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知っておきたい食肉の話|近田 康二

どんなコラム?
世の中は空前の肉ブーム。でも生産や流通の現場はあまり知られていません。食肉一筋の畜産ライタ―が、お肉のイロハを伝えます
プロフィール
食肉加工メーカー、養豚企業勤務、食肉・畜産関連の月刊誌等の記者を経て、現在はフリーの畜産ライター。

エコフィードとブランド肉

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2019年3月25日

食品ロスを減らすための基本政策を盛り込んだ「食品ロス削減推進法案」が、今国会で成立する見通しになった。食品ロスを国民運動として取り組むことを明記し、国や地方自治体、事業者の責務を明確にするという。

食品の廃棄を減らすことはもちろん、どうリサイクルしていくのかも課題だ。廃棄した食品残渣のエサを活用する「エコフィード」の取組みはどうなっているのか。食料輸入大国の日本にとってはもっともな要請で、せめて売れ残った恵方巻は家畜のエサにすればよいのにと考えるむきも多いと思う。こうした食品残渣のエサへの活用はどのようになっているのだろうか。

●エコフィード給与の食肉が続々登場

「エコの森 笑子豚(エコブー)」「ひょうご雪姫ポーク」「紅酔豚(くれないすいとん)」「むさし麦豚」「バームクーヘン豚」「オリーブ牛」「甲州ワインビーフ」・・・・・・。こんなネーミングの豚肉や牛肉を耳にしたことがある読者もいると思う。
これらはすべて食品の製造過程で発生する副産物や加工くず、食品として製造されたものの利用されなかった余剰食品、賞味期限切れ食品などを原料にして加工処理された「エコフィード」と呼ばれる飼料を給与して生産された高品質・おいしさをアピールするブランド肉である。

エコフィード(ecofeed)とは、“環境にやさしい(ecological)”や“節約する(economical)”を意味する“エコ(eco)”と“飼料”を意味する“フィード(feed)”を併せた造語だ。食品循環資源を原料にして加工処理されたリサイクル飼料と同義であり、かつては(昭和40年代までは)こうしたエサで豚を飼うことを「残飯養豚」と呼ばれ、それが当たり前の時代であった。実は、いま国ではこうした食品残渣の飼料利用を推進しているのだ。

かつては「生臭く軟脂のあまりおいしくない肉」のイメージがつきまとったが、近年では飼料化技術の進展や飼養管理技術の向上により配合飼料と同じように栄養成分をコントロールした豚肉生産が可能になっている。さらに、先に挙げたような積極的に高品質・おいしさをアピールしたブランド肉が登場してきた。

●エコフィード推進の背景

国がエコフィードを推進していることには、いくつかの背景がある。わが国の畜産業における飼料費は経営コストの約3~6割(畜種により異なる)を占めているが、飼料原料の約7割を輸入に依存しているのが現状。飼料自給率を平成37年度までに40%(現状26%)に引き上げる計画である。

こうした動きと併せて、平成19年の食品リサイクル法(制定は平成13年)の改正により国の政策としても食品廃棄物を飼料化することが最優先することとなったこと。また、BSE(牛海綿状脳症)の発生を受けて平成13年に飼料安全法が改正され、動物性タンパク質の飼料利用が制限されたが、食品残さの飼料化については「循環型社会の実現」という公益の推進に特に寄与するものとして、豚・鶏には給与することも認められた。

その後、牛やめん羊などの反すう動物に給与しても良い飼料を「A飼料」、それ以外の飼料を「B飼料」とし、飼料の製造、輸入、流通、保管、給与などの各段階で動物性たん白質およびB飼料がA飼料に混入することがないように、各事業者が守らなければならない管理の基本的な指針が定められた。家畜飼料の中心であるトウモロコシの価格が平成20年に急騰したことや、生ゴミを燃やすのに1トンあたり4万円もかかることも後押しとなって、普及の機運が高まったといえる。

エコフィードの原料となるものはさまざまで大まかに食品製造副産物、余剰食品、調理残渣、農場残渣に分類される。食品製造副産物としては昔から飼料として利用されている米ぬか、フスマ、大豆粕、ビール粕、豆腐粕(おから)に加えて、最近では酒粕、焼酎粕、醤油粕、果汁粕、パンの耳等、無洗米のとぎ汁、コンタミ(製造ラインの切り替え時に排出されるもの)など食品の製造過程で得られる副産物やカット野菜・フルーツのくずなどがある。

写真1 エコフィードに活用される野菜くず

余剰食品は売れ残りや賞味・消費期限切れのパン、麺、弁当、総菜等、食品として製造された後、利用されなかったもの。調理残さは調理に伴い発生する残渣。農場残渣はキャベツの外葉や、ポテトチップスの原料となるじゃがいもの規格外品などだ。

このうち家畜用飼料として活用できるのは、ある程度まとまった数量があり、栄養成分が一定していることが条件になることから、ほとんどが食品製造副産物。恵方巻きや弁当などのように季節性があり食材が不安定で分別(飼料に適さないものの除去)を要するものはあまり歓迎されない。なお、食品産業(製造業、卸売業、小売業、外食産業)から発生する食品廃棄物の発生量は平成28年度で1970万トン。このうち畜産で利用しやすい食品製造業からは1617万トンで、この76%に当たる997万トンが飼料化されている。

●エコフィードの種類とメリット・デメリット

エコフィードはリキッド(液状)、ドライ(乾物)、サイレージ化の大きく3つに分けられる。リキッドは牛乳・ヨーグルト・ジュースなど水分の多い原料をベースにほかの食品残渣も混ぜ、粉砕、加熱殺菌処理後に乳酸発酵させる(写真2)。

写真2 エコフィード(リキッド)の製造:左下が発酵タンク

発酵させることで、pHが低下するため一般細菌が繁殖しなくなるのと、豚の整腸作用にも良く、また吸収力も高まるので成長もよい。エネルギーコストがかからない、給与時に粉じんの発生がなく、肺炎などの呼吸器系の疾病が少ないなどのメリットもある。ただし、給餌のためにパイプラインを設置する必要があるなど、設備投資がかかるデメリットもある。

一方のドライは、熱を加えて粉状にし(写真3)、他の飼料に混ぜる方式。通常の配合飼料と同様に給与できるので、給餌のための新たな設備は要らない。高温で加熱するため、衛生面では安心できるが、エネルギーコストがかさむ。

写真4 もやしのサイレージ

3つ目のサイレージ化。牛に給与する牧草やトウモロコシでとられている伝統的な手法。原材料を密閉し、乳酸発酵により保存性を高める方法だが、エコフィードを扱う(株)環境テクシスの高橋慶社長は最近ではカットフルーツやカット野菜の端材やもやしのサイレージ(写真4)に注目する。

写真4 サイレージを混ぜて乳牛に給餌

このうちもやしは「見込み生産で必ず3割ほど余剰分がでるが、これまでコストをかけて処分していた場合が多い。脱水した後ギ酸を加えて乳酸発酵させて他の飼料と混ぜて牛に給与(写真4)。もやしのタンパク質は牛の栄養面にとって効果が高い」という。

畜産業側がエコフィードを活用するメリットについて、農林水産省畜産部飼料課は、飼料費の削減(配合飼料の2割をエコフィードに代替した場合一頭当たり約3000円の削減)になるほか、①パンの耳など小麦由来のエコフィードを給与すると脂肪交雑が多くなる、②リキッドフィーデング(液状で給与する)の場合は豚舎内の粉塵発生が抑えられるため呼吸器疾患罹患率が低下し発育が向上する、③酒粕、ワイン粕、ジュースかすは嗜好性が向上する、などをあげる。
一方、食品産業サイドが食品残渣をエコフィード原料として提供する利点は、廃棄物処理費用の削減、CRS(企業の社会的責任)としてのアピールなどがあげられる。

●エコフィード給与でブランド化へ

畜産業と食品産業との連携により生産される食肉をブランド化して販売する動きも見られる。こうした循環ループが各地にでき始めているのは、廃棄物の有効利用の面だけでなく、循環型社会の実現の面からも注目されよう。

写真5 エコフィード(ドライ・リキッド)の給餌

例えば「望来豚」(もーらいとん)を生産するノース・ベスト・ファーム(有)(北海道石狩市)は、トップクラスのブランド化を見据えた販売戦略の成功事例といえる。食品工場から出るジャガイモ、パン、麺類のクズ、牛乳、ホエイを混合し、乳酸発酵した液状のエサを給餌するリキッドフィーディングを導入、質の高い豚肉を安定生産する体制を確立している。
札幌市の百貨店で販売しているほか、とんかつ専門店中心に20店舗以上のレストランで取り扱う。ロース芯に霜降りが入り、口溶けがよくジューシーで軟らかいとユーザーの評価は高い。地域の名物として定着しており、「母豚200頭、年間出荷5000頭規模に倍増させる計画で、将来は海外輸出も視野に入れている」と意欲的だ。

母豚1万頭、年間出荷20万頭の大規模経営の事例として紹介したいのが(株)ジャパンファーム養豚事業本部(鹿児島県伊佐市)である。地元の焼酎メーカー・大口酒造の製造の過程で副産物として発生する「焼酎粕」を活用している。きっかけは海洋汚染防止法が改正され、平成19年4月からそれまで行っていた焼酎粕の海洋投入が原則禁止になったこと。両社で協同研究を重ねて平成18年から地域社会で共存していく「異業種間コラボレーション」を実現。現在では焼酎粕給与豚は全出荷の3割、年間6万頭にまで拡大している。
焼酎粕中の有機酸(クエン酸)が豚の消化器系疫病予防に有効に作用し、芋に含まれるポリフェノールとビタミンEが、豚の肉質を更においしくさせるという。「伊佐の焼酎粕豚」と芋焼酎のセットがふるさと納税の返礼品として人気を集めている。

青森県つがる市の木村牧場はパン、麺類、リンゴの搾りかすなどエコフィード配合率42%のリキッド飼料を肥育豚に給与し「つがる豚」として販売。FOODEX JAPAN2019にも出展するなど積極的に取り組む。

写真6 オリーブ牛

養豚での取り組みが先行しているが肉用牛でも始まっている。「葉山牛」を生産する石井牧場(神奈川県葉山町)はおから、米加工残渣、ビール粕と濃厚飼料を混合し乳酸発酵させた飼料を黒毛和牛に給与。エコフィード配合率は56%と高い。香川県ではオリーブの搾りかすを飼料に加えるなどしてブランド牛「オリーブ牛」として売り出し中だ(写真6)。こうした地域資源循環のエコフィード活用の取り組みは、飼料のコスト削減に加え、生産物に付加価値を与えて有利販売につなげることがテーマになってきた。

●今後の課題

食品残さには何が入ってくるか分からないので不安という消費者が少なくないが、「食品残さ等利用飼料の安全性確保のためのガイドライン」(農林水産消費・安全局通知)が平成18年8月に制定されている。ガイドラインの中では主に次のようなことが定められている。原料排出、収集、製造、給与などの各過程における管理の指針が示されており、関係者の合意事項となっている。あくまでもガイドラインであり、罰則規定はない。これを関係者が遵守するように周知徹底を図ることが当面の課題といえる。
年間1200万トンものトウモロコシを飼料として輸入している現状がある。その一方で、利用されず燃やされている可食部分と考えられる事業系廃棄物が300~400万トンにも達する。食料自給率が40%、飼料自給率が26%という状況を少しでも改善するためにもエコフィードの活用が大きなカギを握る。紙幅の都合で割愛したが、(一社)日本科学飼料協会と(公社)中央畜産会が認証機関として推進している「エコフィード認証制度」と「エコフィード利用畜産物認証制度」の普及によって消費者を巻き込んだ食品リサイクルへの関心と理解を深めることも課題といえる。

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