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GMOワールドⅡ|宗谷 敏

どんなコラム?
一般紙が殆ど取り上げない国際情勢を紹介しつつ、単純な善悪二元論では割り切れない遺伝子組 み換え作物・食品の世界を考察していきたい
プロフィール
油糧種子輸入関係の仕事柄、遺伝子組み換え作物・食品の国際動向について情報収集・分析を行っている

GM栽培には個別禁止を認めたが、さすがに流通までは~欧州議会農業委員会

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2015年9月7日

 2015年9月3日、欧州議会農業委員会は、EU安全性承認済みGM(遺伝子組換え)食品と飼料の輸入と利用並びに販売を、各加盟国が制限または禁止できるようにRegulation(規則)(EC) No 1829/2003 「GM食品・飼料規則」 を改正する欧州委員会草案 を拒否した。

 投票に付されたのは、EPP(欧州人民党)所属Albert Deß議員(ドイツ)が6月19日に提案した「欧州委員会草案は拒否すべき」という意見で、投票結果は賛成28票、反対8票、棄権6票であった。

 欧州委員会提案の内容や背景については、本稿でも4月に纏めているが、欧州議会農業委員会による反対の主な理由は明快だ。
(1)EUの統一市場は、一部の恣意的な政治的決定により歪められるべきではない。
(2)EUはGM畜産飼料の輸入に頼っており、それが禁止されれば生き残れない多くの産業部門がある。

 欧州委員会提案への反対意見は、10月12、13日に開催される欧州議会環境委員会(本件を主管する委員会)に諮られ、10月26~29日の欧州議会本会議で検討される。反対の理由はリーズナブルなものなので、欧州委員会の改正案が議会の承認を得られる可能性は低いと考えられる。

 欧州委員会によるこの提案はもともとかなりムリクリだった訳で、それを敢えて出してきた欧州委員会の意図が奈辺にあるのかの方がむしろ興味深い。

<改正Directive 2001/18/ECに基づくGM栽培opt-outを巡る加盟国などの動き>

 一方、欧州議会は1月13日にDirective(指令)2001/18/EC「GMOs(遺伝子組換え生物、この場合主に農作物を指す)の環境中への放出に関する指令」の改正を議決し、4月2日施行された。

 この結果、加盟国はEU栽培承認済み(現在のところ実質的にはMonsanto社のGMトウモロコシMON810系統のみ)もしくは栽培承認申請手続き中のGM農作物について、国または地域における栽培の制限または禁止を許される(opt-out)こととなった。

 MON810系統と2015年4月2日以前に栽培承認申請されたGM作物を対象とした加盟国などによる欧州委員会へのopt-out通告に係わる最初の暫定期限は10月3日だが、この手続きを巡る動きも活発化してきた。

 8月9日には、英国スコットランド政府が、美しい自然環境やクリーンでグリーンなステータスと地域内産食品のイメージやブランドを守るために、EU承認済みのGMトウモロコシと栽培認可待ちのGM6作物を含め全てのEUによるGM作物栽培への同意から身を引く要請を提出するつもりである旨の声明を発表した。

 この発表を巡っては、スコットランド農業部門から競争力低下を懸念する声が上がり、8月17日には英国の学研部門28組織からもスコットランド政府担当閣僚宛に反対意見が出状された。これに対し、9月2日、30名の科学者らが逆にスコットランド政府を支持する書簡を送り 、GMを巡る複雑な国内情勢を反映している。EU加盟国の中では、隠れもないプロGMであった筈の英国におけるこの地方内乱は、メディアの注目を集め、広く報道された。

 これに続き、ドイツのChristian Schmidt農相がopt-out通告を検討しており、ドイツ各州に対しopt-outを希望するかどうかを9月11日までに回答するよう求めていると8月24日付Reuters紙がスクープした。しかし、この件に関してドイツ政府や農相からの正式見解は公表されていない。

 8月27日には、同じくReuter紙が、Monsanto社の情報としてラトビアとギリシャがMON810に対するopt-outを申請しており、欧州委員会に確認したところ8月24日時点でMON810への opt-outを公式に申請しているのはこの2カ国のみであると伝えた。

 opt-out申請暫定期限まで余すところ1カ月を切り、上記の加盟国・地方以外にMON810を栽培禁止にしているフランスや、EUのGM作物栽培承認に対して常に反対投票を繰り返してきたオーストリア、ブルガリア、ハンガリー、ルクセンブルグ、ポーランドなどの動向が注目される。

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