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GMOワールドⅡ|宗谷 敏

どんなコラム?
一般紙が殆ど取り上げない国際情勢を紹介しつつ、単純な善悪二元論では割り切れない遺伝子組 み換え作物・食品の世界を考察していきたい
プロフィール
油糧種子輸入関係の仕事柄、遺伝子組み換え作物・食品の国際動向について情報収集・分析を行っている

EUのGM流通opt-outによる経済的影響査定報告書(上)

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2015年11月2日

 2015年10月28日、欧州議会は、EU安全性承認済みGM(遺伝子組換え)食品と飼料の輸入と利用並びに販売を、各加盟国が制限または禁止できるようにRegulation(規則)(EC) No 1829/2003 「GM食品・飼料規則」を改正する欧州委員会草案について全体投票の結果、賛成75票、反対577票、棄権38票の大差でこれを否決した。

 この流れについいては、本稿前々回前回で背景など触れた通りなので詳述しないが、欧州委員会は新たな提案を出し直すことを拒否し、本草案を撤回せずにEU閣僚会議でさらに議論する意向を表明している。

 ところで、欧州議会の議決に先立つ10月20日、流通opt-outによりEUにもたらされる経済的影響アセスメント報告書発表された。この報告書は、世界におけるnon-GMダイズの供給可能性などを含み興味深い内容なので、「上」、「下」2回に分けてその概要を紹介する。尚、省略した図表は原文を参照して下さい。

 報告書を発表したのは、草案に反対する立場のEUの関連業界3団体である。すなわち、穀物をはじめ農畜産物の通商・貿易を統括するCOCERAL:European Association of cereals, rice, feedstuffs, oilseeds, olive oil, oils and fats and agrosupply trade、搾油業界を代表するFEDIOL:European Vegetable Oil and Proteinmeal Industry及び飼料工業連盟のFEFAC:European Feed Manufacturers’ Federationであり、いずれもEUのほぼ全域をカバーする有力組織だ。

「ヨーロッパのGM承認『opt-out』提案に関する経済的影響の査定」

<1.はじめに>

 この報告書の目的は、GM飼料を敬遠してopt-outする可能性が高い4加盟国の飼料と畜産セクターに焦点を合わせたケーススタディを通して、欧州委員会によるGM流通「opt-out」草案の潜在的な悪影響を分析することです。

 主要飼料原料がダイズであるという背景から、この研究は第2章と第3章でダイズとダイズミールに焦点を合わせます。第4章はGMダイズの世界的な栽培面積の急速な増加とNon-GMダイズ生産の減少について述べます。 第5章はNon-GMダイズとミールを購買するコストと実務的影響を調べます。 第6章がopt-outした国におけるGMダイズミールの代替可能な選択肢の問題を扱います。

<2. ダイズとダイズミールの世界市場>

 USDA(米国農務省)によれば、直近3年の穀物年(2012/13~2014/15)の世界ダイズ生産量平均は、2億9000万トンで、約2億4400万トンがダイズミールとダイズ油用に搾油処理されました。搾油工場の平均的抽出レートを79%とすれば、世界のダイズミール生産量は1億9200万トンです。

 ダイズとダイズ製品で輸出余力のある国は少数であり、ダイズとダイズミールが国際規模で売買されています。直近3穀物年の世界的なダイズの国際貿易量は平均1億1300万トンで、ダイズミールは6100万トン(原料ダイズ換算で7700万トン)でした。従って、ダイズ換算した全体的な国際貿易は1億9000万トン(USDA、2015年)に達します。

 世界のダイズ生産の約86%が米国、ブラジル、アルゼンチン、パラグアイとカナダに集中しています。同時に、これらの国はダイズとダイズミール合計で世界の輸出の92%(USDA、2015年)を占めます。

<3.opt-outしそうな加盟国におけるダイズミール>

 直近3穀物年平均で、EUは飼料用のダイズミール2850万トン、すなわちダイズ換算で3610万トンを消費しました。このうち3500万トン以上に相当する約97%が輸入されました。本論文においてopt-outを考慮している可能性がある4カ国(すなわちフランス、ドイツ、ハンガリー及びとポーランド)はダイズ換算で合計1200万トン (USDA、 2015 and Oil World、2015)を消費しました。

 ダイズミールは平均して46%のたんぱくと2.8%のリシンを含有しており、上記4カ国の畜産部門に生たんぱくの440万トンとリシンの26万5000トンを供給します。 これは、全体のたんぱくの32%と、全体のリシンの44%をダイズミールに負ったことを意味します。畜産部門にとってダイズミールの不可欠な重要性は明白なのです(図1)。

 4カ国における3年の配合飼料の平均生産量は5580万トンで、ダイズミールの22%はシリアル(49%)に次いで2番目の主要原料(FEFAC, 2014)です。

 ダイズミールは、4カ国とEU全体の近代的な畜産システムで利用可能なたんぱくのうち最も費用効果が高く、動物栄養的に良くバランスされた原料です。(この後、飼料栄養学とブタは成長後に家禽よりダイズミールを必要としないなど、動物種間の消化器系の相違によるニーズのプライオリティが述べられているが省略)。

<4.GMとnon-GMダイズの市場>

 この10年にわたりGM作物の栽培は世界的に著しく成長しました(図2参照)。 GMダイズエリアは1990年代半ばの事実上ゼロから2014年には9千万ヘクタールにまで発展しました(James, 2014)。

 これは南北アメリカにおける重要な生産・輸出国の傾向を反映します。国際アグリバイオ事業団(ISAAA)とwww.transgen.deによれば、主要ダイズ生産国の2014年GMダイズ栽培比率は、米国94%、ブラジル93%、アルゼンチン100%でした。

 GM作物栽培の急成長の主な理由は、従来の選択肢との比較において、技術と特に収益性に対する好影響が農民からの人気を博したからです。GMダイズの粗利はnon-GMダイズに比較して典型的により高く、若干のGMトレイトが南米でより高い単収を実現します。技術は、多くのダイズ栽培者がコムギの後作にダイズを植える二毛作により生産を増やすことに貢献しました (Brookes and Barfoot、2015)。

 世界のダイズ生産におけるGM技術の人気は、non-GMダイズ及び製品の世界貿易と供給可能性に対する帰結的意味と共に表1に要約されます。

 これは、南北アメリカ大陸のダイズ生産主要5カ国において、2012/13-2014/15の穀物年平均でnon-GMダイズはたった1200万トンしか生産されなかったことを示します(USDA、2015 and www.transgen.de)。GMダイズの栽培を許していない主要ダイズ生産国は、中国(1250万トン)、インド(1050万トン)、ウクライナ(180万トン)とEU(130万トン)です(USDA、2015)。

 しかし、中国とEUはダイズの純輸入国であり、non-GMダイズあるいはダイズミールを輸出しません。しかも、表1で示されたnon-GMダイズの「統計的な」供給可能量の大部分が低級な品質、混入問題(すなわち、高価で厳しい分別と供給源からエンドユーザーまでのIPハンドリングにも拘わらず、non-GMダイズとミールの供給にGM成分が見いだされる高い可能性)のために、「証明されたnon-GM」としてEUマーケットでの使用に適していそうもありません。

 従って、商業的に有効な動物飼料目的のためのnon-GMダイズとミールの世界的な供給可能性は現在のところ900万トンであると概算されます(表1参照)。

出典:USDA、www.transgen.de、独自計算

出典:USDA、www.transgen.de、独自計算

(「下」に続く)

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