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外食・中食、よろしゅうおあがり|道畑 美希

どんなコラム?
食のマーケティングやレストラン経営が専門。社会に出てから食を見続け、食べ続け、四半世紀。もはや語り部と化すおババのコラムです
プロフィール
京都大学農学部修士課程修了後、外食企業を経てフードコーディネーターに。東洋大学講師・Foodbiz-net.com代表

飲食店の衛生管理をWATCHする目を!

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2011年5月3日

 残念なことに、生肉による食中毒で、幼い児童が2名も亡くなった。食を提供する外食産業はお客様の命を預かっているということの意識をもっと持つべきである。松永編集長が早速関連した記事を掲載されているが、提供する側には「生肉が怖い」という知識も意識も欠如していたのだろう。そして、アルバイトが調理を担う厨房にそれを求めるのは、なかなか難しい。

● 飲食店の衛生管理は、ノーチェック状態

 実は、飲食店の衛生管理はノーチェックに等しいといってもいいかもしれない。法的なチェックといえば、たまにやってくる保健所の抜き打ち検査のみで、あとは、飲食店の経営者あるいは運営者の良識に委ねられているようなものである。
 
 もちろん、飲食店を開業、運営するには、食品衛生法上、食品衛生責任者という知識や経験のある者を配置する必要がある。この食品衛生責任者になるには、調理師、栄養士、製菓衛生師などの資格をもっていることが求められる。しかし、たとえこれらの資格を持っていなくても、数時間の講習会を受けるだけで食品衛生責任者となれるというわき道も用意されている。その講習時間や内容、また年齢などの資格基準は、各都道府県によるが、とにかく、特段、食品衛生に知識や経験を持たなくとも、飲食店は開業・運営ができるのだ。もちろん、開業時だけではなく、食品衛生責任者には、年に数回の講習が義務付けられているが、不衛生な管理をやっていたところで特別厳しい罰則があるわけでもない。

● ずさんさの陰には、理由がある

 飲食店の衛生管理をずさんにしているいくつかの背景を挙げておくと以下の通りである。

 ◆チェックするにも全国に75万軒もある飲食店
 全国にチェーン企業から個人店まで約75万店舗もあるという外食産業。これだけの数をチェックするのは至難の業だ。さらに、そのほとんどが中小、零細企業の店で占められている世界なのである。外食産業と産業の名はついているものの、上位100社の売上合計が約4.5兆円、市場全体のやっと2割を占めるくらいであるから、推して知るべし。大手チェーン店では、衛生管理も厳しく、アルバイトに至るまで衛生教育も行き届いていることであろう。が、業界にひしめく中小・零細店では、その衛生指導についても、保健所が行う食品衛生責任者のための講習や通達だけでは、とても不十分である。

 ◆少ない投資で成功できるビジネス 
 飲食店は、他の業種に比べて、比較的少ない投資で成功できるビジネスである。先に書いたように、だれでも講習を受ければ、食品衛生責任者になれるような世界であるから、特段の資格も必要なく、参入障壁が少ないビジネスでもある。したがって、異分野(つまり全く素人)、また若い人が、簡単に起業ができる。儲かれば利益は大きい、そして、あれよあれよと大きくなってしまう可能性の高い業界である。今回の食中毒事件を起こした会社も、たった10年くらいで18億円の売上をはじき出す企業となっている。調理や食材、もっと基本の衛生について知る機会もなく、大きくなってしまう企業があまりにも多い。

 ◆意外と寛容な消費者の目
 「きたなシュラン」というコーナーが人気のテレビ番組がある(最近は、きたなトランと名称を変えたようだ)。油が染み付いていてめっちゃ汚い、でもウマいという店をタレントたちが食べ歩く内容である。もちろん、業態にもよるが、私は、きたなシュランはあり得ないと考えている。汚い店=ダメな店と。しかし、多くの消費者は、飲食店には意外と寛容な部分がある。それは、客が、食事だけではなく、雰囲気やサービス、あるいは店主の人柄などを目的にして飲食店を訪れるからで、食事、衛生というところに焦点が定まっていないからだ。だからこそ、飲食店はおもしろいのであるが、先に述べた、命を預かっているという意識を忘れてはならない。

 と、以上のような背景を書いてきた。たくさんの店舗数、すべてを法的に規制しようとするのは、難しいことであろう。海外に行くと、飲食店の衛生面での評価を記す表示(ポスターみたいなもの)が店先に掲げられているのをよく目にする。私の記憶する限りでも、デンマーク、アメリカ(州によるだろう)、シンガポールなど、客や第三者によるその店の評価を集計し図式化して、目につくところに掲示をしている。こうやって、私たち、消費者にも、飲食店をウォッチする目やしくみが必要だ。

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