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GMOワールドⅡ|宗谷 敏

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一般紙が殆ど取り上げない国際情勢を紹介しつつ、単純な善悪二元論では割り切れない遺伝子組 み換え作物・食品の世界を考察していきたい
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油糧種子輸入関係の仕事柄、遺伝子組み換え作物・食品の国際動向について情報収集・分析を行っている

EUの未承認GMOゼロ・トレランス政策は終焉か?

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2011年6月27日

 2011年6月24日、欧州委員会はEU域内に輸入される家畜飼料・原料について、EU未承認GMO(遺伝子組み換え作物)の微量混入を、閾値0.1%まで認めると決定した。EUは、従来から未承認GMOの混入を一切認めておらず(ゼロ・トレランス政策)、このことは世界の穀物貿易とEU域内飼料・畜産業界に少なからず影響を与えてきた。今回は、この画期的な政治判断の実態と裏事情を探る。

TITLE: EU allows unapproved GM material in feed imports
SOURCE: Reuters
DATE: 24 Jun, 2011

なぜ飼料だけなのか?

 EU畜産業界は、飼料たんぱく質原料として年間4,500万トンのダイズ・ダイズ製品及び年間400万トンのトウモロコシ製品を、南米や米国から輸入し消費している。
国や地域における「承認の非同期性」(AA:Asynchronous Approval)に起因する未承認GMOの「微量混入」(LLP:Low-Level Presence)を巡っては、EU水際での混乱が既に起きており、輸入・飼料・畜産業界からは強い懸念が表明されてきた。

 欧州委員会の提案は、11年2月22日のSCoFCAH(食物連鎖と動物健康の常任委員会)で大差(賛成19カ国、反対7カ国、棄権1国)をもって可決され、3カ月間の欧州議会検討期間にも特に異議は出なかった。
 食品にも、同様の閾値を設けないのはダブル・スタンダードだという非難もあり、EU各国政府からも食品にもという意見は多かったが、今回見送られたのは輸入依存度の相違と、反対勢力の過剰反応を避けるためだろう。

対象となる未承認GMOは?

 以下の3種類にカテゴライズされており、追って欧州委員会から具体的なリストが公表される模様だ。
(1)輸出相手国などでの安全性承認が済んでおり、かつEUに対する承認手続きが申請されてから、3カ月以上を経過しているもの。
(2)EUが承認し、現時点でも安全性評価自体は有効だが、もはや輸出国で栽培されなくなったために、EUの承認有効期間(通常10年間)が終了しているにもかかわらず更新の申請がなされていないもの(例として、トウモロコシのBt176 や GA21xMON810、ナタネのMs1xRf1 、 Ms1xRf2 と Topas 19/2など)。
(3)新製品などへのリプレースにより輸出国における栽培が段階的に減らされており、EU安全性承認の更新が行われないが、まだ市場には残存する可能性があるもの。

どうして閾値は0.1%で、承認申請後3カ月以上なのか?

 これらは管理のための検知法の関係である。0.1%は、EU-Reference Laboratory (EU RL) が、定量分析のためにの認めている管理基準値なのだ。例えば日本ではアフラトキシンは「検出されてはならない」が建前だが、それでは米国産トウモロコシの輸入に支障を来し、畜産業界が立ちゆかない怖れがある。
 そのため、10ppb(0.01ppm)の管理基準が設定されており、これは管理基準を定めた当時の検出限界が準用された。
 EUの未承認GMOに対する閾値0.1%も、管理上の検出限界(MRPL:Minimum Required Performance Limits)の準用であり、例えば民間からの摘発検査を受けた公的検査機関による検査結果の再現性が、これによって担保されている。

 また、EU域内の調和を重んじる観点からは、当然ながら標準的な統一検査法や標準品も必要となる。ここで申請3カ月後が意味を持つのだ。
EUへのGMO申請手続きには当該GMOの検知法の記載が義務づけられている。3カ月は、EUがこの検査法のバリデーションを行ったり、標準品を揃えたりする管理のための準備期間である。
 こういう非常に細かいところまで、理詰めに実に良く考えられている(時には「智に働きすぎて」鼻白むのだが)のがEUの規制である。

これはEU未承認GMOゼロ・トレランス政策の終焉なのか?

 これを、「EUによる未承認GMOゼロ・トレランス政策の終焉である」と見る、あるいは見たがるのは、米国やGM推進派と、規制緩和だと怒る反対派だろう。
 しかし、欧州委員会自身の立場やEUの専門家筋の見解は、まったくこれらと異なるものだ。つまり、「 EU未承認GMOゼロ・トレランス政策は継続しており、今回は単にその具体的な実行管理手段を定めたにすぎない」。推進派や反対派は、これを屁理屈と見なすだろうけれど。

 なるほど。筆者は、EUの未承認GMOゼロ・トレランスは理念だと以前書いたが、それを法律に落とし込み、実行管理していくためには検知法や閾値は必須のものだった。
 そして、理念だけで現実的経済活動の貿易が規制されては、たまったものではない。それが今までのEUのステータスであった。
 したがって、未承認GMOゼロ・トレランス政策は継続されていても、また、要求水準がかなり厳しいものではあっても、対応する努力を可能なものとする一定の現実的な管理規則が誕生したことは、穀物貿易上の立場からはやはり歓迎すべきことだろう。

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