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GMOワールドⅡ|宗谷 敏

どんなコラム?
一般紙が殆ど取り上げない国際情勢を紹介しつつ、単純な善悪二元論では割り切れない遺伝子組 み換え作物・食品の世界を考察していきたい
プロフィール
油糧種子輸入関係の仕事柄、遺伝子組み換え作物・食品の国際動向について情報収集・分析を行っている

2010年4月~2011年3月のラフスケッチ(下)

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2011年5月2日

 1年間のブランクがあるので、各地域、主要国がどうなっているのかを、3回に分けてオーバービューしてきた。最後は、ヨーロッパとアフリカを取り上げる。尚、EUに関しては、11年4月の動きまでカバーしたが、字数の関係から加盟国個々の動向までは記述できなかった。今後、諸国に触れる機会があれば、なるべく遡ってフォローしていきたい。

<EU>

 GM作物栽培規制のレビュー:2010年3月2日欧州委員会は、独BASF社のGMデンプン改変ジャガイモAmfrolaの域内栽培をデフォルト承認し、一部加盟国で栽培が開始される。米Monsanto社のGMトウモロコシMON810系統と、実際には種子販売が見送られた独Bayer社のGMトウモロコシT25以来、実に12年ぶりの栽培認可だ。
 GM作物の承認作業が遅々として進まかったのは、EU承認済みGM作物を栽培禁止としているオーストリア、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、ルクセンブルグの6カ国とGM作物全面禁止のポーランドなどの抵抗による。

 この硬直状態を脱するために、欧州委員会は、各加盟国にGM作物栽培の判断を決めさせる内部戦略ペーパーを5月10日にとりまとめた。域内調和と統一市場を重んじる現行制度では、EU承認済みGM作物を加盟国が通常では栽培禁止にできない。この判断を各国に任せようというのだ。7月13日にはこれに基づく法改正案がDG SANCO (保健・消費者保護総局)から提出された。
 具体的には、EFSA(欧州食品安全機関)のリスク評価を中心とする科学ベースのGM作物栽培一般承認手続きは維持しつつ、加盟各国にGM作物栽培の判断を任せるよう「指令2001/18/EC」(環境放出指令)を改正すると共に03年版共存政策ガイドラインも改訂する。

 この提案はなかなか巧妙に作られている。加盟国のEU承認済みGM作物の栽培拒否や部分的制限の理由として、EFSAが評価済みの健康や環境へのリスクを挙げることは許さない。宗教や哲学による公共の反対や有機農業保護のような社会・経済的事情に限りこれを認めることにより、最大懸念であるWTO規則への抵触を避けようとしている(但し、この妥当性に関しては、まだ議論がある)。
 しかし、ドイツ、イタリア、フランス、スペインのような有力国が、さまざまな理由から留保したため、9月27日のEU農業閣僚理事会及び10月14日のEU環境閣僚理事会において、改正案は合意を得られなかった。また、11月には閣僚理事会の法律顧問からも、国際法との整合性についての疑義が表明された。

 さらにGreenpeaceやAvaazのようなNGOが、リスボン条約によって認められたEU市民の提出議案(ECI)の必要数100万人を超えて、GM作物商業栽培モラトリアムを求める署名を集め、12月9日に欧州委員会に提出した。DG SANCOのJohn Dalli 局長は、「ECIの実行手続きが未決定なので、フライングだ」として一旦はこれを退ける。

 11年4月12日、欧州議会環境委員会において、欧州委員会案に対する投票が行われ、(条件付き)賛成34票、反対10票、棄権16票で可決された。但し、条件として加盟国の栽培制限・拒否の理由に社会・経済学の見地以外にも、農薬耐性、生物多様性保護とGM作物の侵襲性などの環境影響の不確実性から保護する見地が加味された。また、交雑を避けるために、GMと非GMの耕作地の間にEU域内共通の最小緩衝地帯を確立しようとする欧州委員会の提案は却下されたが、加盟国がGM交雑やコンタミを避ける処置をとらなくてはならない(現行の「指令2001/18/EC」ではオプション)ということは合意された。

 08年12月に環境閣僚理事会から求められたGM作物栽培の社会・経済学的局面に関する調査報告を、11年4月15日に欧州委員会は発表した。しかし、EUにおけるGM栽培事例は限られたものであり、議論のたたき台的色彩が強い。
 欧州委員会の法改正構想は大筋合意を得たものの、さまざま修正を迫られ、諸条件を付帯法令とするか、努力目標に留めるかなど、今後も論議と駆け引きが続くだろう。

 未承認GM作物ゼロ・トレランス政策のレビュー:GM作物の食料・飼料への利用・製品販売、輸入への承認作業もまた遅滞している。このため未承認GM作物の混入を一切認めない現行のゼロ・トレランス政策に対し、飼料たんぱく質原料を輸入トウモロコシやダイズ粕に依存するEU畜産業界から強い懸念が表明され、実際に水際での混乱も起きた。
 この問題に対応しようと、10月26日欧州委員会は、EFSAが安全性確認を終えたが以後の承認手順が遅延している未承認GM作物について、飼料利用に限り0.1%の閾値を認める提案をまとめる。
 
 11月15日開催されたSCoFCAH(食物連鎖と動物健康の常任委員会)では、食料利用についても閾値を設けるべきだとの意見も多く、欧州委員会提案は現実的解決として支持された。
 この結果、11年2月22日のSCoFCAH投票においては、大差(賛成19カ国、反対7カ国、棄権1国)をもって欧州委員会提案は可決された。この議決に対して欧州議会は3ヶ月間の検討期間を持つが、逆転される可能性は少なく、GM関連審議としては異例に早い進展ぶりだ。
 EU以外におけるGM作物栽培の増加と、これらに対応するEU自身の承認の遅れが、貿易摩擦を招きゼロ・トレランス政策転換を促した。ゼロ・トレランスは理念であり、法制化して実業の現場において運用するにはムリがあったということだろう。

<アフリカ諸国>

 アフリカにおいては、長らく<南アフリカ共和国>のみがGM作物(トウモロコシ、ダイズ、ワタ)栽培国であったが、2008年に<エジプト>と<ブルキナファソ>が、各々GMトウモロコシとBtワタの導入に踏み切った。4番手に最も近いのは、<ケニア>であろうと目されている。

 一方、02年に国連や米国からの食料援助物資に対して、GMトウモロコシは不要と拒否した<ジンバブエ><ザンビア>に代表されるように、強い警戒感を抱く諸国も多かった。
 その理由は、GM食品は毒物だという初歩的な誤認や生物多様性保持など環境面への不安、米DuPont社や米Monsanto社のような多国籍企業の進出への反発、小規模農家の存続とローカルな種子喪失への心配、GM輸入に厳しい制限を課してきた対EU諸国への輸出が阻害されるという経済要因など理由は様々であり、国によっては環境保護NGOなどの強力な反対運動組織も活発に活動している。(尚、ジンバブエとザンビア両国は、食糧安全保障の観点から、最近GM作物に対しかなり軟化してきている)。

 アフリカ諸国にとって、GM作物を導入するための必要条件は、バイオセーフティに関する国内法の整備である。これは、規制と商業栽培を許すという二面性を併せ持つのだが、この課題に密接に絡んできたのが、<エチオピア>などのリードにより00年に国連で採択され、03年に発効した<生物多様性条約カルタへナ議定書(バイオセーフティ議定書)>である。
 本議定書では、最後まで紛糾していた「損害と賠償」条項が、10年10月名古屋で開催された第5回締約国会議(MOP5)においてようやく決着し、「名古屋・クアラルンプール補足議定書」の採択に至ったことは周知の通りだ。

 殆どの途上国にとって自国の環境(当然ながら固有のものである)に合わせて合理的なバイオセーフティ法案を準備することはハードルの高い作業であり、統一性のない規制は国家間の貿易障害となりうる。このため、各国の規制が科学ベースで調和したものとなるよう<東南部アフリカ市場共同体>(COMESA:The Common Market for Eastern and Southern Africa)は、バイオセーフティ法案のガイドラインを提供している。

 ブルキナファソに本部を置く<ABNE(The African Biosafety Network of Expertise)>によれば、<マラウイ>、<モーリシャス>、<南アフリカ><ジンバブエ>は、バイオセーフティ法を制定しており、法案フレームワークを持つ国は20カ国以上あるという。但し、不完全なものも多いようだ。

 3栽培国を除き、GM作物の研究・各段階での試用を行っている国々は、<ケニア>(トウモロコシ、サツマイモ、キャッサバとワタ)、<タンザニア>(ワタ、トウモロコシ)などがあり、他にも<ウガンダ>、<マラウイ>、<マリ>、<ジンバブエ>、<ナイジェリア><ガーナ>が、トウモロコシ、コメ、コムギ、キャッサバ、バナナ、ソルガムとワタなどに取り組んでいる。

 これらのうちで、メディアへの露出度が高いのは、ウガンダのGMバナナ開発と、ナイジェリア及びケニアで進められているバイオキャッサバ プラスプロジェクトだ。GMバナナには、菌性の病気に対する抵抗性とベータカロチンや鉄分の栄養改善という2方向がある。GMキャッサバは、ベータカロチン、鉄分とタンパク質含量を上げることを目的としており、米Bill and Melinda Gates Foundation(ゲイツ財団)からの補助金も受けている。

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