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メタボの道理|佐藤 達夫

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プロフィール
食生活ジャーナリスト。女子栄養大学発行『栄養と料理』の編集を経て独立。日本ペンクラブ会員

日本人は糖尿病になりやすい

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2011年6月8日

●米国在住日系人の糖尿病罹患率

 糖尿病にはⅠ型とⅡ型がある。Ⅰ型は、膵臓中のインスリンを作る細胞が破壊され、インスリンの量が絶対的に足りなくなるもので、主に子どもの時に発症する。メタボリックシンドロームの条件の一つとなっている「生活習慣病としての糖尿病」はⅡ型のほう。この【メタボの道理】で取り上げる糖尿病は、特に断りがない限りⅡ型糖尿病のことだと理解していただきたい。

 肥満者に糖尿病が多いということは、よく知られている。血糖値が高くて肥満している人は、医師や栄養士から「体重を減らしましょう」と、耳にたこができるほどいわれていることだろう。

 日本と米国の肥満者(BMI※が30以上)の割合を比較してみると、日本人の肥満者の率は3.4%で、米国人の肥満者の率は34.3%(OECD Health Data 2009)。なんと、10倍の開きがある。

 肥満者に糖尿病が多いという理屈からいうと、米国人の糖尿病患者は、日本人の約10倍程度であろうと推察できる。ところが、米国人の糖尿病罹患率(6~8%)は、日本人の糖尿病罹患率(4~6%)のだいたい1.5倍程度でしかない(INTERNATIONAL DIABETES FEDERATION 2006)。なんとも不思議としかいいようがない。米国人は太っても糖尿病にはなりにくいらしいのだ。逆にいうと、日本人はそれほど肥満してはいなくても糖尿病になりやすいことになる。

 それを裏づける興味深いデータがある。米国在住の日系人の糖尿病罹患率だ。シカゴ、ハワイ、ワシントン州など、いくつかの研究データがあるのだが、総じていうと「在米日系人の糖尿病罹患率は、米国人の約2倍、日本人の約4倍」という結果が出ている。米国に移住した日本人は、世界で最も糖尿病になりやすいとさえいわれているのだ。

●裕福な蒙古民族は糖尿病になりやすい

 糖尿病の原因は「遺伝的素因+生活習慣の乱れ」である。厳密に分類することはできないのだが、米国人の糖尿病の大きな要素は生活習慣の乱れであり、日本人の糖尿病の大きな要素は遺伝的素因だといわれている。

 米国人は、食べ過ぎや飲み過ぎや運動不足が災いして、多くの人に糖尿病が発症している。一方、日本人では、食べ過ぎや飲み過ぎや運動不足の程度が、米国人ほどひどくはないのに、遺伝的素因が強いために糖尿病が発症しているらしいことが、わかってきた。

 米国在住の日系人は、糖尿病になりやすいという日本人の遺伝的素因を持ち、糖尿病になりやすい飲み過ぎ・食べすぎ・運動不足という米国人の生活をしているために、きわめて高率で糖尿病を発症しているわけだ。

 これを「米国在住の日系人の話」だと、他人事のように考えていてはいけない。今の私たちの生活は、高カロリーの食事をとり、アルコールや甘い炭酸飲料を多飲し、かつ、自動車の普及によって運動不足が深刻になっている。日本に住んでいる日本人も、かつての米国在住の日系人の生活とほとんど変わらない生活習慣だと考えてよいだろう。つまり、近い将来、日本人の糖尿病罹患率は、米国在住日系人程度、つまり、現在の4倍程度になるだろうと推測されている。

 近年の研究(データ)で、糖尿病になりやすいという遺伝素因を持っているのは日本人だけではなく、蒙古民族全体に共通するらしいこともわかった。その根拠の一つとして、最近になってインドの糖尿病が急激に増えて患者数が世界一になったのだが、直近のデータでは、そのインドを中国の糖尿病患者数が、あっという間に追い越したということがあげられている。

 一時、中国人は糖尿病になりにくいという学説が出たこともあったのだが、それは間違いであり、中国の経済状態が良好になって、裕福な人たちが増えたとたんに糖尿病は激増した。“裕福な蒙古民族”は高率で糖尿病になりやすい、ということがわかったのだ。

 今の日本人は「裕福な蒙古民族の代表」のような存在だ。すべての日本人は、生活習慣が乱れると糖尿病になりやすいということを、よ~く知っておく必要があるだろう。

※BMI(体格指数)=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

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