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GMOワールドⅡ|宗谷 敏

どんなコラム?
一般紙が殆ど取り上げない国際情勢を紹介しつつ、単純な善悪二元論では割り切れない遺伝子組 み換え作物・食品の世界を考察していきたい
プロフィール
油糧種子輸入関係の仕事柄、遺伝子組み換え作物・食品の国際動向について情報収集・分析を行っている

2010年4月~2011年3月のラフスケッチ(上)

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2011年4月3日

ごあいさつ: 2003年3月より2010年3月まで7年間にわたり(株)日経BPのウェブマガジン「FoodScience」に、遺伝子組み換え食品・作物(GMO)の国際動向について紹介する「GMOワールド」を執筆してきました。(株)日経BPの事情による「FoodScience」サイト閉鎖に伴い、過去ログなども参照できなくなっていましたが、新サイト「FOOCOM.NET」開設に伴い全過去ログのアップをしていただけることなり、同時に「FOOCOM.NET」において「GMOワールドⅡ」を約1年ぶりに再開しますのでよろしくお願い申し上げます。

(GMOウォッチャー 宗谷 敏)

 1年間のブランクがあるので、ウォーミングアップとして先ずは各地域、主要国がどうなっているのかを、数回に分けてオーバービューしてみたい。今回は、ISAAA報告と北米を取り上げる。

<ISAAAによる世界のGM作物栽培状況報告>

2010年のGM作物栽培面積・上位10カ国

2010年のGM作物栽培面積・上位10カ国(出典:ISAAA)

 2011年3月3日、ISAAA (国際アグリバイオ事業団)は、2010年の世界のバイテク農作物の商業栽培面積を1億4800万ha(ヘクタール)、対前年比10.4ポイントの増加と発表した。栽培国は4カ国増の29カ国あるが、全体の栽培面積は15年にわたり続伸している。

 上位10カ国は1.米国、2.ブラジル、3.アルゼンチン、4.インド、5.カナダ、6.中国、7.パラグアイ、8.パキスタン、9.南アフリカ、10.ウルグアイ(表参照)。これらに続き、100万ha 以下の栽培国が19カ国あり、計29カ国において1540万人の農家がバイテク農作物を作付けし、そのうち1440万人(90%)は、発展途上国の農家であった。

 作物別では、ダイズ7330万ha(GM全体の49.5%)、トウモロコシ4680万ha(同31.6% )、ワタ210万ha(同14.2%)、ナタネ700万ha(同4.7%)。トレイト別では、除草剤耐性が8930万ha(61%)、複数のトレイト併せ持つスタック(掛け合わせ)品種が3230万ha(22%)、害虫抵抗性は2630万ha(17%)と報告されている。

<米国>
GMサケとGM食品表示問題: 2010年9月3日、米AquaBounty社の成長を速めたGMサケは食べても安全とFDA(米食品医薬品局)が発表した。(植物以外では)初のGM動物食用認可かと注目されたが、同年9月20、21日に開催された公聴会では諮問委員からの慎重意見が相次ぎ、認可は先送りとなった。本件はメディアも着目したが、その大部分は消費者懸念を煽った。「今まで知らずに大量に食べていたGM食品」といったリードが目立った。この結果、サケのみならずすべてのGM食品表示問題が浮き彫りになり、表示は不要とする行政と対立して今も議論が続いている。11年3月のMSNBC 世論調査では、実に回答者の96%がGM食品表示を好んでおり、11年3月26日にはワシントンD.C.を始め各地でGM食品表示を求める集会も開催された。

GMアルファルファとGMサトウダイコンの栽培禁止裁定: 07年5月、北カリフォルニア州地方裁判所(Charles Breyer判事)は、不十分とされたUSDA(米農務省)によるEIS(環境影響評価)が完了するまで米Monsanto社の除草剤耐性GMアルファルファの栽培を禁止し、09年6月の控訴審もこれを支持した。しかし、10年6月21日最高裁はこれらの裁定を下級裁判所に差し戻した。
 USDAは、10年12月17日最終EISを公表し、栽培方法のオプションとして共存政策を示す。この可否を巡り、栽培禁止の主導者であるオーガニック業界は内部意見に亀裂を生じる。このスキを突いて11年1月27日、USDAのTom Vilsack長官は、GMアルファルファの規制を緩和し栽培を無条件で認めると発表した。しかしながら、これを不服とするCFS(the Center for Food Safety)などが、3月18日サンフランシスコで連邦裁判所に再提訴し、「No end in sight for biotech battle」となっている。

 CFSなどは、08年1月23日にGMサトウダイコンに対しても同様の訴訟を起こしており、09年9月22日に北カリフォルニア地方裁判所(Jeffrey S. White判事)から、「EISを不要としたUSDAは違法」との裁定を勝ち取った。そして、10年8月13日、地方裁判所はGMサトウダイコンの栽培を禁止する。米国の砂糖原料の半分はサトウダイコンで、その95%がGMだったために、そのインパクトはGMアルファルファ栽培禁止以上であった。

 「使うのは根だから、花粉が飛ばないうちに収穫しちゃえばいいのだ」という一休さんみたいなUSDAに立腹したWhite判事は、10年11月30日ついに畑のGMサトウダイコン破壊命令を出す。ところが、11年2月25日連邦控訴院は、USDAとMonsanto社の控訴を認め、地裁の栽培禁止措置は越権とする逆転判決を出す。この結果、11年2月4日にUSDA /APHIS(動植物検疫局)が発表した部分的な規制緩和(条件付き栽培承認)に基づき、GMサトウダイコンの春蒔きが農家は可能となった。
 環境保護団体やオーガニック農家が、これらの訴訟を起こす拠り所としているのは全国環境政策法令(NEPA)であり、必要とされているUSDAの環境アセスメントが不十分だという主張である。

オーガニックとの対立が先鋭化: 一部オーガニック農家は、風媒などによってGMが自分の畑に交雑した場合に知財権者から告訴されるのではたまらないと、Monsanto社の種子特許権に対する先制訴訟を11年3月29日マンハッタンの連邦地裁に提出した。
 このようにGMとオーガニックの対立が先鋭化していく中、カリフォルニア大学デービス校のGM研究者Pamela Ronald博士とオーガニック農業実践者のご主人が著した「明日の食卓:オーガニック農業、遺伝学と食品の未来(Tomorrow’s Table; Organic farming, genetics and the future of food)」(Oxford University Press. 2008)は、双方の協力・融合を説いており、もっと読まれて良い好著(丸善から翻訳出版の予定)だろう。

その他のトピック: 南部を中心とした(ダイズの)グリホサート耐性雑草問題が深刻化し、対応策としてMonsanto社は米Dow AgroScience社や独BASF Plant Science社と協力して、別の除草剤であるジカンバや2,4-D耐性作物の開発を急ぐ。ノースダコタ州ではGMナタネのこぼれ落ち生育も発見(10年8月)される。GMトウモロコシ由来Btたんぱくの水路流入への警告(07年10月に続き10年9月)など、環境面での問題が顕在化している。

 高価格を理由に一部農家のGM種子離れも伝えられ、中国産ジェネリックに押されたラウンドアップの販売不振や8つの形質を有する掛け合わせトウモロコシSmartStaxの反収への不評などからMonsanto社の利潤も2010年は失速気味だった。開発メーカー群はクロスライセンスなどで開発の迅速化を目指すが、米DuPont社とMonsanto社の干ばつ耐性トウモロコシ開発レースやスイスSyngenta社耐熱性α-アミラーゼ産生トウモロコシに対する11年2月11日USDAフル承認は注目されるものの、インパクトのある新規商品は登場していない。わずかに、米DuPont社とMonsanto社の干ばつ耐性トウモロコシ開発レースや、スイスSyngenta社耐熱性α-アミラーゼ産生トウモロコシが11年2月11日、USDAでフル承認されたことが注目されるのみである。

 10年6月USDAは、米Arbor Gen社の寒冷地での栽培可能な成長速度を速めたGMユーカリ樹の試験栽培を認可した。06年8月に発覚した未承認GMコメLLRice601コンタミ事故を巡る農家やディラーからの損害賠償訴訟で、独Bayer Cropscience社の敗訴が続く。

<カナダ>
 GMナタネの作付け比率は、09年91%、10年93%と続伸している(カナダナタネ業界調べ)。だが、09年9月以来、未承認GMアマニ種子FP967のEU諸国や日本におけるコンタミ発見や、09年11月からの中国と米国のナタネ(黒脚病)・ナタネ粕(サルモネラ菌汚染)輸入規制などの貿易障壁に苦しんだ。尚、カナダアマニ協会は、米Cibus社の協力を得て同社 Rapid Trait Development System ( RTDS)によるグリホサート耐性品種(非GM)の開発を進めている。

 新規GM種子承認に政府による輸出市場分析を必要(GMリスク評価にサイエンスベース以外の要素が加わる)とするC-474法案は、業界などの激しいロビーイングを受け11年2月に廃案となった。一方、GM食品義務表示化問題は依然くすぶり続けている。

 ゲルフ大学のEnviropig (排泄物中のリンを通常の65%以下に押さえる環境に優しいGMブタ)が、11月2月18日カナダ環境省から管理環境下での飼育を認可され環境規制面で大きく前進した。同じく11年2月、ブリティッシュ・コロンビア大学は、頭痛、高血圧を引き起こす赤ワインのアミンを抑制するGMワインイーストを開発したと発表する。10年11月には、加Okanagan Specialty Fruits社の褐色にならないGMリンゴ開発も話題となった。

<メキシコ>
 トウモロコシ発祥地としてGMトウモロコシに対してはナーバスだったが、10年2月、Monsanto社、Dow AgroSciences社、米Pioneer Hi-Bred International社の3社が、農業省の許可証(09年10月発行)に従い、北部メキシコの3州において、ついにGMトウモロコシ予備試験栽培を開始した。11年1月にはMonsanto社からの拡大試験栽培申請を政府が一旦は拒否するが、3月には一転承認しGreenpeaceなどの怒りを買っている。

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