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GMOワールドⅡ|宗谷 敏

どんなコラム?
一般紙が殆ど取り上げない国際情勢を紹介しつつ、単純な善悪二元論では割り切れない遺伝子組 み換え作物・食品の世界を考察していきたい
プロフィール
油糧種子輸入関係の仕事柄、遺伝子組み換え作物・食品の国際動向について情報収集・分析を行っている

英国スーパーの転向~非GM飼料が入手できない?

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2013年4月29日

 2013年4月11日、英国において売上高トップのスーパーストアであるTescoは、購買客宛にお断りとそれに関するQ&Aをリリース した。自社が販売する鶏肉と鶏卵は、非GM(遺伝子組み換え)飼料により飼育された養鶏由来の製品だという保証を、今後は撤回するという内容である。

 なぜそのような事態になったのかは、次のように説明されている。

 鶏肉と卵の弊社への供給元が使う飼料が、完全にGMフリーであることを保証することが困難になってきました。その二つの理由として、まず飼料の最良のタンパク源であるダイズの生産者がGMダイズの採用を増やしており、すでに世界のダイズの80%がGMであるという世界的な供給問題があります。

 次に、そのように多くのGMダイズが栽培され、収穫され、処理され、輸送されるので、非GMダイズへのGMダイズの低レベルの混入が起こりうる状況にあり、弊社の各流通ポイントにおける検査でも、それが発見される回数が増えています。

 弊社が販売する製品自体は、飼料の差異に左右されず今後も同じものです。英国食品基準庁(FSA)によれば、GMダイズ由来のGM DNAは、卵や乳のような動物製品には存在せず、GMは飼料に使われた作物に影響を与えるだけなのは明白です。同じくGM飼料を食べた動物からの肉を食べることにより健康危害が起きることは絶対あり得ないことも、FSAによって明白です。

 家禽飼料についての非GM政策が持続不可能であると断じたスーパーは弊社だけではありません。Asdaと Morrisonsは、すでに家禽製品へのGM飼料を許しています。食品販売業者として最も重要なことは販売する食品の安全性ですが、この変更は食品やその味の品質と安全性にいかなる影響も与えないでしょう。

 弊社の供給元が弊社ブランド製品に使う飼料は、もはやGMフリーの保証を持ちえませんが、弊社は1つの明確な例外を作ります:弊社のオーガニックミートは、非GM飼料で飼養させられ続けます。つまり、顧客の皆様がお望みなら、GM飼料を与えられなかった鶏肉と家禽生産品を購入することが依然として可能です。

 弊社はGM飼料に対するポジションに関する若干の追加情報を(Q&Aで)開示しました。また、FSAのウェブサイトはGMについての興味深いかもしれない情報があります。もしGMに対する弊社の見解に関する質問やご意見があるなら、顧客サービス窓口に電子メールでお問い合わせください。(Tescoのリリース要約おわり)

 事前に談合があったと考える方が自然だろうが、Tescoのこのリリースから日を置かず、Sainsbury’s、Marks and Spencer並びにCo-opなどの有力スーパーストア群が、Tescoにフォローし、非GM飼料の継続を謳い続けるのはWaitroseのみとなった。

 尚少し古い統計だが英国スーパーの売上高順位は、Tesco、Asda、Sainsbury’s、Safewayと統合されたMorisons 、Somerfield。次いでMarks & Spencer、Waitroseと言われている。

 ここに至る経緯は、過去の報道を辿る必要がある。先ず2013年1月13日付のTelegraph紙 。「英国は年間110億個の卵を消費するが、大手スーパーにおける卵パックの販売価格がここ1年で平均40%も値上がりした。世界的な不作により飼料用トウモロコシとダイズは若干値上がりしたが、非GMダイズの価格は輪をかけて高騰し、これを売り物にする一部ブランドが値上がりしたためだ。非GM飼料原料を調達していくことは、今後ますます困難になると予想されている。」

 次いで、2013年2月13日付のDaily Mail 。「英国の殆どのスーパーは鶏卵を生む雌鶏に遺伝子組換えされたダイズやトウモロコシを与えることを禁止しているが、英国農民連盟(NFU)、英国卵業界評議会(BEIC)、英国家禽類協議会(BPC)などが、非GM飼料は高価すぎるとして、英国小売業協会(BRC)に禁止を撤回するよう求めた。すでに、Asdaと Morrisonsは、農民の圧力に屈して非GM飼料への固執を打ち切った。」

 また、GM飼料の安全性に関する飼養試験は、世界中でいろいろ行われているが、英国では2012年7月19日のThe Poultry Site News紙 が伝えているNottingham大学の包括的研究が目を引く。「Nottingham大学が行った計24の研究によれば、トウモロコシ、ジャガイモ、ダイズ、コメ、ライムギなどのGM作物を90日から2年間の長期にわたり給餌した動物は、非GM飼料を与えた対照群との比較で、健康危害を示さず、標準偏差内の統計的有意差を除きパラメータに有意差が認められなかった。」

 これらの英国スーパー群による非GM飼料使用の方針撤回に対して、非GMダイズを英国に供給してきたブラジルの輸出業界が猛反発 したと2013年4月19日付Food Navigator紙などが伝えている。非GM飼料用ダイズの供給がタイトなのはダイズの生産量急増に対する輸出港のキャパや配船の不足が主因で一時的なものであり、誤報に基づく決定だという主張だ。

 しかし、非GMダイズの供給に限らず、ブラジルのダイズ生産拡大にインフラが追いついていない根本的問題については、2013年3月3日のFarmers Weekly紙 が詳細に論じており、港湾キャパや配船不足といった単純な出口だけの話ではなさそうだ。

 また、食糧危機対策を真面目に考える英国政府によるGM支持政策が、今回のスーパーの方針転向に影響を与えて具現化の一つとなっていることは間違いないだろう。これに危機感を抱いたオーガニック農業の牙城であるthe Soil Association(土壌協会)も、政策担当理事Peter Melchettが2013年4月25日に急遽コメントを出して批判を展開している。現在EUでは表示を免じられている畜産品にもGM表示させるべきだなどという主張には、押し込まれた焦りが出ているように感じられる。

 さて、ここまで読んでこられて、どこかで聞いたことがあるような話だと思いませんか?2011年4月9日のFoocom 松永和紀編集長の視点をご覧下さい。もちろん非GMビジネスを展開するのは自由なのですが、力が入るあまり非科学的、あるいは科学界に正統な主張とは認められていない試験結果などを援用してGM作物や食品の安全性を貶めて、消費者不安を煽る手法は、いつか赤恥を掻くのではと老婆心ながら筆者は懸念する今日この頃、なのです。

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