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FoodSicenceその後|中野 栄子

どんなコラム?
食、健康、医療を中心に取材執筆活動継続中。その中から、やっぱり気になる「食への誤解」をコミュニケーションの観点で考えます
プロフィール
日経BPグループ勤務。03年~10年まで食の機能と安全を考える専門サイト「FoodScience」のウェブマスター

安全・安心のセット販売はNG

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2011年4月6日

 まずは、東日本大震災で多くの方の命が奪われたことに謹んで哀悼の念を捧げるとともに、被災されたすべての方にお見舞い申し上げます。そして、この戦後最大の危機、天下国家の一大事という今、日本の食に対して強く主張をしていこうと「FOOCOM.NET」を立ち上げられたこと、誠におめでとうございます。この非常時に「おめでとう」とは何事だと眉をひそめる向きもおられるかもしれません。しかし、原発事故に起因する農産物への風評被害などが起こりつつある今こそ、正しい食の情報が強く求められているときです。そんな中で敢えて船出された「FOOCOM.NET」編集長の松永和紀さんと森田満樹さんの勇気を称えたいと思います。

 こうした「FOOCOM.NET」の思想に賛同し、寄稿をお引き受けした私ですが、簡単にそのいきさつを報告させていただきます。私は日経BP社の記者として2003年6月、“食の安全と機能を考える”ことをテーマにした専門ウェブサイト「FoodScience(フードサイエンス)」を立ち上げました。折りしも、食品安全基本法が施行され、内閣府に食品安全委員会が設置され“食の安全元年”と呼ばれた年です。BSE(牛海綿状脳症)問題に端を発した国民の食への不信や誤解を解消しようと、国が科学的な安全性の評価に本腰を入れ始めたときでした。

 メディア企業としては、新たな情報ニーズがあればそこにメディアを作って、運営するのが仕事です。日経BP社では、「日経バイオテク」という科学技術媒体をベースに、それまで外食、中食、食品を取材していた私がウェブマスター(ウェブサイトの運営管理)を務めることになりました。

 食について取材してきたとはいえ、文学部心理学科卒の文系記者としては、BSEの感染の原理や食品の機能性成分の作用機序などを科学的に理解するのに、当初苦労したのも正直なところです。そんなとき、実に頼りにさせていただいたのが松永さんや森田さんです。松永さんは、「FoodScience」創刊時からトップライターとして多くの提言をしてくれましたし、森田さんは2年間のタイ・バンコク在留中も難なく寄稿を継続してくれました。このほか、「FOOCOM.NET」の専門家コラムでご活躍されている先生方にもお世話になりました。このように皆さんに鍛えていただいたお陰で、「FoodScience」のメルマガ読者が2万4000人にも上るウェブ事業へと発展しました。

 ところが、6年10カ月間運営してきた「FoodScience」も昨年3月末、会社の事情などにより休刊せざるを得ない状況に陥りました。多くの方に支えていただいた「FoodScience」ですが、やむなく休刊することとなり、皆さんにご迷惑をお掛けしたことには、本当に申し訳なく思っております。それでも、こうしてかつての「FoodScience」の執筆陣と共に、松永さんと森田さんが情報発信を再開してくださったことには、感謝の気持ちでいっぱいです。

 「FoodScience」休刊以降は、日経BP社の子会社の日経BPコンサルティングに出向し、現在は日経BPグループ内外のメディアのプロデュースに携わっています。カバー分野は、これまでの食に加え、健康・医療と広がりました。糖尿病学会などを取材してみると、医薬品を用いても血糖コントロールの難しい患者が、食事療法で改善するといった研究例に接します。あらためて食の存在感の大きさに驚く日々です。これからも、食の問題については、欠かさず目を見張り、機会を見つけて書いていきたいと思います。そんなわけで、「FOOCOM.NET」にもときどきお邪魔しますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 最後に、今回の原発事故による農産物への影響について感じたことを1つ。これまでの食の問題の例に違わず、政府や企業の発表の拙さと消費者が過剰に反応するなどの混乱ぶりが気掛かりです。先週、民法テレビのバラエティー番組に登場していた小泉チルドレンの杉村太蔵・元衆議院議員が、茨城県の野菜が放射性物質によって出荷に影響が出ているというニュースを受け、「いいですか。茨城県の野菜は100%、安全・安心なんですっ!国が保証しています!!」と声を張り上げていました。視聴者を安心させようという必死だけさは伝わってきましたが、「うーん、これでは伝わらないなあ」と思わざるを得ませんでした。

 安全は客観的に理解するものに対し、安心は感情的に納得するもの。「安全である科学的根拠はこれこれです。だから、安心してください」と、まず安全について客観的で分かりやすい説明をし、その結果安心してもらう努力が必要なのでは。安全と安心をセットにまとめにして押し付けていては、到底理解は得られないでしょう。安全・安心の議論が始まって8年。まだまだ、議論の余地は大きいようです。

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