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執筆者

佐藤 達夫

食生活ジャーナリスト。女子栄養大学発行『栄養と料理』の編集を経て独立。日本ペンクラブ会員

メタボの道理

血圧は「低ければ低いほどいい」わけではない

佐藤 達夫

キーワード:

●メタボの基準を超えたからといってすぐに薬を飲む必要はない

 メタボリックシンドロームの診断基準を見ると、血圧に関しては以下のような基準が定められている。

収縮期血圧(いわゆる上の血圧):130mmHg以上
拡張期血圧(いわゆる下の血圧):85mmHg以上
のいずれか、又は両方

 血圧をまったく気にしたことのない人だと、この数字を見てもピンとこないかもしれない。しかし、多少でも血圧が高くて、血圧を気にしている人がこの「上:130/下:85」という数字を見ると、驚くに違いない。この数値はけっこう低い(けっこう厳しい)からだ。

 日本高血圧学会の高血圧治療ガイドラインによると、収縮期血圧130mmHg未満あるいは拡張期血圧85mmHg未満は「正常血圧」なのだ。つまり、正常血圧を1mmHgでも超えてしまうと、メタボリックシンドロームにひっかかることになる。

 このコラムの第2回で触れたが、メタボリックシンドロームは治療の基準ではなく、「生活習慣改善開始の目安」である。くどいようだが、このことはここで改めて確認しておきたいと思う。上記の基準を超えたとしても、それは「薬物治療開始の合図」ではなく、「生活習慣改善開始の目安なのだ」と。
 しかし、実際に受診してみるとわかるが、病院の血圧測定で「130/85」を超えただけで、すぐに服薬を勧める医師は少なくない。そういう場合には、他の医師の意見も聞いてみることをお勧めする。

●高齢者の低血圧は要注意

 メタボリックシンドロームの診断基準には、受診者の立場から見て、もう一つ考慮すべきことがある。それは「自分の年齢」だ。上記の診断基準は年齢のことに触れてないので、この基準はだれにでも(何歳の人にでも)同じ数値が適応される。

 一般的に、血圧と病気(心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患の罹患率)、あるいは血圧と寿命(死亡率)との関係を示したグラフを見ると、「右肩上がりの直線」になっていることが多い。たとえば、血圧が高くなると、それに伴って死亡率も高くなってくる。そのため“健康と長寿のためには高血圧症にならないようにすることが肝要”ということになる。基本的には、この認識は正しい。

 一つ、留意しなくてはならないことは、この種のグラフの多くは「年齢別」になっていないことだ。日本人の場合(どの国の人間でもほとんど同じだが)、年齢が高くなると血圧は高くなる。また、当然のことながら、高齢になると病気にかかる率は高くなるし、死亡率も高くなる。
 つまり、「全年齢」を対象にして血圧と健康との関係を見ると、血圧が高い人=年齢の高い人ほど罹患率も死亡率も高いという、しごく当たり前の結果が出るにすぎない。こんなことはわざわざ調べなくとも、見当はつく。血圧と健康との関係を知るためには「全年齢」をひとまとめにするのではなく「年齢別」に調べなければならない。

 年齢別に「血圧と罹患率や死亡率との関係」を調べたグラフでは、必ずしも「右肩上がり」にはならない。たとえば、「血圧が高くなるにつれて死亡率も高くなる」わけではないのだ。
とりわけ60歳以上の人では、「120以上/80以上」から「160未満/100未満」まで(ここに含まれる中高年者はかなり多いはず)なら、死亡率にそれほど大きな差が見られない。さすがに「160以上/100以上」となると死亡率は高くなる。
 ただし、逆に「120未満/80未満」という低血圧でも、死亡率は高くなるのだ。その理由としては、低血圧すぎると肝心な臓器に血液が供給されなくなるからだと考えられる。

 血圧は「低ければ低いほどいい」というわけではけっしてなく、「両極端はいけない」ということを知っておこう。

執筆者

佐藤 達夫

食生活ジャーナリスト。女子栄養大学発行『栄養と料理』の編集を経て独立。日本ペンクラブ会員

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