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虫愛でる爺|池田 二三高

どんなコラム?
定年退職後も静岡県を中心に各地で害虫防除を指導している筆者が、虫の発生や生態、被害を受けた作物を見事にとらえた写真でつづる虫エッセイ
プロフィール
1941年静岡県生まれ。65~2001年、静岡県農業試験場、病害虫防除所などで農作物害虫の発生生態や防除法の研究に従事

ホソヘリカメムシ 軟弱な体を臭いと擬態で守る

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2011年8月24日
Riptortus clavatus imago

ホソヘリカメムシの成虫。体色は茶褐色で、体は細長く体長は15mm内外

 ホソヘリカメムシは、セミやアブラムシと同じ仲間に入るので、口は針状で口針と呼ばれます。成虫も幼虫も、茎葉や豆(子実)に長い口針を突き刺して汁液を吸います。

Riptortus clavatus larva

ホソヘリカメムシの2齢幼虫。体色は黒褐色で、触角は長くほぼ真っ直ぐ

 成虫は茶褐色ですが、幼虫は親とは似つかない形と体色で、1齢から5齢まで色も形もアリ、特にクロヤマアリに実によく似ています。アリの特徴は、胸部と腹部の間には1つ、あるいは2つのコブ(腹柄節)があることですが、これはルーペなどで拡大してみないとわかりません。また、触角が中ほどで折れ曲がっていることも特徴ですが、時にはこの触角もピンとまっすぐに伸ばしていることもあるので、これでも区別はできません。圃場で見分けるコツは、ホソヘリカメムシが体の割に触角が非常に長く見えることです。

Formica japonica

クロヤマアリの働き蟻。体色は黒く、触角は中ほどで曲がることが多い

 アリは一般には蟻酸という有毒物質を持つので、アリを食べる天敵は少ないと言われています。ホソヘリカメムシの幼虫は、カメムシ特有の悪臭を放つので、その悪臭だけで身を守ることができそうですが、さらにアリに似ることで(擬態)、天敵の目を欺き身を守っています。随分と用心深い身の守り方です。ホソヘリカメムシの幼虫の体は非常に軟弱で、天敵にちょっとでも飛びかかられたら体は傷つきやがて死んでしまうことでしょう。悪臭+擬態という二重の防御法は、身を守るのに一層役立っていると思われます。

soybean

ホソヘリカメムシによる被害。吸汁されて萎縮した大豆の子実

 ホソヘリカメムシの好物は豆類のため、4月のエンドウに始まり10月の大豆まで、豆があればどこでも見られ、子実を不稔にするなど大害を与えています。増収のためにはカメムシ防除は不可欠です。しかし、一般には幼虫はアリに酷似していることからその発生は見過ごされています。幼虫の擬態は本来自然界の天敵に対するものですが、人間も見事にだまされています。ホソヘリカメムシにとっては、天敵に食べられる量はしれたものですが、人間に見つかり農薬を散布されたら全滅です。この擬態はホソヘリカメムシにとっては、人間に対する効用の方がはるかに大きくなっています。
(写真をクリックすると、大きな写真が見られます)

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