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GMOワールドⅡ|宗谷 敏

どんなコラム?
一般紙が殆ど取り上げない国際情勢を紹介しつつ、単純な善悪二元論では割り切れない遺伝子組 み換え作物・食品の世界を考察していきたい
プロフィール
油糧種子輸入関係の仕事柄、遺伝子組み換え作物・食品の国際動向について情報収集・分析を行っている

FDAとUSDAはゲノム編集動植物の規制方針などを公表したが・・・

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2017年2月9日

 2017年1月19日、GMOs(遺伝子組換え生物)規制の近代化を目指すFDA(米国食品医薬品局)とUSDA(米国農務省)から改正案などが官報告示された。これらの告示は、CRISPR/Cas9のようなゲノム編集技術を用いた動植物に由来する食品安全性(飼料安全性を含む)と、植物の環境安全性を担保するために連邦政府はどのように規制していくかという問題に対し応えるのが主な目的である。

 この動きは、2015年7月2日のObama政権からバイテク(製品)規制を担保するFDA、USDAとEPA(環境保護局)に対し、3省疔が共管する規制のCoordinated Framework(調和的フレームワーク)をアップデートするよう求めたメモに答えたものだ。

 FDAによる改正案は、対象を動物規制のガイダンス案通知[Docket No. FDA–2008–D–0394]と、植物の規制に関するコメントの要請(3月20日まで)[Docket No. FDA–2016–N–4389] の2本に分かれている。

<FDAのGM植物由来食品規制案(コメント要請)>

 ゲノム編集植物の規制について、FDAが求めたコメントは以下の4点(原文は行政文章で回りくどいので、一部抄訳)だ。

1.ゲノム編集された植物のヒトと動物の食用に結び付けられる食品安全性リスクは、他の植物開発方法(例えば、交雑、化学的あるいは放射線照射による突然変異、人工的な組換えDNA技術を用いた非標的遺伝子組換えなど)と結び付けられるそれらとは異なりますか?

・(任意の協議プロセスを経た人工的な組換えDNA技術を用いて開発されたもののような)現在の新奇植物品種の科学的知識と経験は、ゲノム編集された新奇植物の安全性評価と規制状況にどの程度まで関与しますか?
ゲノム編集された新奇植物の安全性評価と規制状況について適切である追加の科学的知識がありますか?

2.ゲノム編集植物のカテゴリーは、伝統的育種植物と異なるあるいはより大きな食品安全性リスクを引き起こすことはありそうもないと結論する科学的根拠はありますか?
同様に、ゲノム編集植物のカテゴリーから生じる食品の規制状況は、伝統的育種植物のそれとは異なっていないと言えますか?
もしこのようなカテゴリーがあるなら、上市前の任意の協議プロセスに含めるべき理由がないと決定できますか?

もしそうなら、これらのカテゴリーの特徴(例えば、遺伝子表現型と修正(挿入、削除あるいは置換)についての情報を含めて)を記述して、食品安全性リスクまたは規制状態への問題はありそうにないというデータそして/または情報を提供してください。
規制状態への問題は、例えば、新奇植物品種からの食品が上市前レビューと承認が必要とされる未認可の食品添加物や着色添加物を含むかもしれません(FD&C Acのセクション409と721を参照)。

もう1つの例として、もし新奇植物品種からの食品が伝統的育種植物からの食品と異なった栄養的プロファイルを持つなら、物質的変化を開示する特定の表示が必要とされるかもしれません。

a.もしこのようなカテゴリーが存在するなら、作物開発者はどのようにして新奇植物種からの食品の安全性を保証しますか?
b.もしゲノム編集植物の特定のカテゴリーが安全性あるいは規制状態の問題を提起しないとしても、食品を上市する意図を持つ作物開発者はゲノム編集を行ったという任意の上市前協議プロセスをFDAに知らせるべきでしょうか?
もしそうなら、作物開発者はFDAに通知するためにどのようなプロセスを使うべきですか?
どんな種類の情報がFDAに対する通知に含められるべきですか?
c. ゲノム編集技術が、単純な遺伝子削除からまったく新しい遺伝子まで広範な植物の修正を可能とし、それらの修正の一部は伝統的育種を通しても達成できるとすれば、ゲノム編集植物からの食品の伝統的育種を通して達成できたはずである修正が任意のいかなる上市前協議プロセスに含められるか否かの理由についても論じて下さい。

3.ゲノム編集植物は、伝統的育種植物より食品安全性リスクがより高いと結論する科学的根拠はありますか? もしそうなら、これらのカテゴリーの特徴(例えば、遺伝子表現型と修正(挿入、削除あるいは置換)についての情報を含めて)を記述して、伝統的育種植物より食品安全性リスクがより高いという理由を支持するデータそして/または情報を提供してください。

4.ゲノム編集を使ってヒトや動物の食用に新奇作物を生産しようとしている人たちを含め、食品安全性あるいは食品規制状況に関係する問題について小企業を手助けするためにFDAはどのような処置をとることができますか?

 一読して、随所に依拠するデータや情報の添付を要求されているため、コメントを提出できるのは研究者や専門家に限られるだろう。とても一般消費者の手におえるものではない。透けて見えるのは、ゲノム編集植物由来食品は、ケースバイケースで規制緩和もしくは不要とする意向である。

<FDAのGM動物由来食品規制案>

 コメント頼みの植物に比べ、動物に関してFDAは確固とした規制方針案を通知した。つまり、ゲノム編集された全ての動物を連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug, and Cosmetic (FD&C) Act)を根拠に「新動物薬」と解釈することにより、新薬に対する現行の厳しい規制と似通ったプロセスを拡大適用しようというのだ。

 これに対しては、「狂気の沙汰だ」と評した動物遺伝学の大御所UC (カリフォルニア大学)Davis校のAlison van Eenennaamはじめ、研究者たちが批判の声を上げている。

 研究者たちの主張の主なポイントは、規制(リスク評価)はあくまでプロダクトベースで行われるべきであり、これでは規制(コスト)に対応可能な大企業以外ゲノム編集動物には手が出せないというもの。そして、ゲノム編集(TALENs)を用いて開発された角無し乳牛は、はたして「動物薬」なのかと問いかけている。

 現に、CRISPRを用いて尿酸を分解出来ない遺伝病を抑止した犬の商業販売について、FDAに照会したミシシッピ州のドッグ・ブリーダーは、この通知をタテに未承認では販売不可との回答に接した。

<USDAのGM作物栽培規制案>

 一方、USDA/APHIS(動植物検疫局)が発出した改正案 [Docket No. APHIS–2015–0057]は、本来担保しているPlant Pest(植物病害)拡大防止を目的としたGMOsの輸入、州間移動と環境放出に係わる規制のアップデートである。また、ゲノム編集は、「genetic engineering」という定義に含まれているという立場である(FDAほど力んではいない)。

 現行規制は、29年にわたり有効に作動し、得られた知見からは殆どのGE技術はPlant Pestリスクを提出する生体を作らなかったことを認め、生産者に対する規制の緩和さえ匂わせている。しかしながら、USDAは今後の規制について、GEOsがNoxious Weed(有害雑草)を作り出すかもしれないというリスクの可能性に焦点を移すことを提案した。

 これに対し、「バイテク規則は不安ではなく事実に基づくべき」、「悪魔は細部に宿る」と噛みついたのは、Condoleezza RiceとHillary Clinton国務長官付科学顧問や米国科学振興協会(American Association for the Advancement of Science:AAAS) 会長などを歴任したNina Fedoroffペンシルベニア州立大学名誉教授である。

 彼女の主張は、「この新たな規制方針はNoxious Weedとして始まる植物のためには合理的だが、長い間栽培化されてきてweediness(雑草性)を失った作物のためにはまったく意味をなさない。提案された規則は、あらゆる近代の分子的方法によって改変されたすべての植物に適用される。USDAは、バイテクは作物をPlant Pestに変えなかったが、どんな種類の遺伝子変化も非雑草を雑草に変えるかもしれない心配があると言っているらしいが、 証拠はない、ただ懸念だけ」というものだ。

 Obama大統領最後の日にFDAとUSDAが官報告示した翌日の1月20日就任したTrump大統領の政権は、USDAはじめ諸官庁の職員に対し外部への情報提供を禁じる箝口令を敷いたと1月24日付BuzzFeed紙などが伝えた。FDAとUSDAは、この動きを事前に察知して内部検討が未成熟(特にFDAの植物)なまま敢えて公表(既成事実化)を急いだという推測は可能かもしれない。

 Obama政権のレガシーを次々に相続放棄して破壊しているTrump政権の動きから、USDAが具体的制度を策定中のGM食品義務表示法も含め、先行き不透明感が米国内には漂っているようだ。

参考資料:米国における現行のGM規制の概要については、下記を参照して下さい。
立川雅司「アメリカにおける遺伝子組換え作物規制の近年の動向――連邦および州による規制と新たな課題――」(農林水産省)

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