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外食・中食、よろしゅうおあがり|道畑 美希

どんなコラム?
食のマーケティングやレストラン経営が専門。社会に出てから食を見続け、食べ続け、四半世紀。もはや語り部と化すおババのコラムです
プロフィール
京都大学農学部修士課程修了後、外食企業を経てフードコーディネーターに。東洋大学講師・Foodbiz-net.com代表

幸せの国ブータンの主食、米の自給率は50%

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2011年12月26日
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ブータンの棚田の風景

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伝統的な食事

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首都ティンプーでは、車の渋滞も起きていた

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スーパーには、清涼飲料がずらり

 今年はあまり明るい出来事がありませんでしたが、ご結婚したばかりのブータン国王夫妻が11月に来日され、美男美女カップルとして行く先々で話題を振りまきました。その後は、大手旅行社がブータンのパックツアーを売りだすなど、すっかりブーム。日本とブータンとの親交を30年来深めて来た日本ブータン友好協会の事務局には、問い合わせが殺到しているそうです。

 ブータンは、経済指標であるGDPではなく、GNH(Gross National Happiness)、つまり幸福度という尺度で、国を豊かにしていこうという政策が有名で、人々は皆幸せといった報道がされていました。幸せとは、えらく主観的な尺度で、実際のところはどうなのか、私はある研究プロジェクトのため9月末にブータンへ行って、人々の生活を見たり聞いたりしてきました。たった1週間の旅程で、国の西部にあり国内唯一の空港のあるパロという町から中央部あたりまでしか回れませんでしたが、行ってみると色々なことが見え、考えさせられました。

 ブータンでは、男性はゴ、女性はキラという日本の着物によく似た民族衣装を、ほとんどの人が身につけています。この風景を見ると、日本人ならノスタルジックな思いを抱くでしょう。そして町を一歩出れば、放牧されている牛がのんびりと歩き、素晴らしい棚田が広がっています。これらを目にすれば、ブータンは幸せな国と誰もが思うでしょう。ほとんどの人が農業に従事し、恐らく自給自足的生活を送っているだろうと。

 たしかに、農業従事者は約7割に達します。しかし、農務省を訪問した折、数人の役人から食料自給率は50%ほどという言葉を聞いて、びっくりしました。食生活は、お米が主食でほぼ野菜中心という質素なものですが、安価な米がインドから入ってくるそうです。首都ティンプーの市場では、ブータン米が1キロ60Nu(ヌルタム、1Nu=約1.6円)ですが、インド米はその3分の1ほど。稲作農家は、自分でつくった米は売って、安いインド米を買ってくるなんてことを当たり前にやっているというのです。
 日本の米も3倍も違えは、行動が変ってくるかも・・。それはさておき、こうやって米の自給率は降下の一途であると農務省の役人は心配顔で話していました。

 1999年、それまで鎖国に近い状態だったブータンは国を開き、インターネットやテレビを解禁して、様々なモノや情報が国内になだれ込んできました。インド米もそのひとつです。米も大事ですが、それよりも携帯電話、薄型テレビ、車、家と、人々はこれらのモノを買うために収入の何倍もの借金をして手に入れるのだそうです。

 加えて、モノと同時に届く情報のシャワーはものすごい影響力です。今や、約68万人の人口のうち7分の1が首都に集中して住み、都市問題も顕在化してきています。過密故に生じる住宅不足やゴミ問題、若者の雇用問題など。国民の感じる幸せの尺度が、ちょっと違う方向へ動き出しているようです。ただ、人々の心の根底にあるチベット仏教への篤い信仰がすこしブレーキになっているかもしれません。GNHに加え経済という尺度が、ブータンの国や人々を少しずつ変えていきそうな印象を受けました。

 

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