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メタボの道理|佐藤 達夫

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生活習慣病を予防し、健康で長生きするための食生活情報を提供します。氾濫する「アヤシゲな健康情報」の見極めかたも
プロフィール
食生活ジャーナリスト。女子栄養大学発行『栄養と料理』の編集を経て独立。日本ペンクラブ会員

LDLコレステロールを“悪玉”呼ばわりすべきではない

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2011年7月27日

●LDLコレステロールと食中毒菌とは違う

 医師が患者に情報を提供する場合、その情報は、患者のQOL(病状等を含めた広い意味での生活の質)が向上することに役立たなければならない。たとえば手術など、患者自身ではどうすることもできず、医療者による治療が不可欠なケースであっても、その治療を実施するかどうかを患者が判断する事に役立つ情報でなければならない。

 その病気が生活習慣病であれば、患者が自分自身の生活習慣を改善することによって、病気が軽減でき、あるいは予防することができる。生活習慣病に関して医師(や栄養士)が患者に提供する情報は、患者のQOLに直接的に大きな影響を与えることになる。そのため、適切で、誤解を招かない情報提供が、医師には義務づけられる。
 つまり、医師から提供される情報は、それによって患者自身の生活習慣が改善できる内容でなければならない。

 たとえば、生活習慣病ではないが、サルモネラや腸管出血性大腸菌など(O157など)による食中毒の場合を考えてみよう。
 これらの食中毒は、卵や牛肉などに付着している食中毒菌を、人間が食品と一緒に食べてしまうことによって発生する。食中毒菌こそ人間にとって“悪玉”であり、体内に取り入れることのないように避けるべき対象であるし、撲滅すべき対象である。
 そのためには、卵や牛肉を充分に加熱して食べる、あるいは感染してしまった患者の汚物や吐物に触れない、そもそも食品中の食中毒菌をできるだけ増やさないなどの対策が必要である。そして、これらのことを患者自身が実行することができる。こういうケースでは、医療関係者は「原因は食中毒菌という悪玉である」という情報を、積極的に広く伝えるべきである。

 しかしLDLコレステロールを食中毒菌と同様に扱うべきではない。

●正しい生活習慣の改善に結びつく情報提供を!

 前回も書いたように、LDL中のコレステロールであっても、HDL中のコレステロールであっても、コレステロールは私たちの体にとって重要な栄養成分であり、断じて悪玉ではないからだ。血液中のコレステロールが必要量以下に不足すれば、私たちは生存できない。たとえば、発展途上国で栄養不足のために死んでいく子供たちの血液検査をすれば、LDLコレステロールの値はものすごく低いはずだ。

 仮に、血中LDLコレステロール値が高い人は心筋梗塞や脳梗塞等の動脈硬化性疾患にかかるリスクが高いとしても、LDLコレステロールを悪玉だと呼ぶべきではない。LDLコレステロールは、食中毒菌のように避けるべき対象でもなければ撲滅すべき対象でもないからだ。

 ましてや、医師が患者に「LDLコレステロールは悪玉」などという情報を伝えるべきではない(医療関係者の間でその情報を共有することはいいかもしれないが)。「LDLコレステロールは悪玉」だと聞かされても、患者は血液中のLDL値を自分自身で、直接、低くすることは不可能なのだから・・・・。

 血液中(静脈中)のLDLコレステロール値が高くなる原因として、下記のようなことがあげられている。
1、摂取カロリーの過剰(食べ過ぎ・飲み過ぎ)
2、運動不足
3、コレステロールを多く含む食品の過剰摂取
4、遺伝的要素

 この中では、1→2→3→4の順序で重要(影響が大きい)と考えられている。つまり、LDLコレステロール値を下げるために必要なことは、まず「食べ過ぎ・飲み過ぎ」をしないことだ。その次に大切なことは「運動不足」にならないこと。この2つの改善を確実に実行できれば、コレステロール値が低くなる可能性はきわめて高い。
 しかも、この2つは患者が自分自身で実行可能な生活習慣の改善である。医療関係者(医師や栄養士)は、こういう情報こそを患者に伝えなければならない。

 しかし現実的には、多くの人が実行することは「3」に対する注意である。それはなぜか? 医療関係者が「LDLコレステロールは悪玉」という間違った情報を提供し続けていることが最大の原因であろう。患者は“悪玉”であるコレステロールを避けることにばかり執着し、「真の原因である食べ過ぎや運動不足」の解消を二の次にしてしまう。

 「LDL=悪玉」説は、病気の予防に役立たないどころか、患者の生活習慣の改善を妨げることによって、病気の悪化にさえつながっていると、私は考えている。即刻、止めるべきである。

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