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めんどな話になりますが…|松永 和紀

どんなコラム?
職業は科学ライターだけど、毎日お買い物をし、家族の食事を作る生活者、消費者でもあります。多角的な視点で食の課題に迫ります
プロフィール
京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動

また起きてしまった! 浅漬けによるO157食中毒

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2012年8月15日

 ああ、また起きてしまった。食品衛生関係者の多くがそう思ったに違いない。
 北海道の高齢者施設などで腸管出血性大腸菌O157感染が起きて、約100人が症状を訴え3人が死亡した食中毒事件。札幌市保健所は、原因が「白菜の浅漬け」である、と断定し14日に発表した。

札幌市14日の広報文
札幌市15日の広報文

 もともとの汚染源はなんなのか? 土壌にはO157がいる場合があるので、野菜の洗浄、殺菌不足かもしれない。あるいは、牛肉など別の食品から手やまな板などを介して感染する交叉汚染か、従業員に健康保菌者がいた可能性があるのだろうか?

 それはともかく、「また、浅漬け」なのである。
 浅漬けが原因のO157感染は、これまでに何度も起きている。私の記憶に鮮明なのは、2005年の香川県の事件である。香川県の報告によれば、二つの老人福祉施設で43人が感染し、6人が亡くなった。給食の浅漬けからO157が検出されたが、食品メーカーの製造施設や収去した製品からは検出されなかった。結局、県はメーカー名などを公表せず、法的責任も問えなかった。

当時の香川県知事会見(2005年11月7日11月14日)

 これを受けて、香川県環境保健研究センターが「浅漬けにおける腸管出血性大腸菌 O157の消長について」という研究をまとめ、2007年のセンター所報で発表している。

 市販の浅漬けはpH5前後、食塩濃度2〜3%で、冷蔵保存されて短期間流通するものだが、その条件ではO157は生存可能であることが書かれている。
 データから、一度汚染されてしまうと浅漬けの条件では生き続け、食べるために取り出され夏場、室温に置かれると一気に増えると予想される。

 国立感染症研究所の情報で調べると、このほかにもいくつか、浅漬けが感染源となった事例がある。

[2000年、かぶの浅漬け]埼玉県の老人保健施設で2000年、8人が感染し3人が死亡した事例の原因は、かぶの浅漬けだった。どの時点で汚染が起きたかは特定されていないが、調理施設で策定されていたHACCPが実際には守られていなかったことが指摘されている。

[2002年、キュウリの浅漬け]福岡市の保育園で2002年、500人あまりが感染した。キュウリの浅漬けが原因とされたが、生産や流通、調理のどの時点で汚染されたか、特定することはできなかった。
[2001年、和風キムチ]浅漬けではないが、同種の食品と言えるだろう、和風キムチでも2001年に感染例がある。都内で散発的に発生し、各保健所が協力して調べた結果、埼玉県の漬物メーカーが作った和風キムチが原因と特定された。原材料の洗浄殺菌が不充分だったと推測されている。

 最近、ユッケや生レバ―ばかりが注目されて、もしかすると他の食品に対する注意が疎かになっていたのかもしれない。O157をはじめとする腸管出血性大腸菌の汚染は、肉類だけが原因とは限らない。どの家庭や調理施設でも交叉汚染は容易に起こりうる。また、生鮮野菜からO157を検出したという報告事例もある。月刊誌「食品と容器」では、染谷孝・佐賀大准教授が「生鮮野菜による食中毒を防ぐ」と題した記事を書かれており、参考になるだろう。

 農水省も2010年6月、「生食用野菜における腸管出血性大腸菌及びサルモネラの実態調査結果」を発表している。この時には、腸管出血性大腸菌とサルモネラは出なかったが、大腸菌は検出されている。

 O157は菌を数個食べてしまっただけでも、発症のおそれあり、と指摘されている。改めてその怖さを知り、生野菜を食べる場合にはよく水洗いすること(調理施設等では、次亜塩素酸ナトリウム溶液などによる殺菌も)、まな板などによる交叉汚染を防ぐことなどを、再確認したい。そして、漬物メーカーの中には、浅漬けのリスクを十分に知り、殺菌処理に気を配り製品の検査で問題がないことをしっかりと確認したうえで販売しているところも多いことを、付け加えておきたい。

厚労省・腸管出血性大腸菌による食中毒のページ

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