやきつつ、これからも逐次、報告することに致します。

 (有料会員向けメールマガジン第59号の一部を修正して掲載しました)

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