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外食・中食、よろしゅうおあがり|道畑 美希

どんなコラム?
食のマーケティングやレストラン経営が専門。社会に出てから食を見続け、食べ続け、四半世紀。もはや語り部と化すおババのコラムです
プロフィール
京都大学農学部修士課程修了後、外食企業を経てフードコーディネーターに。東洋大学講師・Foodbiz-net.com代表

北関東産の野菜、外食産業から使い始めよう

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2011年3月30日

 巨大地震は、私たちの食生活について、エネルギー問題はじめ、さまざまな課題をつきつけた。なかでも、今最も大きな課題は、暫定基準値(規制値)以上の放射性物質により出荷停止・摂取停止となった農産物である。処分を受けたものだけでなく、風評ゆえに売れないとみなされたものも合わせて、膨大な量の農産物が、またも廃棄処分にされていく。いつも同じことが繰り返し行われることに、なんとも苛立ちを覚える。

●外食産業の対応

 外食産業界においては、外食企業はじめ関連企業約850社が加盟する社団法人日本フードサービス協会では、「原子力発電所事故を踏まえた農産物などの風評被害を防止するために、冷静な対応を」というニューズレターを3月21日に加盟各社に通達すると同時に、同協会のホームページに掲載している。風評被害を防ぐために、「○○産のものは使用していない」とか、「○○産の食材を使っているので、販売を自粛している」などの説明はやめようという内容である。今回は、動きが早いなあと感心しつつも、実際には、消費者の過剰な反応を想像すると、この通達を前に逡巡する企業も少なくないことだろう。

 メニュー表記に掲載されずとも、売り場がいつもと違うことを、主婦は敏感に察知する。スーパーになじみの産地名をまったく見かけない。先日は、兵庫県産の白菜を見て、びっくり(東京在住ですよ)。外食産業では、リンガーハットが、茨城産キャベツを使用した餃子の販売を自粛している。またサイゼリヤでも、福島県白河の自社農場のレタスやルッコラを使用するメニューの販売を見合わせるという。いずれも、出荷停止品目以外のものである。万一ということを想定する企業側の考えもまた理解できる。

●真摯な取り組みをアピールして売ればいい

 両社をはじめ外食産業は、野菜の仕入れには大変な努力を重ねてきているはず。もっと自信を持って、情報を提供し販売すればいいのにと思う。たとえば、リンガーハットの農産物の仕入れについて、産地偽装問題が話題になった2007年、仕入れ担当役員にヒアリングに伺ったことがあるが、主要食材であるキャベツは、業界に先駆け、20年以上前から産地との契約を進め、管理体制もしっかり組み立てられているとのこと。またもやしは、国内2か所の自社工場で生産の取り組みをされている。

 当時伺った話によると、ちゃんぽんに使用される野菜は250g。そのうちキャベツが100g、もやしが100gだそうだが、それ以外の野菜は中国から仕入れていた。が、2008年の中国産餃子事件以来、これらの野菜についても国産化を進め、今では、国産野菜だけで、ちゃんぽんの野菜が構成されている。中国産といっても、その当時で、中国との取り組みは15年以上。もちろん契約の畑で生産、栽培、加工、出荷そして輸出・輸入と各プロセスでの管理もされているとのことだった。世間でうなぎなどの産地偽装が話題になった時、リンガーハットは「中国でつくっている品目も、中国から仕入れている品目も、しっかり管理している」ことを、ホームページ上でも、店頭のメニューでも訴えた。だが、高まる中国産への不信感には勝てず、野菜の国産化に踏み切った経緯がある。

 中国産であれ、福島産であれ、すべてを受け入れられないわけではないことは、消費者も理解しているはず。もっと丁寧なコミュニケーションとデータによる開示があれば、購入に結びつくはずである。品薄、価格高騰の状況で、私たちもそんなに高い野菜は買えないし、手頃な外食の価格が、手の届かないものになってしまうのは、困る。

 外食産業は、消費者に一番近い位置にあり、顧客とのコミュニケーションが最もとりやすい業種。メニューでの表記、店舗スタッフによる会話など、小さなことの積み重ねで、風評被害を解いていくこともできるはずである。

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