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GMOワールドⅡ|宗谷 敏

どんなコラム?
一般紙が殆ど取り上げない国際情勢を紹介しつつ、単純な善悪二元論では割り切れない遺伝子組 み換え作物・食品の世界を考察していきたい
プロフィール
油糧種子輸入関係の仕事柄、遺伝子組み換え作物・食品の国際動向について情報収集・分析を行っている

日本のGM食品反対派こそGMパパイヤを買うべき理由

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2012年2月6日

 2011年12月1日の規制クリヤーを受けて、12月中旬から会員制量販型スーパーのコストコ・ジャパン(米国資本)の10店舗が、米国ハワイ産GM(遺伝子組み換え)パパイヤの販売を開始した。

 米国側の報道としては、これまではハワイ州で、数々の苦難克服ストーリー(1996年に1500万ドルあった対日輸出が、2010年に100万ドルまで下落。2010年推定生産量7,671トンのうち対日輸出量は849トン)として取り上げられてきた。しかし、2012年2月3日の「Voice of America」 は一味違ってなかなか面白いので、今回はこれを読んでみる。

遺伝子組み換えされたパパイヤが日本の店頭に並びます
すべての遺伝子組換え食品に表示すべきかどうかの論争が続きます

 「レインボー」パパイヤが最近日本で売り出されました。それらは、GMOs(遺伝子組換え生物)に関する厳しい法規制を持つ日本で販売される唯一の遺伝子組換え果実です。
 その法律には、GMOsであると表示する必要条件-米国には存在しない規則-が含まれます。
 時あたかも、米国の提唱者たちが政府にすべての GMO食品に義務表示を要求する圧力を強めている今、パパイヤが日本へ到着します。

ワクチンのように働く

 レインボーパパイヤは1998年に(米国で)商業販売が開始されました。その開発に手を貸した米国農務省の科学者Dennis Gonsalvesは、最良のセールスマンかもしれません。

米国農務省太平洋農業研究センター(PBARC)

 「私には偏見がありますが、お話ししましょう」とGonsalvesは言います。「このハワイ産パパイヤは世界一です。皆さんはハワイへ行って、それを味わいます。」

 しかし味覚は、Gonsalvesたちがそれを開発した理由ではありません。1990年代にあるウイルスがハワイのパパイヤ果樹園を荒廃させ、産業は崩壊寸前にまで追い込まれました。

 そこでGonsalvesは、植物の免疫機構を発現させるよう、パパイヤの遺伝子構造を組み換えました。「それはワクチンのように働きます」と、彼が言います。

 ワクチン接種された人々と同様、遺伝子組換えされた植物はウイルスにより病気になりません。ヒトの胃の厳しい環境下では3秒で破壊されるという試験結果から、ウイルスはヒトには無害であろうと、Gonsalvesは述べます。
 「そして、事実上、それはハワイのパパイヤ産業を救いました。今や、レインボーパパイヤがハワイのパパイヤの80%を占めます。」

表示論争

 しかし、Gonsalvesによれば、ウイルスとの戦いは、たった2分の1でした。彼らは、最大の顧客-日本-にこの果物は食べても安全であると確信させなければなりませんでした。

 日本の規制当局が納得するまでに、10年間以上の試練がありました。最後の障害は、表示でした。

 日本はすべて GMOs に表示を要求します。それは、EUや他の多くの国と同じ法律に基づきますが、米国には法律がありません。

 「Just Label It」と呼ばれるキャンペーンが、それを変えようとします。

すべてのアメリカ人が GMOs が安全であると確信しているわけではありません

 「人々がこのシステムに参加すべきかどうか、知る権利に値し、必要とし、そして持つべきなのか、私たちがこれらの極めて非常に新しい農作物の影響に関するデータを集めているうちに、論争が紛糾してきました」

 オーガニック・ヨーグルトの大手企業Stonyfield Farm社のCEOであり、キャンペーンの後援者であるGary Hirshbergが言います。

 彼らは、90%以上の人々が、GMOs を含む食品が表示されるべきであると言っていることを示す世論調査を引用します。

 しかしながら、それらの数字は多くを意味しません、と(米国シンクタンクの)情報技術・イノベーション財団の Val Giddingsが言います。

 「それが何を意味するのか、どのように使うかを分かっていようがいまいが、人々は常により多くの情報を選びます。」とGiddingsは言います、

 Giddingsは30年間 GMO 政策に取り組んできました。彼は、表示が必要とされるEUにおいて、GMOs を避けると言っている消費者でさえGMO 成分表示された食品を買うことを示すEUの研究を指摘します。

 表示支持者たちが、当局が遺伝子組み換え食品の安全性について懸念を抱いていると消費者に思わせるようにミスリードしようとしていると、Giddingsは言います。

 彼は、当局はそうしないと言います。

 「先入観を持たずに、これを調べたあらゆる権威的なグループが、バイオテクノロジーを通して改善された農作物は、少なくともそれらの従来からの対照物と同程度には安全であると結論しました。」

 重要性や地位が一流の米国、EUと国際的な科学諮問グループは今日市場にあるGMOs作物が健康あるいは環境にリスクにならないということに同意しています。

 しかし、同じく彼らは、市場に出た後、これらの農作物をモニターすることは適当であるかもしれないと述べています。それは容易なことではないでしょうが、表示が役立つでしょう。

市場テスト

 レインボーパパイヤは、GMO であるという表示付きで、数週間前に日本で売り出されました。Gonsalvesは、彼の果物が遺伝子組換え食品について延々として続く質問に答えるのに役立つことを希望します。

 「今、多くの推測に代わるべきものがあります。『うわっ、やっべ、こんなもん好きじゃないから、誰も食べねーよ』。それらは、すべて推測です。テストケースがありませんでしたが、今や試験台があります。」と、彼が言います。

 Gonsalvesは、それを市場への挑戦の「スーパーボウル」と呼びます:まだ広く存在する遺伝子工学技術に対して懐疑的な人々に、 GMO表示された美しく、おいしいパパイヤを楽しんでもらうための。(抄訳終わり)

 先ず、断るまでもなく「Voice of America」(VOA)は、米国の国営メディアである。それが、GMパパイヤを枕にGM食品表示について、両論併記ながらここまで踏み込んでいるのは、注目すべき現象だろう。

 米国のGM食品表示論争がにわかに盛り上がったのは、2010年9月に遡る。FDA(米国食品医薬局)が、米AquaBounty Technologies社の成長の早いGMサケは安全と結論し、商業化認可の検討を始めたという問題が引き金になり、パンドラの箱が開いた。

 FDAに反対するベクトルは、GMサケそのものの商業化に反対する声と、表示を要求する方向に大別され、議会から草の根NGOまでを巻き込む大論争に発展していく(FDAは、今日まで結論を出せないまま)。

 米国下院では、オハイオ州選出のDennis Kucinich議員から表示を含むGM規制強化法案が議員立法され(但し、Kucinich議員は今までも恒常的に議員立法を試みては議会委員会レベルで潰されている)、ワシントン州議会などでもGM食品表示法案が検討されており、一部コムギ農家も表示を支持しているらしい。

 また、もともと反GMOの風土色が濃いカリフォルニア州では、GMサケ表示法案は州議会で否決されたものの、GM食品表示を州民投票に持ち込むべくイニシャティブが展開中である。

 市民レベルでは、2010年9月に、the Center for Food Safetyが、GM食品表示を求める請願をFDAに提出し、2011年10月には、IFOAMなどによって組織されたGM食品表示と知る権利を求めるRight to Knowグループが、ニューヨークからワシントンD.C.(ホワイトハウス)まで行進した。

 そして、これらの派生的市民運動を束ねて中心を成すのが、 VOAも触れている「Just Label It」キャンペーンだが、米国政府は依然動きそうにない。という背景で、出てきたのがVOA記事だ。

 記事中では中立的立場を与えられているGonsalves氏の最後のコメントに従うなら、もし日本で表示に影響されずにGMパパイヤが売れれば、表示反対論のGiddings氏が記事で代弁している「GM食品表示は消費者をミスリードするからダメだ」という米国政府の懸念は、論拠が崩壊することになりかねない。

 故に、GMOsはこの世の中から抹殺すべきだというラジカルな方を除いて、日本のGM食品反対派はTPPで日本のGM食品表示に圧力がかかるなどとボヤいてないで、米国政府にGM食品表示を実現させるために、せっせっとGMパパイヤを買う攻めの姿勢を示すべきだ、ということにならないだろうか。

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