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メタボの道理|佐藤 達夫

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プロフィール
食生活ジャーナリスト。女子栄養大学発行『栄養と料理』の編集を経て独立。日本ペンクラブ会員

コレステロールには“善玉”も“悪玉”もない

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2011年7月8日

●LDLは栄養成分の塊

 肝臓で作られた栄養成分(コレステロールやタンパク質等々)は、血液によって、体の各部(の細胞)へと運ばれる。このとき、タンパク質は、血液中の水分(血漿という)と相性がいいので、たとえそのままの形でも血液中をうまく移動できる。しかし、脂質であるコレステロール(や中性脂肪など)は、そのままの形では血液中をうまく移動できない(水と油というように、血漿とコレステロールは相性が悪いので)。

 そこで、肝臓では、コレステロールなどの脂質成分を、タンパク質でくるんだ物質を作って、血液中を移動させている。じつに見事な仕組みである。この「脂質成分をタンパク質でくるんだ物質」をリポプロテイン(Lipo-protein)という(リポは脂質、プロテインはタンパク質という意味)。

 肝臓を出ていくときのリポプロテインは、コレステロール等の脂質をたっぷり含んでいる。この状態のリポプロテインをLDL(Low Density Lipo-protein)という。逆に、肝臓へと戻ってくるときのリポプロテインは、コレステロール等の脂質が少ない状態になっている。この状態のリポプロテインをHDL(High Density Lipo-protein)という。つまり、LDLやHDLというのは、リポプロテインの状態の違いを表す言葉である。

 そして、LDLに含まれているコレステロールのことをLDLコレステロールという(単にLDLと略して使うことも多い)。同様にHDLに含まれるコレステロールをHDLコレステロールという(こちらも単にHDLと略して使うことも多い)。

 このことからもわかるとおり、LDL中のコレステロールもHDL中のコレステロールも「コレステロールとしては同じ物質」である。「悪い働きをするコレステロール」と「良い働きをするコレステロール」の2つがあるわけではない。

●医師の診断基準を患者に押しつけるな

 今では、生活習慣病世代であれば多くの人が知っている「悪玉コレステロール」「善玉コレステロール」という言葉だが、いつ頃からコレステロールを悪玉と善玉に分けるようになったのかは、よくわからない。だれが言い出したのかも調べてみたのだがよくわからなかった。しかし推測はできる。

 おそらく最初に言い出したのは健診医ではなかろうか。人間ドック等での血液検査結果を分析した結果、「動脈効果等の生活習慣病にかかっている人の血液にはLDLが多い」また「生活習慣病にかかっていない人の血液にはHDLが多い」という事実を発見したのだろう。

 この事実は、医師が患者を診断する際にはきわめて便利である。健診の結果でLDLが異常に多い人は、将来、心筋梗塞や狭心症や脳卒中などの致命的な病気になる可能性が高いことが予測できるからだ。しかし、だからといって、大事な栄養成分の塊であるLDLを「悪玉」と呼んではいけない。

 白血病患者の血液に白血球が多いからといって、また、血液中の白血球の数が異常に多いことは、将来、白血病になる心配があるからといって、白血球のことを「悪玉」とは呼ばない。

 医師が自分たちの診断基準にすぎない血液中LDLを「悪玉」と呼ぶこと自体が誤解の元だし、さらにいけないのは、医師たちがそれをそのまま患者に伝えていることだ。患者はリポプロテインの意味など知らされずに、単に「LDLコレステロールは悪玉なので減らしなさい」と告げられる。

 私は、このことが、コレステロールに対する誤解を助長するばかりではなく、将来の致命的な病気の予防にもつながらない大きな原因だと考えているのだが、そのことは次回に。

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