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めんどな話になりますが…|松永 和紀

どんなコラム?
職業は科学ライターだけど、毎日お買い物をし、家族の食事を作る生活者、消費者でもあります。多角的な視点で食の課題に迫ります
プロフィール
京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動

健康食品の機能性表示解禁にノー! 消費者団体が足並み揃え意見書

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2013年7月4日

 健康食品の機能性表示解禁—。6月半ばに閣議決定されて、新制度の来年度実施に向けて大きく舵が切られた。Foocomは、これまで何度も書いてきたとおり、現状では反対。そして、新たに反対を表明するところが現れた。約50の消費者組織で構成された「全国消費者団体連絡会」(全国消団連)である。

 全国消団連は7月3日、反対する意見書を総理大臣や消費者担当大臣等に提出した。内容の一部をそのまま、紹介しよう。

 機能性を表示して販売するのであれば、その科学的根拠が十分なものでなくてはならず、根拠の議論を置き去りにして表示の検討だけを進めていくとすれば、それは拙速であると言わざるを得ません。科学的根拠をどのような方法によって確認するのかといった検討に立ち返るべきと考えます。
 また、規制改革会議の答申は「国ではなく企業が科学的根拠を評価した上で、企業の責任において表示する」ことを認めるように求めています。しかし、科学的評価には個社の研究データだけでは不十分であり、幅広く研究データを集めたメタアナリシスによる評価が不可欠と考えます。

 規制改革会議が現行の特定保健用食品などの制度の「使い勝手の悪さ」を問題視し、別の制度を新設するように求めたのに対しては、「既存の制度に加えて考え方の異なる仕組みが並行することになれば消費者にとっては大変分かり難く、さらに、科学的根拠が不確かなものに表示を許せば市場は混乱し、消費者被害を拡大することになります」と述べ、最後にこう書いている。

 政府においては、科学的根拠をもった表示制度という観点から政策検討をすすめるべきであり、むしろ、根拠も不十分なままに体験談等による“健康増進に寄与するかのようなイメージ”だけで流通している「いわゆる健康食品」についての規制の強化を求めたいと思います。

 全国消団連は、日本生活協同組合連合会や日本消費者連盟、主婦連合会など多様な組織が加盟しており、食品をめぐるほかの項目では、意見が対立している場合が多い。しかし、今回の機能性表示については迅速にまとまって、意見書提出となった。「今でも、悪徳業者がはびこって被害が大きいのに、これ以上の混乱、被害はイヤ」というのは、かなり多くの消費者が持っている素朴な感情ではないか。

 「根拠があれば、機能性表示をできるようにしたほうが、法律の網の目をかいくぐるような広告、体験談だらけの悪質な宣伝が減る」と主張する識者もいる。でも、通常の消費者感覚からすれば、その言い分はさっぱり説得力がないし、むしろ詭弁に聞こえる。「そんな企業は、新制度がはじまれば、根拠が希薄なのに機能性表示をしたうえで、もっと悪どい広告宣伝をするに決まっている」と考える。そんな言葉を、これまで多くの消費者団体関係者から聞いてきた。規制緩和による経済発展という「単純思考」に対するストレートな怒りが今回、消費者団体の垣根を越えて、意見書につながった。

 今週発売の週刊ダイヤモンド(2013年7月6日号)で、国立栄養・健康研究所の梅垣敬三・情報センター長が思い切ったコメントをしている。「現在のトクホ、機能性食品の仕組みで認可されている成分以外で、科学的に機能が認められる成分は新たに発見されていない、というのが研究者の共通認識。効果が不確かなものが出回ることが、はたして本当に国民の健康増進に役立つのか」。

 これが、健康食品の今後の表示を考えるうえでの原点ではないか。機能性研究は進んでいる。しかし、これまでのコラムでも書いたとおり、ビタミン類などの疫学調査結果、学術論文の発表バイアスの問題等まで考えると、こうした厳しい見方も、うなずける部分がある。要するに、研究として不確実性がまだあまりにも大きい。
 消費者は、実体のないもの、価値のないものを、巧妙な宣伝、高価格で売ってほしくないのだ。でも、同時に、消費者も、吟味して見極めて買う力をつけなければいけない。消費者団体も、政府に意見し企業に抗議するだけではダメ。消費者が価値のないものに金を支払わなければ、新制度ができたって、へっちゃら。単純思考には、素直でなおかつ科学的根拠を持った「買わない」という対抗策もあり、なのだ。

 これが実はもっとも影響力が大きい。消費者団体の活動が、政府に文句を言うだけに留まりませんように。これから消費者にどう働きかけて行くかが、全国消団連の活動の正念場となる。意見書を見ながら、そう思う。

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