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GMOワールドⅡ|宗谷 敏

どんなコラム?
一般紙が殆ど取り上げない国際情勢を紹介しつつ、単純な善悪二元論では割り切れない遺伝子組 み換え作物・食品の世界を考察していきたい
プロフィール
油糧種子輸入関係の仕事柄、遺伝子組み換え作物・食品の国際動向について情報収集・分析を行っている

世に怪談の種は尽きまじ~遺伝子組換えトウモロコシの健康リスク(上)

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2013年8月19日

 2013年7月24日、米国版Elle誌の「髪と美容」コーナーは、様々な体調不良に悩んでいた米国人女性が、アレルギー専門医師の助言に従って自身の食生活からGM(遺伝子組換え)トウモロコシを完全排除したら、ウソのように完治したという長文の手記を掲載 した。

 Elle誌は、女性ファッション誌として1945年フランスで創刊され、現在では60カ国以上で43の版が刊行されている世界最大級(日本版の発行部数約10万)の女性向けライフスタイルマガジンである。「悪い種子:遺伝子組換えトウモロコシの健康リスク」と題された手記を書いたのは、メイン州ポートランド在住でライターと舞台演出家を仕事とする主婦Caitlin Shetterly女史37歳。

 当初Shetterlyがその存在さえも意識していなかったGMトウモロコシは、1990年代中半から登場し今やトウモロコシの88%近くを占める。「GMトウモロコシにはアレルギーがあるかもしれない、被害者は自分だけではないに違いない」と結論したShetterlyは、彼女の主張を確認するために見解を求めて専門家を訪ね歩く。ここが単なる「個人の感想です」から一歩踏み込んでいると、どうやらElle誌は鼻高々らしいのだが。

<Elle誌「悪い種子:遺伝子組換えトウモロコシの健康リスク」の概要>

 私(Shetterly)は、4年前から吐き気、頭痛や疲労、手のこわばり等に起因する不眠症に悩まされてきました。手当たり次第に医者を訪ねましたが原因を特定出来ず、処方として抗うつ剤、鎮静剤、食事療法(グルテン、ナッツ、乳製品、ダイズ、ナスなど主要なアレルゲンを8カ月間除去)、ハーブ系サプリメント、ヨード錠剤、ステロイド注射、ホルモン治療、中国茶、鍼灸治療、エネルギーヒーリング、瞑想クラス、ライム病治療などを試みましたが、全く効果がありませんでした。

 かかりつけ家庭医のChuck de Sieyes先生の薦めにより、経験豊富な地元のアレルギー専門医Paris Mansmann先生を私が始めて訪ねたのは2011年2月でした。カウンセリングと問診の後、「あなたはGMトウモロコシへの反応を発症した可能性があります」とMansmannは指摘しました。GMトウモロコシ?誰もが聞いたことはありますが、実際にそれが何なのか私は知りませんでした。

 GMトウモロコシが発現するタンパク質が、白血球の一種である好酸球(eosinophil)の生産過剰を引き起こし、その結果として多全的な健康障害を招くアレルゲンとして働くとMansmannは信じており、採取した私の鼻粘液がエオシン好性(eosinophils)のピンク色になった細胞に満ちていることを顕微鏡で示しました。

 免疫機構が適切に機能していれば、好酸球は侵入有害物質を排除するために働きますが、時にはアレルギーを起こすタンパク質が免疫機構を刺激し、好酸球の過剰を引き起こすかもしれません。それらは留まるところを知らず、最終的に血流に残留して、 GI 管、食道、粘膜、肺、 筋膜組織と皮膚に潜入して、それらにダメージを与えるかもしれません-そのため、なだれ的に症状が起きます。

 私は、医学とバイオテクノロジーの世界にGM食品が健康上の問題になるのかという議論があることを知り、一方では議論の余地なくアレルギーや1型糖尿病、狼瘡、セリアック病など自己免疫障害の発生率が実際に増加していることに気がつきました。アレルギーについては、国民健康調査(NHIS)によると、1999年から食物アレルギーを持つ子供たちの数が50%、皮膚アレルギーを持つ人は69%も急増しています。

 しかし、アレルギーを起こす好酸球性疾患は、これらのデータに数えられていません。この分野におけるパイオニアであるシンシナティ医科大学教授で付属する好酸球性疾患センター所長であるMarc Rothenberg博士によれば、好酸球性疾患は約20年前に始めて識別されました。

 「アレルギーと自己免疫疾患の真只中に私たちはいます」とRothenbergは電話で私に言いました。「そして環境はブラックボックスです」。Mansmann医師 の GMO 理論については「実に面白い」と彼は続けましたが、「従来医療では誰もデータを持っていないでしょう」と素早く付け加えました。

 2011年に戻って、Mansmannからの助言は、体内から好酸球過剰サイクルを取り去るために2~4カ月にわたり、食生活からGMトウモロコシの混入する可能性がある全てのトウモロコシ(有機認証品さえも含めて)を取り去ることでした。

 例えば「キサンタンガム」、「自然の味」、「固結防止剤」、「ビタミンE」、「アスコルビン酸」、「クエン酸」と「セルロース」など多数の偽名の陰に隠されたトウモロコシを全て捨て去ることは、現実的にかなり難しいことも分かりました。しかし、藁にもすがる思いだった私は、この忠告に従いました。

 Mansmannは、野菜、トウモロコシ以外の穀物、牧草肥育された牛肉と乳製品、天然魚、狩猟肉に私の食事を制限しました。私と主人は自家製パン作りをはじめ、既成の食品を避けて地元産の食材を中心に、喜々としてそれに従いました。そして、皮膚湿疹が消えたことを皮切りに、4カ月後の5月下旬になると私の症状の全てが快癒し、私は快眠を取り戻しジョギングさえ楽しめるようになったのです。

 GMトウモロコシは、本当に私にとって問題だったのでしょうか?
 この祝福すべき状態は、本当に長続きするのでしょうか?
 私は放ってはおけず、より多くを知るべきだと考えました。

 私は、Rothenbergとブラックボックスを解明しようと努力している彼のチームを訪問することに決め、シンシナティに行きました。次の2日間で、あなたはGMOs の安全性に関する世界的な討論の縮図を表わす人々に合うでしょう、とRothenbergは言いました。

 最初に会ったのは、シンシナティ医科大学助教授で臨床医のKarl von Tiehlでした。GI 管と食道が好酸球過剰によって重度に損傷を受けていた患者に、タンパクを含まないアミノ酸、単糖と少量の脂質の医療食を与えることによって、症状の95%が消えるのをチームは見出したと彼は言いました。

 Von Tiehlは、GM作物が原因かどうかは知りませんでしたが、「ある医師があなたに食べるように決めたものは、あなたのおばあさんがあなたに良いと言った食べ物よりむしろあなたのために良い」と言います。

 彼の同僚であるAmal Assa’ad教授は、GMOs の安全性懸念を一蹴しました。「人工的だという理由から化学物質を恐れるのは間違いです、多くの化学物質が、薬物療法で私たちを助けました」。どちらかと言えば、 GM食品は人類にとって恩恵でした、とAssa’adは言います。

 彼女は連邦政府のポジションに共鳴します。規制官庁の政策に従うとすれば-1つの種の遺伝子をもう1つのそれに挿入することは、本質的に危険はなく、最終製品は通常の種子から生産されたものと実質的に同一です。

 これは、おそらく言うまでもなくバイオテクノロジー産業の姿勢と同じです。「GM作物は、従来の対応物と同じぐらい安全であるという膨大な量の証拠を示す数百の研究があります」と、Monsanto社のThomas Helscher報道官は言います。

 新しいGMOは、USDAのガイドラインに従い隔離圃場試験を実施し、さらに栄養成分に「統計的有意差」があるかどうか、既知のアレルゲンのデータベースに含まれているか否かにかかわらず、新しいタンパク質が導入されるかどうか決定して、GM作物を生物学的に比較した文書をバイテク企業は要求されます。もし、不具合があればそのGM作物は市場に行きません。

 より深く追求しなければ、このプロセスは素晴らしく聞こえます、と批判者が言います。

 一つは、主要バイオテクノロジー企業6社が資金供給しているネブラスカ大学リンカーン校(UNL)が編纂したアレルゲンデータベースの客観性です。確かにGMO タンパク質はリストにありませんが、それは「十分な証拠」が欠如しているからです、とMonsanto社の前社員でUNL研究教授のRichard Goodman博士は言います。

 既存のGM食品のアレルギーを起こす可能性に関して比較される既存のデータの多くは周知のアレルゲン-ピーナッツや牛乳-なので、GMOs が未発見のアレルゲンを含むかもしれないと思うMansmann のような人々にとっての有用性を制限する、と彼は付言しました。

 (もし、ヒトへの臨床試験が行われたら何を示すと思いますか? 答えは次の通りです:それらは実在しません、なぜなら、バイテク企業がそれらは実際的ではないと言います。 GM食品は基本的に安全であると見なされ、新薬のような精査のレベルを経験しません)

 GM食物の健康リスクを心配する人たちからの最も基本的な苦情は、研究が独立していないということです;バイテク企業が指揮し、資金提供した研究が政府に提出されます。彼らは、常にどの研究を提出するかを取捨選択します。

 「スキャンダルは、否定的な試験の結果を出すことをUSDAが企業に強いないということです」と、テネシー大学農業政策分析センターの研究助教授Harwood Schaffer博士が言います。「私たちは薬でこれを見ました:私たちはただ[産業]が見ることを望むデータを受けとるだけなのです」

 Schafferは、バイテク企業がそれらの研究を専有であると考えることも指摘します、公衆が調査すべき記録がありません: 「おそらくGM企業は何も隠していません、しかし、質問は次のことです:公衆は知る権利を持っていますか?」

 シンシナティでの私の終点の1つが、興味深いことに、数少ない独立して資金を供給されたGM食品研究の1つの代表執筆者であったオーストラリア生まれの免疫学者Simon Hogan博士のオフィスでした。

 2000年代初期に、Hoganは、オーストラリアでGMエンドウマメが開発されていたことに興味を抱き、調査することに決めました。「私は、 GMOs が動物(もしかしたらヒト)に影響があるかどうかについて、基本的な知識不足があると感じました」

 結果に彼は驚きました: GMエンドウマメを与えられたマウスが、「粘液超分泌作用」、「肺のエオシン好性」と気道の反応亢進のような炎症反応を起こしました。研究が2005年にthe Journal of Agricultural and Food Chemistryに発表(訳者注:他に2005.11.21. New Scientist 誌も参照)されるや、賛・否に関するマスコミ報道の大洪水が起きました。この騒動の中、エンドウマメプロジェクトは突然に中止されました。

 しかし8年後に、EUが資金提供した別のチームが GMエンドウマメと従来のエンドウマメの両方でマウスがタンパク質に反応することを示す(Hoganらの研究とは)矛盾した報告を発表(訳者注:2013.1.10. Plos One)しました。

 (Hoganの非常に慎重な回答? 良い科学が、結論に到達できる前に、多数の研究を必要とします。)

 たいていの人々がGMトウモロコシに耐えると思われますが、人口の少数を病気にしていることはありうると思うかと、私はHoganに尋ねました。「その質問に答えるために決定的な分析がなされたと私は思いません、なぜならこれらの[ GMO ]タンパク質が、私たちがもっと多くを知るまで、「中止しろ」と言うために十分には、何をなしえたのか結局のところ分かりませんから」

 GM食品の浸透と広範囲にわたる受容レベルから、米国(ヨーロッパや禁止されている多くの国と比較して)で、「中止しろ」と言うことは、現時点ではありそうもないと思われます。しかしながら、このようなプロダクトに表示をしようとする雰囲気は確かにあります。

 コネチカット州議会は6月にGM食品表示法案を通過させました。2011年の MSNBC 世論調査によれば、人々の96%が GMO 表示を好みます。Whole Foods Marketは、2018年までに米国とカナダで販売する食品すべてにGMO表示をすると、この3月に発表しました。

 私はスローダウンして、私の食物について考えなければなりませんでした-それがどのように栽培され、その中に何があるか、そして種子から私の食卓までどのようなトレードオフがなされたのか。 その意識は、単に私の健康より大きな何らかの価値を持つべきです。

 Shetterly女史の手記は、7月29日に著者近影付きでDaily Mail紙がカバーしたことにより、Elle誌の読者層を超えて世間に流布されることになる。次回から、Elle誌とShetterly女史に対する反論を整理してみたい。

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